複素数平面における円の方程式の表現方法について見ていきます。
・円の方程式(複素数平面)
(1)基本形
中心を \(α\) (定点) とする半径 \(r\) (\(r>0\)) の円の方程式は、\(P(z)\)と\(A(α)\)の距離が\(r\)であることから
\(|z-α|=r\)・・・①
とくに原点を中心とする円は、\(α=0\) として
\(|z|=r\)
となります。
(2)直径型
異なる2定点\(A(α),B(β)\)を結ぶ線分\(AB\)を直径とする円の方程式は、中心が \(\displaystyle\frac{α+β}{2}\)、半径は直径\(|α-β|\)の半分になるので、円周上の点を\(P(z)\)とすれば
\(\left|z-\displaystyle\frac{α+β}{2}\right|=\displaystyle\frac{|α-β|}{2}\)・・・②
または \(z≠α,β\) のとき、直径に対する円周角が\(\displaystyle\frac{π}{2}\)になることを利用すると、\(A,B\)から見こむ角が\(±\displaystyle\frac{π}{2}\)となるので、
\(\arg\displaystyle\frac{β-z}{α-z}=±\displaystyle\frac{π}{2}\)
よって、\(\displaystyle\frac{β-z}{α-z}\) は純虚数となるから、円の方程式は
\(\left(\displaystyle\frac{β-z}{α-z}\right)=-\overline{\left(\displaystyle\frac{β-z}{α-z}\right)}\)・・・③
(③は\(z=β\)を含めることもできる。さらに分母をはらえば \(z=α\)も含めることができる)
と表すこともできます。②③は変形すると同じ式になります。
(3)アポロ二ウスの円型
\(m,n\)を正の数 (\(m≠n\))とします。異なる2定点\(A(α),B(β)\)からの距離の比が \(m:n\) となる点\(P(z)\)の軌跡は円(アポロ二ウスの円という。数Ⅱ)になります。その方程式は
\(|z-α|:|z-β|=m:n\) より
\(n|z-α|=m|z-β|\)・・・④
実際④を2乗して展開整理して、再び絶対値の形にすると基本形①に帰着させることができます。
なお、\(m=n\) の場合は\(P(z)\)の軌跡は垂直2等分線(直線)になりますが、これは次回で扱いたいとお見ます。
円の方程式①~④は、絶対値が含まれる①②④については2乗して展開整理することで次のような形に変形することができ、これを円の方程式の一般形と呼びます。
\(az\bar{z}+\bar{β}z+β\bar{z}+c=0\)
(\(a\)は\(0\)でない実数、\(c\)は実数、\(β\)は複素数)
例えば
\(|z-α|=r\)・・・① では
\(|z-α|^2=r^2\)
\((z-α)\overline{(z-α)}=r^2\)
\(z\bar{z}-\bar{α}z-α\bar{z}+|α|^2-r^2=0\)
となるので、\(a=1\)、\(-α=β\)、\(|α|^2-r^2=c\) とすれば上記一般形になります。
ただし、実数平面のときに
\(x^2+y^2+4=0\)
が円の方程式を表さない(半径が正の数としてとれない)ように、上記一般形でも円を表すために半径\(r\)が正の数でとれるような条件は必要です。(\(|β|^2>ac\))
以上が複素数平面における円の方程式の表現方法ですが、困ったら時には \(x+yi\) とおいて慣れ親しんだ直交座標に変換することも重要です。
(例題)
点\(z\)が
\(|z+3-\sqrt{3}i|=\sqrt{2}|z+2-\sqrt{3}i|\)
を満たす図形上を動くとき、\(|z|\)の最大値を求めよ。
(解答)
\(|z+3-\sqrt{3}i|=\sqrt{2}|z+2-\sqrt{3}i|\)
2乗して
\(|z+3-\sqrt{3}i|^2=2|z+2-\sqrt{3}i|^2\)
\((z+3-\sqrt{3}i)(\bar{z}+3+\sqrt{3}i)=2\{(z+2-\sqrt{3}i)(\bar{z}+2+\sqrt{3}i)\}\)
整理して
\(z\bar{z}+(1+\sqrt{3}i)z+(1-\sqrt{3}i)\bar{z}+2=0\)
(絶対値の形にする。因数分解すればよい)
\((z+1-\sqrt{3}i)(\bar{z}+1+\sqrt{3}i)-4+2=0\)
\((z+1-\sqrt{3}i)\overline{(z+1-\sqrt{3}i)}=2\)
\(|z+1-\sqrt{3}i|^2=2\)
よって
\(|z-(-1+\sqrt{3}i)|=\sqrt{2}\)
となり、点\(z\)は「中心を 点\(-1+\sqrt{3}i\) とする半径\(\sqrt{2}\)の円」を描く。
\(z\)を極形式で表して、三角関数で処理してもよいですが、今回は図形的に処理したいと思います。円周上を動く点と定点の距離の最大最小値は円の中心を通る直線を考えるのが基本です。
\(A(-1+\sqrt{3}i)\)とおく。直線\(OA\)と円の交点のうち\(O\)から遠い方を点\(B\)とおくと、\(OB\)が\(|z|\)の最大値\(|z|_{Max}\)になるから
\(|z|_{Max}=OB=OA+AB\)
\(=2+\sqrt{2}\)
以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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