格子点と極限

格子点の個数と極限に関する例題です。

 

 

(例題1)
2つの放物線 \(y=x^2\), \(y=(x-n)^2+n^2\)  (\(n\)は自然数) と\(y\)軸で囲まれた部分(境界線を含む)にあって、\(x\)座標、\(y\)座標がともに整数である点の個数を\(a_n\)とする。

(1)\(a_n\)を求めよ。
(2)\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\displaystyle\frac{1}{n^4}(a_1+a_2+\cdots+a_n)\) を求めよ。

 

(解答)
(1)

図示して、\(x=k\) で縦に切るとキレイに格子点の数を数えることできます。

格子点 極限1

 

 

 

 

 

 

 

\(x,y\)座標ともに整数である点を格子点と名付ける。
\(x=k\) 上の格子点は、\(y\)座標を列挙すると

\(y=k^2,k^2+1,\cdots,(k-n)^2+n^2\)

となるから、その個数は
\((k-n)^2+n^2-k^2\color{red}{+1}\)\(=-2nk+2n^2+1\)

例えば \(y=2,3,4,5\) のときは全部で4個ですが、これを数式で表すと \(5-2+1=4\) と\(+1\)が必要です。

よって
\(a_n=\displaystyle\sum_{k=0}^{n}(-2nk+2n^2+1)\)

\(=-2n\displaystyle\sum_{k=0}^{n}k+(2n^2+1)\displaystyle\sum_{k=0}^{n}1\)

最初の項は等差数列の和を考えるか、\(k=0\) はあってもなくても同じなので\(k=1\)スタートにしてシグマの公式を考えるかにします。項数は\(n+1\)になることに注意です。

\(=-2n\cdot\displaystyle\frac{1}{2}n(n+1)+(2n^2+1)(n+1)\)

\(=n^3+n^2+n+1\)

 

(2)

\(a_n\)が分かったのであとは和を計算して極限を求めるだけです。
シグマ公式は展開せずに、そのまま極限を求めたほうが楽です。

\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\displaystyle\frac{1}{n^4}(a_1+a_2+\cdots+a_n)\)

\(=\displaystyle\lim_{n \to \infty}\displaystyle\frac{1}{n^4}\displaystyle\sum_{k=1}^{n}(k^3+k^2+k+1)\)

\(=\displaystyle\lim_{n \to \infty}\displaystyle\frac{1}{n^4}\left\{\displaystyle\frac{1}{4}n^2(n+1)^2+\displaystyle\frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)+\displaystyle\frac{1}{2}n(n+1)+n\right\}\)

(\(n^4\)で割るのでほとんど項が\(0\)に収束します)

\(=\displaystyle\lim_{n \to \infty}\left\{\displaystyle\frac{1}{4}(1+\displaystyle\frac{1}{n})^2+\displaystyle\frac{1}{6n}(1+\displaystyle\frac{1}{n})(2+\displaystyle\frac{1}{n})+\displaystyle\frac{1}{2n^2}(1+\displaystyle\frac{1}{n})+\displaystyle\frac{1}{n^3}\right\}\)

\(=\displaystyle\frac{1}{4}\)

 

 

 

 

(例題2)
\(a,m\)は自然数で\(a\)は定数とする。\(xy\)平面上の点\((a,m)\)を頂点とし、原点と点\((2a,0)\)を通る放物線を考える。この放物線と\(x\)軸で囲まれる領域の面積を\(S_m\)、この領域の内部および境界線上にある格子点の数を\(L_m\)とする。ただし\(xy\)平面上の格子点とはその点の\(x\)座標と\(y\)座標がともに整数となる点のことである。

(1)\(S_m\)を求めよ。
(2)\(\displaystyle\lim_{m \to \infty}\displaystyle\frac{L_m}{S_m}\) を求めよ。

 

 

(解答)
(1)

放物線の方程式を求めて積分します。\(\displaystyle\frac{1}{6}\)公式が使えます。

放物線は \(y=k(x-a)^2+m\) とおけて、これが原点を通るから
\(0=ka^2+m\)
よって \(k=-\displaystyle\frac{m}{a^2}\)

ゆえに放物線は
\(y=-\displaystyle\frac{m}{a^2}(x-a)^2+m\)

\(=-\displaystyle\frac{m}{a^2}x(x-2a)\) (問題文の設定からも分かる)

