高次導関数の例題です。
(例題1)
関数 \(f(x)=\displaystyle\frac{1}{\sqrt{1-x^2}}\) (\(-1<x<1\)) について
(1)次の等式が成り立つことを証明せよ。
\((1-x^2)f^{(n+1)}(x)-(2n+1)xf^{(n)}(x)-n^2f^{(n-1)}(x)=0\) (\(n≧1\))
ただし、\(f^{(0)}(x)=f(x)\) とする。
(2)\(f^{(n)}(0)\) を求めよ。
(解答)
(1)
\(f(x)=(1-x^2)^{-\frac{1}{2}}\) (\(-1<x<1\)) について
\(f'(x)=-\displaystyle\frac{1}{2}\cdot(1-x^2)^{-\frac{3}{2}}\cdot(-2x)\)\(=x(1-x^2)^{-\frac{3}{2}}\)
\(f^{\prime\prime}(x)=1\cdot(1-x^2)^{-\frac{3}{2}}+x\cdot(-\displaystyle\frac{3}{2})\cdot(1-x^2)^{-\frac{5}{2}}\cdot(-2x)\)
\(=(1-x^2)^{-\frac{5}{2}}\{(1-x^2)+3x^2\}\)
\(=(2x^2+1)(1-x^2)^{-\frac{5}{2}}\)
ここで
\((1-x^2)f^{(n+1)}(x)-(2n+1)xf^{(n)}(x)-n^2f^{(n-1)}(x)=0\)・・・① (\(n≧1\))
を数学的帰納法で示す。
(i)\(n=1\) のとき
①の左辺は
\((1-x^2)f^{\prime\prime}(x)-3xf'(x)-f(x)\)
\(=(1-x^2)(2x^2+1)(1-x^2)^{-\frac{5}{2}}-3x\cdot x(1-x^2)^{-\frac{3}{2}}-(1-x^2)^{-\frac{1}{2}}\)
\(=(2x^2+1)(1-x^2)^{-\frac{3}{2}}-3x^2(1-x^2)^{-\frac{3}{2}}-(1-x^2)^{-\frac{1}{2}}\)
\(=(1-x^2)(1-x^2)^{-\frac{3}{2}}-(1-x^2)^{-\frac{1}{2}}\)
\(=0\)
よって①は成立する。
(ii)\(n=k\) のとき (\(k=1,2,\cdots\))
①が成立すると仮定すると
\((1-x^2)f^{(k+1)}(x)-(2k+1)xf^{(k)}(x)-k^2f^{(k-1)}(x)=0\)
両辺を\(x\)で微分すると
\(-2xf^{(k+1)}(x)+(1-x^2)f^{(k+2)}(x)\)
\(-(2k+1)\{1\cdot f^{(k)}(x)+xf^{(k+1)}(x)\}-k^2f^{(k)}(x)=0\)
整理して
\((1-x^2)f^{(k+2)}-(2k+3)xf^{(k+1)}(x)-(k^2+2k+1)f^{(k)}(x)=0\)
\((1-x^2)f^{(k+2)}-\{2(k+1)\}xf^{(k+1)}(x)-(k+1)^2f^{(k)}(x)=0\)
よって \(n=k+1\) のときも①は成立する。
(i)(ii)よりすべての自然数\(n\)で等式①は成立する。
(2)
\((1-x^2)f^{(n+1)}(x)-(2n+1)xf^{(n)}(x)-n^2f^{(n-1)}(x)=0\) (\(n≧1\))
に \(x=0\) を代入して
\(f^{(n+1)}(0)-n^2f^{(n-1)}(0)=0\)
よって
\(f^{(n+1)}(0)=n^2f^{(n-1)}(0)\)
\(n\)を1つ下げて
\(f^{(n)}(0)=(n-1)^2f^{(n-2)}(0)\) (\(n≧2\))
(ア)\(n\)が偶数のとき
\(f^{(0)}(0)=f(0)=1\) だから
\(f^{(n)}(0)=(n-1)^2f^{(n-2)}(0)\)
\(=(n-1)^2(n-3)^2f^{(n-4)}(0)\)
\(=(n-1)^2(n-3)^2(n-5)^2\cdots3^2\cdot1^2f^{(0)}(0)\)
(最後は\(n=2\)なので、\((2-1)^2=1^2\) になる)
\(=\{(n-1)(n-3)(n-5)\cdots3\cdot1\}^2\)
(イ)\(n\)が奇数のとき
\(f^{(1)}(0)=f'(0)=0\) だから
