空間ベクトルの成分

空間ベクトルの成分表示について見ていきます。

成分表示に関しても\(z\)成分が増えるだけで、平面ベクトルと内容はほとんど同じです。

 

・ベクトルの成分

空間ベクトル 成分1

空間ベクトルを座標空間におくことで、ベクトルを「横方向、縦方向、上(下)方向」に幾らか動いたものとして表現することができます。

原点が\(O\)の座標空間において、あるベクトル\(\vec{a}\)に対して、\(\vec{a}=\overrightarrow{OA}\)となる点\(A(a_1,a_2,a_3)\) をとります。

ここで、\(x\)軸,\(y\)軸,\(z\)軸の正の向きと同じ向きの単位ベクトルを基本ベクトルといい、\(\vec{e_1},\vec{e_2},\vec{e_3}\) で表します。\(X(1,0,0)\), \(Y(0,1,0)\), \(Z(0,0,1)\) とすると、\(\vec{e_1}=\overrightarrow{OX}\), \(\vec{e_2}=\overrightarrow{OY}\), \(\vec{e_3}=\overrightarrow{OZ}\) となります。

すると、\(\vec{a}\)を基本ベクトルを用いて次のように表すことができ、これを\(\vec{a}\)の基本ベクトルによる表示といいます。

\(\vec{a}=a_1\vec{e_1}+a_2\vec{e_2}+a_3\vec{e_3}\)

また、\(a_1,a_2,a_3\)をそれぞれ\(\vec{a}\)の\(x\)成分\(y\)成分\(z\)成分といい、\(\vec{a}\)を次のように表示することもでき、これを\(\vec{a}\)の成分表示といいます。

\(\vec{a}=(a_1,a_2,a_3)\)

始点が原点だと終点の座標そのものが成分表示になります。

特徴的なベクトルの成分表示は次の通りです。
\(\vec{0}=(0,0,0)\), \(\vec{e_1}=(1,0,0)\), \(\vec{e_2}=(0,1,0)\), \(\vec{e_3}=(0,0,1)\)

ところで、2つのベクトルが等しくなることは、原点を始点に考えると終点が一致することになります。つまり2つのベクトルの\(x,y,z\)成分が等しくなることなので、\(\vec{b}=(b_1,b_2,b_3)\) とすると

\(\vec{a}=\vec{b}\) \(⇔\) \(a_1=b_1\) かつ \(a_2=b_2\) かつ \(a_3=b_3\)

が成り立ちます。

そして\(\vec{a}\)の大きさは原点と\(A(a_1,a_2,a_3)\) の距離を考えて

\(|\vec{a}|=\sqrt{a_1^2+a_2^2+a_3^2}\)

となります。

 

 

 

・成分表示による演算
ベクトルの成分表示による演算は次の通りです。

(1)和・差: \((a_1,a_2,a_3)±(b_1,b_2,b_3)=(a_1±b_1,a_2±b_2,a_3±b_3)\)
(2)実数倍: \(k(a_1,a_2,a_3)=(ka_1,ka_2,ka_3)\)
(3)まとめ: \(k(a_1,a_2,a_3)+l(b_1,b_2,b_3)=(ka_1+lb_1,ka_2+lb_2,ka_3+lb_3)\)
(\(k,l\)は実数)

平面ベクトルと同様の式です。和・差については横縦上の移動、実数倍は相似な図形を考えれば成り立つことが分かります。証明はサラッっとやっておきます。

\(\vec{e_1}=(1,0,0)\), \(\vec{e_2}=(0,1,0)\), \(\vec{e_3}=(0,0,1)\) として

(1)
\((a_1,a_2,a_3)±(b_1,b_2,b_3)\)
\(=(a_1\vec{e_1}+a_2\vec{e_2}+a_3\vec{e_3})±(b_1\vec{e_1}+b_2\vec{e_2}+b_3\vec{e_3})\)
\(=(a_1±b_1)\vec{e_1}+(a_2±b_2)\vec{e_2}+(a_3±b_3)\vec{e_3}\)
\(=(a_1±b_1,a_2±b_2,a_3±b_3)\)

