\(z^n=1\) の解に関する三角関数の求値問題です
(例題)
\(n\)を3以上の自然数とするとき、次を示せ。
ただし、\(α=\cos\displaystyle\frac{2π}{n}+i\sin\displaystyle\frac{2π}{n}\) とし、\(i\)を虚数単位とする。
(1)\(α^k+\overline{α}^k=2\cos\displaystyle\frac{2kπ}{n}\)
ただし、\(k\)は自然数とし、\(\overline{α}\)は\(α\)に共役な複素数とする。
(2)\(n=(1-α)(1-α^2)\cdots(1-α^{n-1})\)
(3)\(n=|1-α||1-α^2|\cdots|1-α^{n-1}|\)
(4)\(\displaystyle\frac{n}{2^{n-1}}=\sin\displaystyle\frac{π}{n}\sin\displaystyle\frac{2π}{n}\cdots\sin\displaystyle\frac{(n-1)π}{n}\)
(解答)
(1)
\(k\)乗はド・モアブルの定理を用います。
\(α^k+\overline{α}^k\)
\(=(\cos\displaystyle\frac{2π}{n}+i\sin\displaystyle\frac{2π}{n})^k+(\cos\displaystyle\frac{2π}{n}-i\sin\displaystyle\frac{2π}{n})^k\)
\(=(\cos\displaystyle\frac{2kπ}{n}+i\sin\displaystyle\frac{2kπ}{n})+(\cos\displaystyle\frac{2kπ}{n}-i\sin\displaystyle\frac{2kπ}{n})\)
\(=2\cos\displaystyle\frac{2kπ}{n}\)
(2)
\(1,α,α^2,α^3\cdots,α^{n-1}\) が全ての解で①を因数分解すると
\((z-1)(z^{n-1}+z^{n-2}+\cdots+z+1)=0\)
となるので
\(z^{n-1}+z^{n-2}+\cdots+z+1=0\)・・・②
の解は、\(1\)以外の残りの解です。あとは因数定理を利用して②の左辺をさらに因数分解します。
\(α^n=\cos2π+i\sin2π=1\) だから、\(α\)は
\(z^n=1\)・・・①
の解の1つ。\(α\)は複素数平面上の第1象限にある偏角が一番小さいものなので、①の異なる解の全ては
\(1,α,α^2,\cdots,α^{n-1}\)
である。①より
\(z^n-1=0\)
\((z-1)(z^{n-1}+z^{n-2}+\cdots+z+1)=0\)
よって
\(z^{n-1}+z^{n-2}+\cdots+z+1=0\)・・・②
の解が、\(α,α^2,\cdots,α^{n-1}\) であるから②の左辺は次のように因数分解できる。
\(z^{n-1}+z^{n-2}+\cdots+z+1\)
\(=(z-α)(z-α^2)\cdots(z-α^{n-1})\)
\(z=1\)を代入して
\(1+1+\cdots+1+1=(1-α)(1-α^2)\cdots(1-α^{n-1})\)
(左辺は\(1\)が\(n\)個あるから)
\(n=(1-α)(1-α^2)\cdots(1-α^{n-1})\)
(3)
(2)より
\(|n|=|(1-α)(1-α^2)\cdots(1-α^{n-1})|\)
よって
\(n=|1-α||1-α^2|\cdots|1-α^{n-1}|\)
\(A_0A_1\cdot A_0A_2\cdots A_{0}A_{n-1}\)
です。
(4)
\(n=|1-α||1-α^2|\cdots|1-α^{n-1}|\)
の右辺を三角関数を用いて具体的に求めてみるとうまくいきます。
\(k\)を\(n-1\)以下の自然数とする。
\(|1-α^k|^2\)
\(=(1-α^k)(\overline{1-α^k})\)
\(=1-(α^k+\overline{α^{k}})+α^{k}\overline{α^{k}}\)
\(=1-(α^k+\overline{α^{k}})+|α^k|^{2}\)
ここで
\(|α|=1\) だから、
\(|α^{k}|^{2}=|α|^{2k}=1\)
よって(1)の結果も合わせて
\(|1-α^k|^2=2-2\cos\displaystyle\frac{2kπ}{n}\)
(以下右辺を2乗の形にします)
\(=2(1-\cos\displaystyle\frac{2kπ}{n}\))
(半角の公式)
\(=2\cdot2\sin^2\displaystyle\frac{kπ}{n}\)
\(=4\sin^2\displaystyle\frac{kπ}{n}\)
ゆえに
\(|1-α^k|^2=4\sin^2\displaystyle\frac{kπ}{n}\)
\(1≦k≦n-1\) より、\(\sin\displaystyle\frac{kπ}{n}>0\) だから
\(|1-α^{k}|=2\sin\displaystyle\frac{kπ}{n}\)
したがって(3)の結果より
\(n=2\sin\displaystyle\frac{π}{n}\cdot2\sin\displaystyle\frac{2π}{n}\cdots2\sin\displaystyle\frac{(n-1)π}{n}\)
両辺を\(2^{n-1}\)で割ると
\(\displaystyle\frac{n}{2^{n-1}}=\sin\displaystyle\frac{π}{n}\sin\displaystyle\frac{2π}{n}\cdots\sin\displaystyle\frac{(n-1)π}{n}\)
以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見ていただきありがとうございました。
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