\(f^{(n)}(0)=(n-1)^2f^{(n-2)}(0)\)
\(=(n-1)^2(n-3)^2f^{(n-4)}(0)\)
\(=(n-1)^2(n-3)^2(n-5)^2\cdots4^2\cdot2^2f^{(1)}(0)\)
(最後は \(n=3\))
\(=0\)
(参考)
\(a_{n}=(n-1)^2a_{n-1}\) (隣同士)
の場合には、両辺を\(\{(n-1)!\}^2\) で割って
\(\displaystyle\frac{a_{n}}{\{(n-1)!\}^2}=\displaystyle\frac{a_{n-1}}{\{(n-2)!\}^2}\)
と変形することで、1つ違いの等式に帰着できます。これを応用して本問
\(f^{(n)}(0)=(n-1)^2f^{(n-2)}(0)\) (1つ飛ばし)
では、1つ飛ばしの階乗 (\((n-1)!!\) と表す) の2乗
\(\{(n-1)!!\}^2=\{(n-1)(n-3)(n-5)\cdots\}^2\) (偶奇で最後のほうが違う)
で割って
\(\displaystyle\frac{f^{(n)}(0)}{\{(n-1)(n-3)(n-5)\cdots\}^2}=\displaystyle\frac{f^{(n-2)}(0)}{\{(n-3)(n-5)(n-7)\cdots\}^2}\)
と変形しても解くことができます。
(例題2)
\(f(x)=\sin x+\cos x\) とする。各自然数\(n\)に対して関数\(g_n(x)\)は\(x\)の\(n\)次式で表され、
\(g_n(0)=f(0)\)、\(g_n'(0)=f'(0)\)、\(g_n^{\prime\prime}(0)=f^{\prime\prime}(0)\)、・・・、\(g_n^{(n)}(0)=f^{(n)}(0)\)
を満たすものとする。
(1)\(g_3(x)\) を求めよ。
(2)\(|g_{n+1}(1)-g_n(1)|<\displaystyle\frac{1}{2013}\) となる最小の自然数\(n\)を求めよ。
(解答)
\(f(x)=\sin x+\cos x\) より
\(f'(x)=\cos x-\sin x\)
\(f^{\prime\prime}(x)=-\sin x-\cos x\)
\(f^{\prime\prime\prime}(x)=-\cos x+\sin x\)
\(f^{(4)}(x)=\sin x+\cos x=f(x)\)
・・・・
となるから、\(f(0)=1\)、\(f'(0)=1\)、\(f^{\prime\prime}(0)=-1\)、\(f^{\prime\prime\prime}(0)=-1\)、・・・ であり、\(f^{(0)}(0)=f(0)\) とすると、\(f^{(n)}(0)\)の値は、\(1,1,-1,-1\) を繰り返すことになる。
(1)
\(g_3(x)\)は\(x\)の\(3\)次式だから
\(g_3(x)=a_3x^3+a_2x^2+a_1x+a_0\)・・・①
とおける。
①を3回まで微分すると
\(g’_3(x)=3a_3x^2+2a_2x+a_1\)
\(g_3^{\prime\prime}(x)=3\cdot2a_3x+2!a_2\)
\(g_3^{\prime\prime\prime}(x)=3!a_3\)
よって条件から
\(g_3(0)=a_0=1\ (=f(0))\)
\(g’_3(0)=a_1=1\ (=f'(0))\)
\(g^{\prime\prime}_3(0)=2!a_2=-1\ (=f^{\prime\prime}(0))\)
\(g^{\prime\prime\prime}_3(0)=3!a_3=-1\ (=f^{\prime\prime\prime}(0))\)
ゆえに
\(a_0=1\)、\(a_1=1\)、\(a_2=-\displaystyle\frac{1}{2!}\)、\(a_3=-\displaystyle\frac{1}{3!}\) だから
\(g_3(x)=-\displaystyle\frac{1}{3!}x^3-\displaystyle\frac{1}{2!}x^2+x+1\)
(参考)
\(0!=1!=1\) より次のように表すこともできます。
\(g_3(x)=-\displaystyle\frac{1}{3!}x^3-\displaystyle\frac{1}{2!}x^2+\displaystyle\frac{1}{1!}x+\displaystyle\frac{1}{0!}\)
