不等式と極限①

証明した不等式を利用して、極限を求める例題です。

 

(例題)
(1)\(a\)を\(1\)より大きい実数とする。\(0\)以上の任意の実数\(x\)に対して、次の不等式が成り立つことを示せ。
\(\log 2+\displaystyle\frac{x}{2}\log a≦\log(1+a^x)≦\log 2+\displaystyle\frac{x}{2}\log a+\displaystyle\frac{x^2}{8}(\log a)^2\)

(2)\(n=1,2,3,\cdots\) に対して、\(a_n=\left(\displaystyle\frac{1+\sqrt[n]{3}}{2}\right)^n\) とおく。(1)の不等式を用いて、極限 \(\displaystyle\lim_{n \to \infty}a_n\) を求めよ。

 

 

(解答)
(1)

定石通りに、差をとって微分していきます。

\(\log 2+\displaystyle\frac{x}{2}\log a≦\log(1+a^x)≦\log 2+\displaystyle\frac{x}{2}\log a+\displaystyle\frac{x^2}{8}(\log a)^2\)
を示したい。

(ア)
\(f(x)=\log(1+a^x)-(\log 2+\displaystyle\frac{x}{2}\log a)\) (\(x≧0\)) とおく。

\(f'(x)=\displaystyle\frac{a^x\log a}{1+a^x}-\displaystyle\frac{\log a}{2}\)

\(=\displaystyle\frac{(a^x-1)\log a}{2(1+a^x)}>0\) (\(x>0\) のとき) (∵ \(a>1\))

よって、\(f(x)\) は \(x≧0\) で単調増加で、\(f(0)=0\) より \(x≧0\) のとき
\(f(x)≧0\)

ゆえに
\(\log 2+\displaystyle\frac{x}{2}\log a≦\log(1+a^x)\)

(イ)
\(g(x)=\log 2+\displaystyle\frac{x}{2}\log a+\displaystyle\frac{x^2}{8}(\log a)^2-\log(1+a^x)\) (\(x≧0\)) とおく。

(こちらは\(x^2\)の項もあるので、2回微分するとうまくいきます)

\(g'(x)=\displaystyle\frac{\log a}{2}+\displaystyle\frac{x}{4}(\log a)^2-\displaystyle\frac{a^x\log a}{1+a^x}\)

\(g”(x)=\displaystyle\frac{(\log a)^2}{4}-\displaystyle\frac{a^x(\log a)^2(1+a^x)-a^x\log a \cdot (a^x\log a)}{(1+a^x)^2}\)

\(=\displaystyle\frac{(\log a)^2}{4}-\displaystyle\frac{a^x(\log a)^2}{(1+a^x)^2}\)

\(=\displaystyle\frac{\{(1+a^x)^2-4a^x\}(\log a)^2}{4(1+a^x)^2}\)

\(=\displaystyle\frac{(1-a^x)^2(\log a)^2}{4(1+a^x)^2}>0\) (\(x>0\) のとき) (∵ \(a>1\))

よって、\(g'(x)\) は \(x≧0\) で単調増加で \(g'(0)=0\) より
\(x>0\) において \(g'(x)>0\)

ゆえに、\(g(x)\) も \(x≧0\) で単調増加で \(g(0)=0\) だから
\(x≧0\) において \(g(x)≧0\)

したがって
\(\log(1+a^x)≦\log 2+\displaystyle\frac{x}{2}\log a+\displaystyle\frac{x^2}{8}(\log a)^2\)

以上(ア)(イ)より、題意は示された。

 

(2)

(1)の\(a,x\)に適当な数値を代入して、\(a_n=\left(\displaystyle\frac{1+\sqrt[n]{3}}{2}\right)^n\) に近づけます。(\(a=3\)、\(x=\displaystyle\frac{1}{n}\) になる)
(1)の中辺は対数になっているので\(a_n\)も対数をとると
\(\log a_n=n(\log(1+\sqrt[n]{3})-\log 2)\)
となるので、(1)の不等式で辺々 \(\log2\) を引いて、\(n\)倍します。

\(\log a_n=n\log\left(\displaystyle\frac{1+\sqrt[n]{3}}{2}\right)=\)\(n(\log(1+\sqrt[n]{3})-\log 2)\)

(1)の不等式
\(\log 2+\displaystyle\frac{x}{2}\log a≦\log(1+a^x)≦\log 2+\displaystyle\frac{x}{2}\log a+\displaystyle\frac{x^2}{8}(\log a)^2\)
で、\(a=3\)、\(x=\displaystyle\frac{1}{n}\) (条件を満たす) を代入して、辺々 \(\log 2\) を引いて

\(\displaystyle\frac{1}{2n}\log 3≦\log(1+\sqrt[n]{3})-\log 2≦\displaystyle\frac{1}{2n}\log 3+\displaystyle\frac{1}{8n^2}(\log 3)^2\)

辺々\(n\)倍して
\(\displaystyle\frac{1}{2}\log 3≦\log a_n≦\displaystyle\frac{1}{2}\log 3+\displaystyle\frac{1}{8n}(\log 3)^2\)

よってはさみうちの原理から
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\log a_n\)\(=\displaystyle\frac{1}{2}\log 3\)\(=\log\sqrt{3}\)

したがって
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}a_n=\sqrt{3}\)

 

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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