条件つき確率を理解するために、次の例について考えていきます。
・条件付き確率
袋の中に、赤または白に着色したプラスチック製の玉と木製の玉が、次の表のように合わせて50個入っているとします。
試行「袋の中から1個玉を取り出す」
事象A「玉が赤色である」
事象B「玉がプラスチック製である」
とします。
このとき、事象Bの確率は
\(P(B)=\displaystyle\frac{27}{50}\)
となります。
ここで、取り出した玉が「赤色である」ことが分かったならば、その玉がプラスチック製である確率は、赤色の玉が\(17\)個あることから
\(p=\displaystyle\frac{7}{17}\)
となります。
この\(p\)は、事象Aが起こった(赤色の玉が取り出された)ときの、事象B(プラスチックの玉が取り出された)が起こる確率と考えることができ、これを、事象Aが起こったときの事象Bが起こる条件つき確率といい、\(p=\)\(P_A(B)\) で表します。
この例では、\(P_A(B)=\displaystyle\frac{7}{17}\) ということになりますが、
\(n(A)=17\), \(n(A \cap B)=7\)
なので、\(P_A(B)\)を次のように表すことができます。
\(P_A(B)=\displaystyle\frac{n(A \cap B)}{n(A)}\)・・・①
①の右辺より、条件付き確率\(P_A(B)\)は、全事象を\(A\)とみなしたときの、積事象\(A \cap B\) の確率と考えることができます。
また、①の右辺の分母分子を全事象\(U\)の起こる場合の数\(n(U)(≠0)\)で割ることで
\(P_A(B)=\displaystyle\frac{P(A \cap B)}{P(A)}\)・・・②
が得られます。
事象Aが起こったときの事象Bが起こる、条件付き確率\(P_A(B)\)は
\(P_A(B)=\displaystyle\frac{n(A \cap B)}{n(A)}\) (\(n(A)≠0\))
\(P_A(B)=\displaystyle\frac{P(A \cap B)}{P(A)}\) (\(P(A)≠0\))
・\(P_A(B)\) と \(P(A \cap B)\) の違い
例えばくじを引いたときの当たる確率は、くじを引くときの当たる確率であって、実際にはくじを引いていない場合に、どれくらい当たるのかを数値化したものです。このように、条件つき確率ではない通常の確率では、何も起きていないときに、ある事象が起こる割合を考えています。 \(P(A \cap B)\)は言葉で表すと、「AかつBが起こる確率」ですが、\(A\)も\(B\)も起きていません。
これに対して条件付き確率は、ある事象がすでに起きてしまっている場合の確率を考えています。\(P_A(B)\)は言葉で表すと「Aが起こった時のBが起こる確率」ですが、Aはすでに起きてしまっています。Aがすでに起きている場合でBが起こる確率を考えるわけです。
・\(P_A(B)\) と \(P(B)\) の関係
例でもわかるように、一般的には \(P_A(B)=P(B)\) とはなりません。 (\(P_A(B)=P(B)\)となることもあります)
\(P(B)=\displaystyle\frac{27}{50}\) → \(P_A(B)=\displaystyle\frac{7}{17}\)
のように、Bが起こる確率は、Aが起こることによって変化しています。
まだ何も起きていない(何もわかっていない)状態では、10人それぞれの1億円をもらえる確率は \(\displaystyle\frac{1}{10}\) ですが、他の9人全員が非当選となった(非当選であることを知った)とすると、確率1であなたが1億円をもらえることになります。このように後の出来事や情報の入手で確率は変化しています。
もちろん変わらない場合もあります。今の例でいうと、まだ全員にチャンスがあるときに、たとえば偶然くしゃみをしたとしても、当たる確率は変わりませんね。
詳しくは数Bでやります。
(例題1)
白玉が3個、赤玉が5個入った袋がある。この袋の中から玉を袋に戻さないで1つずつ2個取り出すとき、最初の玉が白である事象をA、2番目の玉が赤である事象をBとする。
\(P_A(B)\) を求めよ。
(解答1)
\(P_A(B)=\displaystyle\frac{n(A \cap B)}{n(A)}\) を用いた方法
\(n(A)\) は、1回目に白玉が出て、2回目には何が出てもよい場合の数なので
\(n(A)=3×7=21\)
\(n(A \cap B)\)は、1回目に白玉が出て、2回目には赤玉が出る場合の数なので
\(n(A \cap B)=3×5=15\)
よって
\(P_(B)=\displaystyle\frac{15}{21}=\)\(\displaystyle\frac{5}{7}\)
(解答2)
\(P_A(B)=\displaystyle\frac{P(A \cap B)}{P(A)}\) を用いた方法
\(P(A)\)は、1回目に白玉が出る確率なので
\(P(A)=\displaystyle\frac{3}{8}\)
\(P(A \cap B)\)は、1回目に白玉が出て、2回目には赤玉が出る確率なので
\(P(A \cap B)=\displaystyle\frac{3×5}{8×7}=\displaystyle\frac{15}{56}\)
よって
\(P_A(B)=\displaystyle\frac{15}{56}÷\displaystyle\frac{3}{8}=\)\(\displaystyle\frac{5}{7}\)
(解答3)
\(P_A(B)\)の意味を考える方法
\(P_A(B)\)は、1回目に白玉が出た(白玉が出るという事象が起こった)ときの、2回目に赤玉が出る確率である。1回目に白玉が出たとき、袋の中には、白玉2個と赤玉5個が残っているので
\(P_A(B)=\)\(\displaystyle\frac{5}{7}\)
問題文の条件付き確率の意味がはっきりとしない場合には、(解答1,2)の方法を用いてください。
以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。