背理法

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ある命題が直接証明することが難しい場合、(8-1)では対偶を利用することを説明しましたが、他にも方法があります。

 

・背理法
ある命題を証明するのに、その命題が偽(または結論が成り立たない)と仮定して矛盾を導き、命題を真とする証明法を背理法といいます。

 

具体例をもとに検討してみましょう。

(例)
(1)\(n\)を整数とする。
\(n^2\)が\(3\)の倍数ならば、\(n\)は\(3\)の倍数であることを証明せよ。

(2)\(\sqrt{3}\)が無理数であることを証明せよ。

 

(解答)

(1)は(2)の証明の準備の問題です。対偶が真であることを示します。
(1)
与えられた命題の対偶は
「\(n\)が\(3\)の倍数でないならば、\(n^2\)は3の倍数でない。」である。

\(n\)が\(3\)の倍数でないとき、\(k\)を整数として
\(n=3k±1\) と表される。

\(n^2\)
\(=(3k±1)^2\)
\(=3(3k^2±2k)+1\)

\(3(3k^2±2k)\)は\(3\)の倍数なので、\(n^2\)は\(3\)の倍数ではない。
したがって対偶が真となるので、もとの命題も真となる。

(2)
\(\sqrt{3}\)が無理数であることの証明を直接することは難しそうです。そこで、仮に\(\sqrt{3}\)が無理数であることを否定して矛盾を導くことで、\(\sqrt{3}\)が無理数であることを間接的に証明します。

\(\sqrt{3}\)が無理数でない、つまり有理数であると仮定すると、

\(\sqrt{3}=\displaystyle\frac{q}{p}\)・・・①
\(p,q\)は正の整数で1以外の正の公約数を持たない・・・②

と表される。①の両辺を平方して分母を払うと
\(q^2=3p^2\)・・・③

\(3p^2\)は3の倍数なので\(q^2\)も3の倍数。ここで(1)より\(q\)も3の倍数となる。
よって\(q=3m\)  (\(m\)は正の整数)とおける。③に代入すると
\(9m^2=3p^2\)
ゆえに\(3m^2=p^2\)
よって\(p^2\)は3の倍数で、再び(1)より\(p\)も3の倍数である。
ここで\(p,q\)がともに3の倍数となるので、1以外の正の公約数を持ち②と矛盾する。
したがって\(\sqrt{3}\)は有理数でなく無理数である。

ポイントは2つあります。まず当たり前ですが、仮定以外に間違いがないこと。
仮定以外に間違いがあると、仮定が間違っていると判断できません。2つめのポイントは矛盾から得られる結論は仮定の否定です。今回の例では仮定(\(\sqrt{3}\)が有理数)であることの否定なので、\(\sqrt{3}\)が無理数となります。有理数でないという結論から無理数以外の可能性があってはだめです。「コインがどの面を上向きにしているか」という問題で、「表でないことが示されたから裏である」と結論したとすると、他の誰かが「厚みがあるからコインが立ってるかもしれない」と反論した場合、言い返せなくなってはダメということです。

 

※例のように 無理数である=有理数でない という「ない」の証明をするとき背理法と相性がいい場合があります。「ない」を否定すると「ある」という条件が表れるので、証明が進みやすくなるからです。対偶を利用した証明も同様です。

 

 

 

以上になります。御疲れさまでした。
ここまで見て頂いてありがとうございました。

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