必要から十分へ

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(このページでは数Ⅱ(不等式の証明)の知識が必要です。)

 

問題によっては必要十分性を維持しながら解くことが困難な場合があります。
その場合、まず必要条件を求めて最後に十分性を確認するという方法をとったほう解きやすいことがあります。

 

(問題)

\(m\)は次の条件(A)が成立する実数とする。
(A) 任意の実数 \(a,b,c\) について  \(m(a^2+b^2+c^2)≧(a+b+c)^2\)

(1) \(m=3\)のとき(A)が成立することを示せ。
(2) \(m\)の最小値を求めよ。

(解答)
(1)は(2)の誘導問題で今回のテーマではないので簡略化して解いてみます。
(1)
\(3(a^2+b^2+c^2)-(a+b+c)^2\)
\(=2(a^2+b^2+c^2)-2(ab+bc+ca)\)
\(=(a-b)^2+(b-c)^2+(c-a)^2≧0\)
つまり \(3(a^2+b^2+c^2)≧(a+b+c)^2\) なので、\(m=3\)のとき条件(A)が成り立つ。

 

(2)メインテーマです。

例えば、\(m(a^2+b^2+c^2)≧(a+b+c)^2\)で、\(a=b=c=0\) のときは \(m×0≧0^2\) から 任意の\(m\)について条件(A)が成り立つので、(A)の両辺を \(a^2+b^2+c^2(≠0)\) で割ると

条件(A)
\(\leftrightarrow\) \(m≧\displaystyle\frac{(a+b+c)^2}{a^2+b^2+c^2}\)・・・① が任意の\(a,b,c\)で成り立つ

\(\leftrightarrow\) \(m≧\)①の右辺の最大値

となるので①の右辺の最大値を具体的に求めれば\(m\)の最小値が分かることになりますが、①の右辺は3変数の関数であり最大値を求めるのは難しそうです。
そこで、任意の\(a,b,c\)という条件からある\(a,b,c\)という条件に絞り込んで話を進めます。(1)で\(m=3\)という値では(A)が成り立つことが分かったのでこれが最小値ではないかと予想しておきます。

 

条件(A)が成り立つとき、 \(a=b=c=1\) のときも条件(A)は成り立つ。 \(a=b=c=1\) を代入して
\(3m≧9\) したがって \(m≧3\)  (必要条件)
特定の \(a,b,c\) を代入しただけなので、この時点では \(m=3\) のとき(A)が成り立つかどうかは分かりません。((A)が成り立つ   →  \(a=b=c=1\) のときも条件(A)は成り立つ   →   \(m≧3\)
よって\(m≧3\)は必要条件となり、 「\(m≧3\) → (A)が成り立つ」が正しいかどうかはわかりません)
ただ、(1)で\(m=3\)のとき(A)が成り立つことを示しているのでこれを利用します。

 

(1)より\(m=3\)のとき、条件(A)は成り立つ。(\(m=3\)は十分条件)

したがって\(m=3\)が求める最小値である。
\(a,b,c\)の代入する値によっては、必要条件が変わってきます。例えば \(a=1,b=1,c=2\) を代入すると  \(m≧2.666・・・\) となります。本解答の必要条件 \(m≧3\) からわかりますが \(m=2.666・・・\) のときは条件(A)は成り立ちません。(正確には  「(A)が成り立つ→\(m≧3\)」の対偶「\(m<3\)→(A)は成り立たない」を考えます)
ただ、\(m≧2.666・・・\) が決して間違っているわけではないです。\(m≧2.666・・・\) は \(m=2.666・・・\) または  \(m>2.666・・・\) なのでどちらかが成り立てばよいからです。
それと \(m=3\) のとき(A)は成り立つので、どう値を代入しても、\(m≧\)(\(3\)より大きい数)という必要条件は出てきません。(仮に \(m≧5\) という条件が表れるとすると、「(A)が成り立つ→\(m≧5\)」の対偶を考えると、\(m=3\)で成り立つことと矛盾が生じるからです。)
ちなみに本解答から\(m=3\)のときは条件(A)は成り立つことが分かりますが、\(m>3\)のときは成り立つかどうかは示していないことに注意してください。

 

(必要条件を、最低限必要なゆるい条件とイメージすると分かりやすいかもしれません。)

 

 

かなりハードな内容でしたね(汗)。

 

 

以上です。御疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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