三角関数の図形への応用

三角関数を利用した図形問題の解法について見ていきます。

 

(例題)
三角形\(ABC\) の内接円の半径を\(r\)、外接円の半径を\(R\)とする。
また、\(\angle A=2x\), \(\angle B=2y\), \(\angle C=2z\) とする。
(1)辺\(BC\)の長さを、\(r,y,z\) で表せ。
(2)\(r=4R\sin x\sin y\sin z\) であることを示せ。

 

 

 

2パターンの解法を紹介します。
1つ目は、図形の性質を利用した解法です。こちらは誘導の流れにうまくのっています。
2つ目は、三角形の面積を2パターンで表す方法です。こちらは誘導にあまりのっていないし計算も複雑ですが、式が立式しやすく、式変形のいい練習になると思います。

(解答1)図形的解法
(1)

内接円の中心(内心)は、3つの内角の2等分線の交点です。この性質を利用するとちょうど\(B,C\)の半分の\(y,z\)についての等式を立式できます。内心から各辺に垂線をおろすと、交点がちょうど内接円と三角形の接点となることもあわせて利用します。

三角関数 図形

\(△IBC\)内の2つの直角三角形に着目して

\(BH=\displaystyle\frac{r}{\tan y}\), \(HC=\displaystyle\frac{r}{\tan z}\)

よって
\(BC=BH+HC\)
\(=r(\displaystyle\frac{1}{\tan y}+\displaystyle\frac{1}{\tan z})\)
\(=r(\displaystyle\frac{\cos y}{\sin y}+\displaystyle\frac{\cos z}{\sin z})\)

 

(2)

外接円の半径\(R\)も含めた等式を証明するので、\(R\)と辺と内角を結びつける正弦定理を利用します。

正弦定理より
\(BC=2R\sin A=2R\sin2x\)

(1)より
\(r(\displaystyle\frac{\cos y}{\sin y}+\displaystyle\frac{\cos z}{\sin z})\)\(=2R\sin2x\)

分母を払うと
\(r(\sin z\cos y+\cos z\sin y)\)\(=2R\sin2x\sin y\sin z\)

左辺に、加法定理の逆の変形を行います。右辺の\(2x\)の部分も2倍角の公式で変形しておいきます。

\(r\sin(z+y)\)\(=4R\sin x\cos y\sin y\sin z\)・・・①

だいぶ示したい式に近づいてきました。あと余分な部分は\(\sin(z+y)\)と\(\cos y\)の部分なのでこの辺りの変形を試みます。

ここで三角形の内角の和は180°より
\(2x+2y+2z=180°\)
\(y+z=90°-x\)

よって
\(\sin(y+z)\)
\(=\sin(90°-x)\)
\(=\cos x\)

また、\(0°<2x<180°\) より
\(0°<x<90°\) であるから
\(\cos x≠0\)

したがって①の両辺を \(\cos x\) で割って
\(r\)\(=4R\sin x\sin y\sin z\)

 

 

(解法2)面積を2通りで表す方法
正弦定理より
\(2R=\displaystyle\frac{BC}{\sin A}=\displaystyle\frac{CA}{\sin B}=\displaystyle\frac{AB}{\sin C}\)

よって三角形の面積\(S\)は
\(S=\displaystyle\frac{1}{2}AB\cdot AC\sin A\)
\(=2R^2\sin A\sin B\sin C\)

また、\(S\)は
\(S=\displaystyle\frac{r}{2}(AB+BC+CA)\)
\(=rR(\sin A+\sin B+\sin C)\)
とも表される。

したがって
\(2R^2\sin A\sin B\sin C\)\(=rR(\sin A+\sin B+\sin C)\)

\(2R\sin A\sin B\sin C\)\(=r(\sin A+\sin B+\sin C)\)・・・(※)

あとは(※)を変形していくだけです。

(1)
\(BC=2R\sin A\) と(※)より

\(BC\sin B\sin C\)\(=r(\sin A+\sin B+\sin C)\)