格子点極限 例題2-1

したがって
\(S_{m}=\displaystyle\int_{0}^{2a}\left\{-\displaystyle\frac{m}{a^2}x(x-2a)\right\}dx\)

\(=-\displaystyle\frac{1}{6}(-\displaystyle\frac{m}{a^2})(2a-0)^3\)

\(=\displaystyle\frac{4am}{3}\)

 

(2)

素直に格子点の数\(L_m\)を求めようとすると、放物線上がちょうど格子点にならない場合が多数あるのでうまくいきません。そこで\(x=k\)で切るとして、例えば放物線の点が\((k,7.4)\) のような場合だと、一番近くの格子点は\((k,7)\)ですが、これはガウス記号を使うと表すことができます(ちょうど整数のときもOK)。そしてガウス記号を不等式評価することではさみうちの原理が使えるようになります。

格子点 極限 例題2-2

\([x]\)を\(x\)を超えない最大の整数とする。

領域内において、\(x=k\) 上の格子点の個数は
\(\left[-\displaystyle\frac{m}{a^2}k(k-2a)\right]-0+1=\)\(\left[-\displaystyle\frac{m}{a^2}k(k-2a)\right]+1\)

また、\(x-1<[x]≦x\) より
\(-\displaystyle\frac{m}{a^2}k(k-2a)-1<\left[-\displaystyle\frac{m}{a^2}k(k-2a)\right]≦-\displaystyle\frac{m}{a^2}k(k-2a)\)

よって、辺々\(1\)を加えて
\(-\displaystyle\frac{m}{a^2}k(k-2a)<\left[-\displaystyle\frac{m}{a^2}k(k-2a)\right]+1≦-\displaystyle\frac{m}{a^2}k(k-2a)+1\)・・・①

\(L_m=\displaystyle\sum_{k=0}^{2a}\{\left[-\displaystyle\frac{m}{a^2}k(k-2a)\right]+1\}\)
だから、①で\(k=0~2a\) の和をとると

\(\displaystyle\sum_{k=0}^{2a}\left\{-\displaystyle\frac{m}{a^2}k(k-2a)\right\}<L_m≦\displaystyle\sum_{k=0}^{2a}\left\{-\displaystyle\frac{m}{a^2}k(k-2a)+1\right\}\)

ここで
\(\displaystyle\sum_{k=0}^{2a}\left\{-\displaystyle\frac{m}{a^2}k(k-2a)\right\}\)

\(=\displaystyle\sum_{k=0}^{2a}\left\{-\displaystyle\frac{m}{a^2}k^2+\displaystyle\frac{2m}{a}k\right\}\)

(\(k=1\)スタートにしても同じだから)

\(=-\displaystyle\frac{m}{a^2}\cdot\displaystyle\frac{1}{6}\cdot2a(2a+1)(4a+1)+\displaystyle\frac{2m}{a}\cdot\displaystyle\frac{1}{2}2a(2a+1)\)

\(=\displaystyle\frac{m}{3a}(4a^2-1)\)

ゆえに
\(\displaystyle\frac{m}{3a}(4a^2-1)<L_m≦\displaystyle\frac{m}{3a}(4a^2-1)+(2a+1)\)

(1)の結果から
\(\displaystyle\frac{4a^2-1}{4a^2}<\displaystyle\frac{L_m}{S_m}≦\displaystyle\frac{4a^2-1}{4a^2}+\displaystyle\frac{3(2a+1)}{4am}\)

\(\displaystyle\lim_{m \to \infty}\displaystyle\frac{3(2a+1)}{4am}=0\) だから、はさみうちの原理から

\(\displaystyle\lim_{m \to \infty}\displaystyle\frac{L_m}{S_m}=\displaystyle\frac{4a^2-1}{4a^2}\)

 

 

(参考)

極限 格子点 例題2-3

格子点の数\(1\)を、その格子点が右下の点になるような面積\(1\)の正方形に対応させると、正方形の全面積(格子点の全個数に対応)は図のようになります。\(m\)を大きくしていくと、グラフに対して相対的に正方形は小さくなるので、正方形の面積\(L_m\)とグラフと\(x\)軸で囲まれた面積\(S_m\)は近い値になっていきます。したがって\(\displaystyle\lim_{m \to \infty}\displaystyle\frac{L_m}{S_m}\)は\(1\)に近い値になります。(\(1\)になることもあります)

 

 

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見ていただきありがとうございました。
next→極限と正誤判定 back→はさみうちの原理③(ガウス記号)

タイトルとURLをコピーしました