不等式で表された2次式が表す領域についてみていきます。
・2次曲線と領域(放物線)
\(x^2<4py\)、\(x^2>4py\) (縦開き型)
\(y^2<4px\)、\(y^2>4px\) (横開き型)
(ただし、\(p>0\) とする)
が表す領域は上図のようになります。(境界は含まない)
これは例えば、\(x^2<4py\) については
\(y>\displaystyle\frac{1}{4p}x^2\)
になるので、領域は放物線の上側になることが分かります。
横開き型については\(x,y\)が入れかわっているだけなので、\(y\)軸を縦開き型の\(x\)軸のように扱って同様に考えることができます。
もしくは特定の点の座標が不等式を満たすかどうかで判断することも可能です。例えば
\(x^2<4py\)
だと、\(y\)が大きい(極端に大きいと考えると分かりやすい)部分になるので、放物線の上側を表していると判断ができます。
・2次曲線と領域(楕円)
\(\displaystyle\frac{x^2}{a^2}+\displaystyle\frac{y^2}{b^2}<1\)・・・①
\(\displaystyle\frac{x^2}{a^2}+\displaystyle\frac{y^2}{b^2}>1\)・・・②
(\(a,b>0\) とする)
が表す領域は円の場合と同じで上図のようになります(境界は含まない)。(\(a,b\)の大小については、楕円の形状が変わるだけで領域は同様になる)
放物線の場合と同様に特定の点(原点について考えると分かりやすい)の座標を代入して不等式が成り立つかどうか確認するとよいです。丁寧に証明すると次のようになります。
(証明)
\(\displaystyle\frac{x^2}{a^2}+\displaystyle\frac{y^2}{b^2}<1\)・・・①
のとき、\(x≦-a,\ x≧a\) では
\(\displaystyle\frac{x^2}{a^2}≧1\) となり①が成り立たないので、\(-a<x<a\) で考えればよい。
\(x=x_1\) (\(-a<x_1<a\) )での断面を考える。点\((x_1,y_1)\) を楕円上の点とすると
\(\displaystyle\frac{x_1^2}{a^2}+\displaystyle\frac{y_1^2}{b^2}=1\)・・・(i)
①を満たす点を \((x_1,k)\) とすると
\(\displaystyle\frac{x_1^2}{a^2}+\displaystyle\frac{k^2}{b^2}<1\)・・・(ii)
(ii)に(i)を代入して整理すると
\(k^2<y_1^2\)
\(-|y_1|<k<|y_1|\)
したがって、①を満たす領域は楕円の内部になる。
\(\displaystyle\frac{x^2}{a^2}+\displaystyle\frac{y^2}{b^2}>1\)・・・②
のとき、\(x<-a,\ x>a\) では
\(\displaystyle\frac{x^2}{a^2}>1\) となり②は\(y\)の値によらずに成り立つので、領域\(x<-a,x>a\) は②の表す領域の一部となる。
\(-a≦x≦a\) のとき
\(x=x_1\) (\(-a≦x_1≦a\) )での断面を考える。点\((x_1,y_1)\) を楕円上の点とすると
\(\displaystyle\frac{x_1^2}{a^2}+\displaystyle\frac{y_1^2}{b^2}=1\)・・・(i)
②を満たす点を \((x_1,k)\) とすると
\(\displaystyle\frac{x_1^2}{a^2}+\displaystyle\frac{k^2}{b^2}>1\)・・・(iii)
(iii)に(i)を代入して整理すると
\(k^2>y_1^2\)
\(k<-|y_1|,\ k>|y_1|\)
以上のことから、②を満たす領域は楕円の外部になる。
・2次曲線と領域(双曲線)
\(\displaystyle\frac{x^2}{a^2}-\displaystyle\frac{y^2}{b^2}<1\)、\(\displaystyle\frac{x^2}{a^2}-\displaystyle\frac{y^2}{b^2}>1\) (横開き型)
\(\displaystyle\frac{x^2}{a^2}-\displaystyle\frac{y^2}{b^2}<-1\)、\(\displaystyle\frac{x^2}{a^2}-\displaystyle\frac{y^2}{b^2}>-1\) (縦開き型)
