楕円の拡大縮小と円

楕円の拡大縮小と円の関係について見ていきます。
まず曲線の拡大縮小の一般論から整理したいと思います。

 

・曲線の拡大縮小
\(xy\)平面上の曲線 \(F(x,y)=0\) について
\(x\)軸方向に\(k\)倍だけ拡大(縮小)した曲線の表す方程式は

\(F(\displaystyle\frac{x}{k},\ y)=0\)

となります。

(証明)

楕円拡大1

点\((x,y)\) を拡大した点を\((X,Y)\)とおくと
\(X=kx\)、\(Y=y\)
よって
\(x=\displaystyle\frac{X}{k}\)、\(y=Y\)
これらを \(F(x,y)=0\) に代入して変数を\(x,y\)に変えると得られる。

 

同様に\(y\)軸方向に\(k\)倍拡大した曲線の方程式は
\(F(x,\displaystyle\frac{y}{k})=0\)

\(x\)軸と\(y\)軸ともに\(k\)倍拡大した(原点を中心に\(k\)倍相似拡大するともいう)曲線の方程式は
\(F(\displaystyle\frac{x}{k},\displaystyle\frac{y}{k})=0\)

となります。

平行移動の場合(引き算になる)と似たような理由で、\(k\)倍拡大の場合は変数を\(\displaystyle\frac{1}{k}\)倍します。(割り算になる)

 

 

・楕円の拡大縮小と円
上記のことを利用すると、楕円を拡大縮小すると円に変換可能であることが分かります。

楕円拡大2

楕円 \(\displaystyle\frac{x^2}{a^2}+\displaystyle\frac{y^2}{b^2}=1\)・・・①
の\(y\)軸上の頂点の1つ\((0,b)\)を\((0,a)\)に拡大することに着目して、①を\(y\)軸方向に\(\displaystyle\frac{a}{b}\) 倍拡大してみます。
\(y \to \displaystyle\frac{y}{\displaystyle\frac{a}{b}}\) と変換すればよいので、拡大後の曲線の方程式は
\(\displaystyle\frac{x^2}{a^2}+\displaystyle\frac{(\displaystyle\frac{by}{a})^2}{b^2}=1\)
\(\displaystyle\frac{x^2}{a^2}+\displaystyle\frac{y^2}{a^2}=1\)
つまり
\(x^2+y^2=a^2\)
となることが分かります。(\(x\)軸方向に \(\displaystyle\frac{b}{a}\) 倍してもよい。円 \(x^2+y^2=b^2\) が得られる)

拡大縮小すると楕円を扱いやすい円に変換できるので、円の性質を利用して楕円に関する問題を解くことができます。以下その例を挙げます。

(i)面積

(ii)交点(接点)

(iii)線分の内分比

(扱えない例)長さ、角度

(i)について
「\(y\)軸方向に\(k\)倍すると面積も\(k\)倍になる」ことを利用して楕円の面積を求めることができます。「」の理由は積分の性質 \(\displaystyle\int kydx=k\displaystyle\int y dx\) より分かりますし、単純に縦方向だけ\(k\)倍するので面積も\(k\)倍になる(細かい長方形の短冊に分割する)と考えてもよいです。

楕円 \(\displaystyle\frac{x^2}{a^2}+\displaystyle\frac{y^2}{b^2}=1\)・・・①
を\(y\)軸方向に\(\displaystyle\frac{a}{b}\)倍すると上記の結果から半径\(a\)の円になるので、楕円の面積を\(S\)とすると
\(S×\displaystyle\frac{a}{b}=πa^2\)
よって
\(S=πab\)
となります。

(ii)について

楕円拡大3

交点は拡大縮小によりある1つの点に動くので、交点だった点は交点のままです。同様に交点でない点は拡大縮小によっても交点でないままです。よってそのままの位置関係として考えることができます。よく利用されるのが交点が接点である場合です。

(iii)について

楕円拡大4

線分\(AB\)を\(y\)軸方向だけ\(k\)倍して\(A’B’\)になるとします。\(AB\)上の内分点\(P\)が\(P’\)に移動するとき、\(x\)軸方向の比は変わらないので\(P,P’\)による分割比は同じです。このことから線分の内分点の軌跡(特に中点の軌跡)などを拡大しても同様に考えることができます。

※長さや角度は単純に\(k\)倍にはなりません。

 

 

(例題)
座標平面上に楕円 \(\displaystyle\frac{x^2}{9}+\displaystyle\frac{y^2}{4}=1\) と 直線 \(y=x+k\) がある。 原点を\(O\)とし、楕円と直線が異なる2点\(P,Q\)で交わるとき、三角形\(OPQ\)の面積を最大にする\(k\)とそのときの面積を求めよ。

 

もちろん拡大して円にしなくても解けますが(交点の座標を求めて三角形の面積を求める)、せっかくなので円に変換してやってみます。

(解答)

楕円拡大 例題1-1

全体を\(y\)軸方向に\(\displaystyle\frac{3}{2}\)倍する。
拡大後の円と直線の方程式は \(y \to \displaystyle\frac{2}{3}y\) として

円:\(x^2+y^2=9\)・・・①
直線:\(\displaystyle\frac{2}{3}y=x+k\)・・・②

①②の交点を\(P’,Q’\)とすると、これらはそれぞれ\(P,Q\)の拡大後の点である。

拡大により\(△OPQ\)は一律\(\displaystyle\frac{3}{2}\)倍されるので、①②でできる三角形\(△OP’Q’\)の面積の最大値を考えればよい。\(OP’\)と\(OQ’\)のなす角を\(θ\)とすれば

\(△OP’Q’=\displaystyle\frac{1}{2}\cdot3^2\sinθ=\displaystyle\frac{9}{2}\sinθ\)

よって、\(θ=90°\) のとき最大値\(\displaystyle\frac{9}{2}\)をとりそのとき拡大を元に戻すと
\(△OPQ=\displaystyle\frac{2}{3}\cdot\displaystyle\frac{9}{2}\)\(=3\)

楕円拡大 例題1-2

このとき、\(△OP’Q’\)は直角二等辺三角形になるので\(O\)と直線②の距離を考えて
\(\displaystyle\frac{|k|}{\sqrt{1+\displaystyle\frac{4}{9}}}=\displaystyle\frac{3}{\sqrt{2}}\)
よって \(k=±\displaystyle\frac{\sqrt{26}}{2}\)

\(k=±\displaystyle\frac{\sqrt{26}}{2}\) のとき \(△OPQ\)の最大値は \(3\)

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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