(問) 次の式を因数分解せよ。
(1) \(a(b^2+c^2)+b(c^2+a^2)+c(a^2+b^2)+2abc\)
(2) \(a(b-c)^3+b(c-a)^3+c(a-b)^3\)
(2) \(a(b-c)^3+b(c-a)^3+c(a-b)^3\)
因数分解③と同様に、最低次数の文字が複数あるパターンです。
(1)、(2)ともに\(a,b,c\)の次数が同じなので、どれか1つ選んで整理しましょう。解答ではまず\(a\)について整理しています。
(1)、(2)ともに\(a,b,c\)の次数が同じなので、どれか1つ選んで整理しましょう。解答ではまず\(a\)について整理しています。
(解答)
(1) 与式
\(=(b+c)a^2+(b^2+2bc+c^2)a+b^2c+bc^2\) ←aで整理
\(=(b+c)a^2+(b+c)^2a+bc(b+c)\)
\(=(b+c)\)\(\{a^2+(b+c)a+bc\}\)
\(=(b+c)(a+b)(a+c)\)←ここまででも正解
\(=(a+b)(b+c)(c+a)\) a→b→c→a・・の順に整理
(2) 与式
\(=(b-c)^3a+b(c^3-3c^2a+3ca^2-a^3)\)
\(+c(a^3-3a^2b+3ab^2-b^3)\)
\(=-(b-c)a^3+\{(b-c)^3+3bc(b-c)\}a\)
\(-bc(b^2-c^2)\)←aで整理
\(=-(b-c)a^3+(b-c)\{(b-c)^2+3bc\}a\)
\(-bc(b+c)(b-c)\)
\(=-(b-c)\{a^3-(b^2+bc+c^2)a+bc(b+c)\}\)
\(=-(b-c)\{(c-a)b^2+(c^2-ca)b+a(a^2-c^2)\}\)←{}内の最低次数bで整理
\(=-(b-c)(c-a)\{(b^2+cb-a(c+a)\}\)
\(=-(b-c)(c-a)\{(b-a)c+b^2-a^2\}\)←最低次数cで整理
\(=-(b-c)(c-a)(b-a)(c+a+b)\)←これも正解
\(=(a-b)(b-c)(c-a)(a+b+c)\)
\(=(b+c)a^2+(b^2+2bc+c^2)a+b^2c+bc^2\) ←aで整理
\(=(b+c)a^2+(b+c)^2a+bc(b+c)\)
\(=(b+c)\)\(\{a^2+(b+c)a+bc\}\)
\(=(b+c)(a+b)(a+c)\)←ここまででも正解
\(=(a+b)(b+c)(c+a)\) a→b→c→a・・の順に整理
(2) 与式
\(=(b-c)^3a+b(c^3-3c^2a+3ca^2-a^3)\)
\(+c(a^3-3a^2b+3ab^2-b^3)\)
\(=-(b-c)a^3+\{(b-c)^3+3bc(b-c)\}a\)
\(-bc(b^2-c^2)\)←aで整理
\(=-(b-c)a^3+(b-c)\{(b-c)^2+3bc\}a\)
\(-bc(b+c)(b-c)\)
\(=-(b-c)\{a^3-(b^2+bc+c^2)a+bc(b+c)\}\)
\(=-(b-c)\{(c-a)b^2+(c^2-ca)b+a(a^2-c^2)\}\)←{}内の最低次数bで整理
\(=-(b-c)(c-a)\{(b^2+cb-a(c+a)\}\)
\(=-(b-c)(c-a)\{(b-a)c+b^2-a^2\}\)←最低次数cで整理
\(=-(b-c)(c-a)(b-a)(c+a+b)\)←これも正解
\(=(a-b)(b-c)(c-a)(a+b+c)\)
ところで、この問題に関しては対称式と交代式について知識があると因数分解がかなりやりやすくなります。まずは対称式と交代式の意味から説明しましょう。
対称式:a,b,c・・・の多項式で、a,b,c・・・のどの2つを入れ替えても元の式と同じになるもの。
交代式:a,b,c・・・の多項式で、a,b,c・・・のどの2つを入れ替えても符号だけが変わるもの。
交代式:a,b,c・・・の多項式で、a,b,c・・・のどの2つを入れ替えても符号だけが変わるもの。
上の問題の(1)が対称式、(2)が交代式になります。
実際に(1)のaとbを入れ替えると、
\(b(a^2+c^2)+a(c^2+b^2)+c(b^2+a^2)+2bac\)
\(=a(b^2+c^2)+b(c^2+a^2)+c(a^2+b^2)+2abc\)
となり元の式と全く同じになります。bとc、aとcを入れ替えても同じになります。
\(=a(b^2+c^2)+b(c^2+a^2)+c(a^2+b^2)+2abc\)
となり元の式と全く同じになります。bとc、aとcを入れ替えても同じになります。
(2)は例えばaとbを入れ替えると、元の式に-をつけたものになります。
定理1
a,b,cの対称式は、a+b,b+c,c+a の1つが因数ならば他の2つも因数である。
a,b,cの対称式は、a+b,b+c,c+a の1つが因数ならば他の2つも因数である。
(1)の答えを見ると確かにa+b,b+c,c+aが因数になっていますね。
ここで注意すべきなのは、3つの因数のどれか1つをもてばという条件が付いていることです。3つとも因数とならない場合もあります。
定理2-1
a,bの交代式は、因数 \(a-b\) をもつ。
a,bの交代式は、因数 \(a-b\) をもつ。
(例) \(a^2-b^2+a-b=(a-b)(a+b+1)\)
定理2-2
a,b,cの交代式は、因数\((a-b)(b-c)(c-a)\)をもつ。
a,b,cの交代式は、因数\((a-b)(b-c)(c-a)\)をもつ。
証明は定理2-1とほとんど同様です。
問題の(2)の答えを見ると確かに\((a-b)(b-c)(c-a)\)を因数にもっていますね。
問題の(2)の答えを見ると確かに\((a-b)(b-c)(c-a)\)を因数にもっていますね。
これらの定理を知っておくと共通因数を格段に見つけやすくなります。
以上です。お疲れさまでした。
ここまで読んで頂きありがとうございました。