\(=\displaystyle\frac{f^{\prime\prime\prime}(0)}{3!}x^3+\displaystyle\frac{f^{\prime\prime}(0)}{2!}x^2+\displaystyle\frac{f'(0)}{1!}x+\displaystyle\frac{f(0)}{0!}\)
(2)
\(g_n(x)=\displaystyle\frac{f^{(n)}(0)}{n!}x^n+\displaystyle\frac{f^{(n-1)}(0)}{(n-1)!}x^{n-1}+\cdots+\displaystyle\frac{f^{\prime\prime}(0)}{2!}x^2+f'(0)x+f(0)\)
となりそうです(係数は具体的には、分母が階乗になっていて、符号が次数が小さい順(右から順)に++--になっている)。丁寧にやるなら、\(k\)次の項について検討すればよいです。
\(g_n(x)=a_nx^{n}+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots+a_1x+a_0\)・・・②
とおける。このうち\(k\)次の項の係数 \(a_k\) (\(k=0,1,2,\cdots,n\)) について検討する。
②を\(k\)回微分すると、\(k\)次より大きい項は変数\(x\)が残り、\(k\)次より小さい項は微分したことにより\(0\)になるので (\(k=0\)のときはもともと小さい項が無い)
\(g_n^{(k)}(0)=k!\cdot a_k\)
よって、条件 \(g_n^{(k)}(0)=f^{(k)}(0)\) より
\(a_k=\displaystyle\frac{f^{(k)}(0)}{k!}\)
ゆえに②は次のように書ける。
\(g_n(x)=\displaystyle\frac{f^{(n)}(0)}{n!}x^n+\displaystyle\frac{f^{(n-1)}(0)}{(n-1)!}x^{n-1}+\cdots+\displaystyle\frac{f^{\prime\prime}(0)}{2!}x^2+f'(0)x+f(0)\)
\(g_{n+1}(x)\) についても条件は同じなので・・・(注)
\(g_{n+1}(x)=\displaystyle\frac{f^{(n+1)}(0)}{(n+1)!}x^{n+1}+\displaystyle\frac{f^{(n)}(0)}{n!}x^n+\cdots+\displaystyle\frac{f^{\prime\prime}(0)}{2!}x^2+f'(0)x+f(0)\)
となる。よって
\(|g_{n+1}(1)-g_n(1)|=\left|\displaystyle\frac{f^{(n+1)}(0)}{(n+1)!}\cdot1^{n+1}\right|=\displaystyle\frac{|f^{(n+1)}(0)|}{|(n+1)!|}\)
\(=\displaystyle\frac{1}{(n+1)!}\) (∵\(f^{(n+1)}(0)=1\ または -1\) )
したがって
\(\displaystyle\frac{1}{(n+1)!}<\displaystyle\frac{1}{2013}\)
を満たす最小の自然数\(n\)は
\((n+1)!>2013\)
を満たす最小の自然数\(n\)だから、\(6!=720\)、\(7!=5040\) より
最小の\(n\)は、\(n=6\)
(注)について
\(g_{n+1}(x)\) について条件を具体的に挙げると
\(g_n(0)=f(0)\)、\(g_n'(0)=f'(0)\)、\(g_n^{\prime\prime}(0)=f^{\prime\prime}(0)\)、・・・、\(g_n^{(n)}(0)=f^{(n)}(0)\)、\(g_n^{(n+1)}(0)=f^{(n+1)}(0)\)
となります。(各自然数\(n\)と書かれているので、自然数 \(n+1\) についても同じ条件になる)
以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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