(2)
\(k(a_1,a_2,a_3)\)
\(=k(a_1\vec{e_1}+a_2\vec{e_2}+a_3\vec{e_3})\)
\(=ka_1\vec{e_1}+ka_2\vec{e_2}+ka_3\vec{e_3}\)
\(=(ka_1,ka_2,ka_3)\)

(3)は(2)→(1)と組み合わせると導くことができる。

 

 

 

・2点間のベクトル

空間ベクトル 成分2

2点 \(A(a_1,a_2,a_3)\), \(B(b_1,b_2,b_3)\) とすると、\(\overrightarrow{AB}\)の成分と大きさは次の通りです。

\(\overrightarrow{AB}\)
\(=\overrightarrow{OB}-\overrightarrow{OA}\)
\(=(b_1,b_2,b_3)-(a_1,a_2,a_3)\)
\(=(b_1-a_1,b_2-a_2,b_3-a_3)\)

(横,縦,上 方向の移動を考えても成り立つことが分かる)

\(|\overrightarrow{AB}|=\sqrt{(b_1-a_1)^2+(b_2-a_2)^2+(b_3-a_3)^2}\)

(2点間の距離になる)

 

 

 

 

(例題)
\(\vec{e_1}=(1,0,0)\), \(\vec{e_2}=(0,1,0)\), \(\vec{e_3}=(0,0,1)\) とし、\(\vec{a}=(0,\displaystyle\frac{1}{2},\displaystyle\frac{1}{2})\), \(\vec{b}=(\displaystyle\frac{1}{2},0,\displaystyle\frac{1}{2})\), \(\vec{c}=(\displaystyle\frac{1}{2},\displaystyle\frac{1}{2},0)\) とするとき、\(\vec{e_1},\vec{e_2},\vec{e_3}\) をそれぞれ \(\vec{a},\vec{b},\vec{c}\) を用いて表せ。また、\(\vec{d}=(3,4,5)\) を \(\vec{a},\vec{b},\vec{c}\) を用いて表せ。

 

 

\(\vec{e_1}=s\vec{a}+t\vec{b}+u\vec{c}\) とおいて両辺を比較しても解けますが、別の方法でやってみたいと思います。
まず、\(\vec{a},\vec{b},\vec{c}\) を \(\vec{e_1},\vec{e_2},\vec{e_3}\) で表すのは簡単です。そしてできた3つの式から連立方程式を解く要領で、\(\vec{e_1},\vec{e_2},\vec{e_3}\) (これらを変数のようにみる) について解きます。

(解答)
(前半部分)
\(\vec{a}=\vec{0}+\displaystyle\frac{1}{2}\vec{e_2}+\displaystyle\frac{1}{2}\vec{e_3}\)・・・①
\(\vec{b}=\displaystyle\frac{1}{2}\vec{e_1}+\vec{0}+\displaystyle\frac{1}{2}\vec{e_3}\)・・・②
\(\vec{c}=\displaystyle\frac{1}{2}\vec{e_1}+\displaystyle\frac{1}{2}\vec{e_2}+\vec{0}\)・・・③

(①+②+③)÷2 より
\(\displaystyle\frac{1}{2}(\vec{a}+\vec{b}+\vec{c})=\displaystyle\frac{1}{2}\vec{e_1}+\displaystyle\frac{1}{2}\vec{e_2}+\displaystyle\frac{1}{2}\vec{e_3}\)・・・④

(④-①)×2 より
\(\vec{e_1}=-\vec{a}+\vec{b}+\vec{c}\)

(④-②)×2 より
\(\vec{e_2}=\vec{a}-\vec{b}+\vec{c}\)

(④-③)×2 より
\(\vec{e_3}=\vec{a}+\vec{b}-\vec{c}\)

 

(後半部分)

これも \(\vec{d}=s\vec{a}+t\vec{b}+u\vec{c}\) とやっても解けますが、せっかく誘導があるので \(\vec{d}\) を \(\vec{e_1},\vec{e_2},\vec{e_3}\) で表して求めた式を代入します。

\(\vec{d}=3\vec{e_1}+4\vec{e_2}+5\vec{e_3}\)
\(=3(-\vec{a}+\vec{b}+\vec{c})+4(\vec{a}-\vec{b}+\vec{c})+5(\vec{a}+\vec{b}-\vec{c})\)
\(=6\vec{a}+4\vec{b}+2\vec{c}\)

 

 

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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