(\(a,b>0\) とする)
が表す領域は上図のようになります。(境界は含まない)
これも特定の点(原点など)が領域に含まれるかどうかですぐに判断が可能です。証明については楕円の場合とほぼ同様です。
つまり各種不等式は、(\(x,y\)) が領域内にあるための必要十分条件となります。
(例題)
楕円 \(\displaystyle\frac{x^2}{a^2}+\displaystyle\frac{y^2}{b^2}=1\) (\(a>0,\ b>0\)) の外部(周上を除く)の点を\(P(X,Y)\)とおく。
接線の傾きを\(m\)とおくことにより、次の(1)(2)の場合いずれも\(P\)から楕円に対して異なる2本の接線が引けることを示せ。
(1)\(X=±a\) (2)\(X≠±a\)
(解答)
(1)
\(\displaystyle\frac{x^2}{a^2}+\displaystyle\frac{y^2}{b^2}=1\)・・・①
\(X=a\) のときのみ示す。(\(X=-a\) も同様)
接線の1つは \(x=a\)・・・②
②以外の\(P(a,Y)\)を通る直線の方程式は傾きを\(m\)とすると
\(y=m(x-a)+Y\)・・・③
③を①に代入して
\(\displaystyle\frac{x^2}{a^2}+\displaystyle\frac{\{m(x-a)+Y\}^2}{b^2}=1\)
\(x\)について整理すると
\((a^2m^2+b^2)x^2+2a^2m(Y-ma)x+a^2(Y-ma)^2-a^2b^2=0\)・・・④
\(b^2>0\)より、④の判別式を\(D\)とすると
\(\displaystyle\frac{D}{4}=0\)
\(a^4m^2(Y-ma)^2-(a^2m^2+b^2)\{a^2(Y-ma)^2-a^2b^2\}=0\)
\(a^4b^2m^2-a^2b^2(Y-ma)^2+a^2b^4=0\)
\(a^2m^2-(Y-ma)^2+b^2=0\)
\(2Yam+b^2-Y^2=0\) (\(m^2\)の項が消える)
\(2Yam=Y^2-b^2\)
ここで、\(Y=0\) とすると、\(P(a,0)\) であり楕円上の点になる。
よって、\(Y≠0\) だから
\(m=\displaystyle\frac{Y^2-b^2}{2Ya}\)・・・⑤
したがって⑤の傾きをもつ接線が引けるので②と合わせて異なる2本の接線が引けることになる。
(2)
\(\displaystyle\frac{x^2}{a^2}+\displaystyle\frac{y^2}{b^2}=1\)・・・①
\(X≠±a\) のとき\(x\)軸に垂直な直線は接線とはならない。
よって、\(P(X,Y)\) を通る接線の方程式は傾きを\(m\)とすると
\(y=m(x-X)+Y\)・・・⑥
⑥を①に代入して\(x\)について整理すると
\((a^2m^2+b^2)x^2+2a^2m(Y-mX)x+a^2(Y-mX)^2-a^2b^2=0\)・・・⑦
⑦は重解をもつので
\(a^4m^2(Y-mX)^2-(a^2m^2+b^2)\{a^2(Y-mX)^2-a^2b^2\}=0\)
\(a^2m^2-(Y-mX)^2+b^2=0\)
\(m\)について整理して
\((a^2-X^2)m^2+2XYm+b^2-Y^2=0\)・・・⑧
\(X≠±a\) のとき⑧は\(m\)の2次方程式となり、その判別式は
\(\displaystyle\frac{D}{4}=X^2Y^2-(a^2-X^2)(b^2-Y^2)\)
\(=-a^2b^2+a^2Y^2+b^2X^2\)
ここで、\(P(X,Y)\) は楕円の外部の点だから
\(\displaystyle\frac{X^2}{a^2}+\displaystyle\frac{Y^2}{b^2}>1\)
よって \(b^2X^2+a^2Y^2>a^2b^2\) が成り立つので
\(\displaystyle\frac{D}{4}>0\)
したがって、⑧を満たす異なる実数\(m_1,m_2\)が存在するため、\(P(X,Y)\)を通る異なる傾きをもつ接線が2本存在することになる。以上より題意は示された。
以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
next→曲線と2次曲線の位置関係① back→離心率