実数係数の方程式と共役な複素数

実数係数の\(n\)次方程式と虚数解について見ていきます。

 

・実数係数の\(n\)次方程式と共役な複素数
実数係数の\(n\)次方程式について次のことが成り立ちます。

実数係数の\(n\)次方程式が虚数解\(α=p+qi\) (\(p,q\)は実数, \(q≠0\))を解に持つとき、その共役な複素数\(\bar α=p-qi\)もその方程式のである。

例えば2次方程式 \(x^2+2x+3=0\) の解は \(x=-1±\sqrt{2}i\) で互いに共役な複素数が解となっています。これが一般の\(n\)次方程式についても成り立つということです。ただし係数が実数であるという条件があります。

 

(証明)

2つの証明方法を紹介します。
1つめは、数Ⅲの知識が必要ですが、証明が簡潔です。

(共役な複素数をとる証明)
実数係数の\(n\)次方程式

\(a_nx^{n}+a_{n-1}x^{n-1}+・・・\)\(+a_1x+a_0=0\)・・・①

について \(x=α\) (虚数) が解のとき
\(a_nα^{n}+a_{n-1}α^{n-1}+・・・\)\(+a_1α+a_0=0\)

両辺共役な複素数をとって
\(\overline {a_nα^{n}+a_{n-1}α^{n-1}+\cdots+a_1α+a_0}\) \(=\overline{0}\)
\(\overline{a_n}(\overline{α})^{n}+\overline{a_{n-1}}(\overline{α})^{n-1}+\)\(\cdots+\overline{a_1}・\overline{α}+\overline{a_0}\) \(=0\)

係数は実数なので
\(a_n(\overline{α})^{n}+a_{n-1}(\overline{α})^{n-1}+\)\(\cdots+a_1・\overline{α}+a_0\) \(=0\)

これは\(x=\overline{α}\) が①の解であることを示している。

 

(整式の除法を利用した証明)

\(n\)次方程式の左辺を\(x=p±qi\)を解に持つ2次方程式の式で割り、割り切れる(余りが0である)ことを示します。

\(f(x)=a_nx^{n}+a_{n-1}x^{n-1}+・・・\)\(+a_1x+a_0\) について

\(x=p+qi\) が \(f(x)=0\) の解であるとする。つまり\(f(p+qi)=0\)

\(x=p+qi\) と \(x=p-qi\) を解にもつ2次方程式は
\(x^2-2px+p^2+q^2=0\) (実数係数の2次方程式)であり、\(f(x)\)をこの方程式の左辺の式で割り、余りを\(ax+b\) とすると

\(f(x)=(x^2-2px+p^2+q^2)Q(x)\)\(+ax+b\)・・・②

\(ax+b\)は、実数係数の整式\(f(x)\)を実数係数の整式で割った余りなので\(a,b\)は実数。②に\(x=p+qi\) を代入すると、

\(0=a(p+qi)+b\)
\(p+qi\)は虚数なので、\(a=0\), \(b=0\)

したがって
\(f(x)=(x^2-2px+p^2+q^2)Q(x)\)
であり、方程式 \(f(x)=0\) の解の一部は \(x^2-2px+p^2+q^2=0\) の解であるので、\(x=p-qi\) も\(f(x)=0\)の解である。

 

 

(例題1)
\(a,b\)は実数の定数とする。2次方程式 \(x^2+ax+b=0\) の1つの解が \(x=2-3i\) であるとき、\(a,b\)の値を求めよ。

 

\(x=2-3i\) を代入して\(a,b\)を決定してもよいですが、実数係数の2次方程式より\(x=2+3i\) も解にもつので、解と係数の関係から簡単に\(a,b\)を決定できます。

2次方程式 \(x^2+ax+b=0\) は実数係数の2次方程式なので
\(x=2+3i\) も解である。

解と係数の関係から
\((2-3i)+(2+3i)=-a\)
\((2-3i)(2+3i)=b\)

よって \(a=-4\), \(b=13\)

 

 

(例題2)
2次方程式 \(x^2+ax+b=0\) が虚数解 \(α,β\) をもち、\(α^2=kβ\) を満たすとき、\(a,b\)を\(k\)を用いて表せ。ただし\(a,b,k\)は実数とする。

 

 

実数係数の2次方程式です。
1つの虚数解を\(x=p+qi\) とすれば \(x=p-qi\) も解です。

2解を\(α=p+qi\), \(β=p-qi\) (\(p,q\)は実数, \(q≠0\)) とすると、解と係数の関係から

\((p+qi)+(p-qi)=2p=-a\)・・・(1)
\((p+qi)(p-qi)=p^2+q^2=b\)・・・(2)

また、\(α^2=kβ\)
\(\leftrightarrow\) \(p^2-q^2+2pqi=kp-kqi\)
\(\leftrightarrow\) \(p^2-q^2=kp\)・・・(3) \(2pq=-kq\)・・・(4)

(4)より\(q≠0\) だから \(2p=-k\) よって \(p=-\displaystyle\frac{k}{2}\)・・・(4)’
(1)より \(a\)\(=-2p\)\(=k\)

(3)(4)’より
\(q^2=p^2-kp=(-\displaystyle\frac{k}{2})^2-k(-\displaystyle\frac{k}{2})\)\(=\displaystyle\frac{3k^2}{4}\) より\(0\)でない実数\(q\)は存在し

(2)(4)’より
\(b\)\(=(-\displaystyle\frac{k}{2})^2+\displaystyle\frac{3k^2}{4}\)\(=k^2\)

したがって \(a=k\), \(b=k^2\)

 

(4)’を導くのに\(q≠0\) を用いましたが、\(q=0\)のとき、(4)より\(k,p\)は任意なので\(2p=-k\)でもよく、(1)(2)(3)(4)’を満たす\(q\)が\(0\)となってしまう可能性がないわけではないので、\(0\)でないことを確認しました。

 

 

逆に\(a=k\) ,\(b=k^2\)のとき
2解を \(x=p±qi\) (\(p,q\)は実数)   とすると
(1)より \(2p=-a\) だから \(2p=-k\)  両辺に\(q\)をかけると \(2pq=-kq\)・・・(4)が導かれ
(2)より \(q^2=b-p^2=k^2-(-\displaystyle\frac{k}{2})^2\)\(=\displaystyle\frac{3k^2}{4}\) ゆえに\(q\)は\(0\)でない実数だから2解は虚数解。
また、\(p^2-q^2=(-\displaystyle\frac{k}{2})^2-\displaystyle\frac{3k^2}{4}\)\(=-k・\displaystyle\frac{k}{2}\) より (3)が導かれます。

 

 

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見ていただきありがとうございました。
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