\(0°<B<180°\), \(0°<C<180°\) より、両辺\(\sin B\sin C\) で割り、
\(\sin A=\sin(180°-(B+C))=\sin(B+C)\) だから

\(BC\)
\(=r・\displaystyle\frac{\sin(B+C)+\sin B+\sin C}{\sin B\sin C}\)

\(=r・\displaystyle\frac{\sin B\cos C+\cos B\sin C+\sin B+\sin C}{\sin B\sin C}\)

\(=r・\displaystyle\frac{\sin 2y\cos 2z+\cos 2y\sin 2z+\sin 2y+\sin 2z}{\sin 2y\sin 2z}\)

(分子を \(\sin 2y\) と \(\sin 2z\) でまとめて)

\(=r・\displaystyle\frac{\sin 2y(\cos 2z+1)+\sin 2z(\cos 2y+1)}{\sin 2y\sin 2z}\)

\(=r(\displaystyle\frac{\cos 2z+1}{\sin 2z}+\displaystyle\frac{\cos 2y+1}{\sin 2y})\)

(倍角の公式から)

\(=r(\displaystyle\frac{2\cos^2z}{\sin 2z}+\displaystyle\frac{2\cos^2y}{\sin 2y})\)

\(=r(\displaystyle\frac{2\cos^2z}{2\sin z\cos z}+\displaystyle\frac{2\cos^2y}{2\sin y\cos y})\)

\(=r(\displaystyle\frac{\cos z}{\sin z}+\displaystyle\frac{\cos y}{\sin y})\)

 

(2)
\(A,B,C\) は三角形の内角なので、いずれも\(0°\)より大きく、\(180°\) より小さい。よって
\(\sin A>0\), \(\sin B>0\), \(\sin C>0\)
(※)より
\(r=\displaystyle\frac{2R\sin A\sin B\sin C}{\sin A+\sin B+\sin C}\)

ここで
\(\sin A+\sin B+\sin C\)

\(=2\sin\displaystyle\frac{A+B}{2} \cos\displaystyle\frac{A-B}{2}+\sin(180°-(A+B))\)

\(=2\sin\displaystyle\frac{A+B}{2} \cos\displaystyle\frac{A-B}{2}+\sin(A+B)\)

\(=2\sin\displaystyle\frac{A+B}{2} \cos\displaystyle\frac{A-B}{2}+2\sin\displaystyle\frac{A+B}{2}\cos\displaystyle\frac{A+B}{2}\)

\(=2\sin\displaystyle\frac{A+B}{2}(\cos\displaystyle\frac{A-B}{2}+\cos\displaystyle\frac{A+B}{2})\)

\(=2\sin\displaystyle\frac{A+B}{2}(2\cos\displaystyle\frac{A}{2}\cos\displaystyle\frac{-B}{2})\)

\(=2\sin(90°-\displaystyle\frac{C}{2})(2\cos\displaystyle\frac{A}{2}\cos\displaystyle\frac{B}{2})\)

\(=4\cos\displaystyle\frac{A}{2}\cos\displaystyle\frac{B}{2}\cos\displaystyle\frac{C}{2}\)

\(=4\cos x\cos y\cos z\)
となるから

\(r=\displaystyle\frac{2R\sin A\sin B\sin C}{\sin A+\sin B+\sin C}\)

\(=\displaystyle\frac{2R\sin 2x\sin 2y\sin 2z}{4\cos x\cos y\cos z}\)

\(=\displaystyle\frac{2R\cdot2^3\sin x\cos x\sin y \cos y\sin z \cos z}{4\cos x\cos y\cos z}\)

\(=4R\sin x \sin y \sin z\)

 

 

※\(△ABC\) において成り立つ等式

\(\sin A+\sin B+\sin C\)
\(=4\cos\displaystyle\frac{A}{2}\cos\displaystyle\frac{B}{2}\cos\displaystyle\frac{C}{2}\)

が途中で登場しました。

 

 

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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