偶関数・奇関数と定積分

偶関数・奇関数の定積分の性質について見ていきます。

 

・偶関数・奇関数の定積分の性質
関数 \(y=f(x)\) において任意の実数\(x\)で

\(f(x)=f(-x)\) を満たすとき、\(f(x)\)を偶関数
\(f(x)=-f(-x)\) を満たすとき、\(f(x)\)を奇関数

といいます。グラフでみると偶関数は\(y\)軸対称奇関数は原点対称になっています。

偶関数・奇関数の定積分で上端と下端の絶対値が同じで符号が異なるものについて、次のような等式が成り立ちます。

(偶関数・奇関数の定積分)
\(I=\displaystyle\int_{-a}^{a}f(x)dx\) ついて
(i)\(f(x)\)が偶関数のとき、\(I=2\displaystyle\int_{0}^{a}f(x)dx\)
(ii)\(f(x)\)が奇関数のとき、\(I=0\)

(解説)

偶奇関数 定積分1

定積分が符号付き面積を表していることと、グラフの対称性より直感的にも分かりやすい等式です。
丁寧にやるなら次の通りです。

(証明)
\(I=\displaystyle\int_{-a}^{a}f(x)dx\)
(分割して)
\(=\displaystyle\int_{-a}^{0}f(x)dx+\displaystyle\int_{0}^{a}f(x)dx\)

ここで1つ目の積分について、\(x=-t\) で置換すると
\(x:-a \to 0\) のとき \(t:a \to 0\)
\(dx=-dt\) だから

\(I=-\displaystyle\int_{a}^{0}f(-t)dt+\displaystyle\int_{0}^{a}f(x)dx\)

\(=\displaystyle\int_{0}^{a}f(-t)dt+\displaystyle\int_{0}^{a}f(x)dx\)
(変数を\(x\)に戻してまとめると)
\(=\displaystyle\int_{0}^{a}\{f(-x)+f(x)\}dx\)

したがって
\(f(x)\)が偶関数のとき \(f(-x)=f(x)\) だから
\(I=2\displaystyle\int_{0}^{a}f(x)dx\)

\(f(x)\)が奇関数のとき \(f(-x)=-f(x)\) だから
\(I=0\)

この等式のよいところは、偶関数の場合には下端が\(0\)になるので計算しやすいことと、奇関数の場合にはそもそも積分計算が必要ないことから、格段に定積分の計算が楽になることです。
また奇関数の場合では、原始関数が具体的に求めることができない場合でも、定積分の値が\(0\)になることがすぐに分かります。

なお偶関数と奇関数の積で作られた関数がどうなるかについては次の通りです。

(偶関数)×(偶関数)=(偶関数)
(偶関数)×(奇関数)=(奇関数)
(奇関数)×(奇関数)=(偶関数)

(偶関数を\(+\)、奇関数を\(-\)とすれば、正負の積に類似している)

これらは例えば①だと、偶関数 \(f(x),g(x)\) について
\(F(x)=f(x)g(x)\) とおくと
\(F(-x)=f(-x)g(-x)=f(x)g(x)=F(x)\)
より分かります。(②③も同様)

 

 

(例題)
次の定積分を求めよ。
(1)\(\displaystyle\int_{-1}^{1}e^{x^2}\sin xdx\)

(2)\(\displaystyle\int_{-\frac{π}{2}}^{\frac{π}{2}}(\cos^2x-\sin x\cos x+x\cos x+\cos x)dx\)

 

(解答)
(1)

原始関数は求まりませんが、被積分関数は奇関数で、上端と下端の絶対値は同じで符号が反対なので、積分の値は\(0\)と分かります。

\(f(x)=e^{x^2}\sin x\) とおくと
\(f(-x)=e^{(-x)^2}\sin(-x)=-e^{x^2}\sin x=-f(x)\)
だから、\(f(x)\) は奇関数。

よって
\(\displaystyle\int_{-1}^{1}e^{x^2}\sin xdx=0\)

(2)

こちらは原始関数は分かりますが、\(\sin x\cos x\) と \(x\cos x\) は奇関数になるので、この2つは計算不要です。

\(\displaystyle\int_{-\frac{π}{2}}^{\frac{π}{2}}(\cos^2x-\sin x\cos x+x\cos x+\cos x)dx\)

(\(\sin x,x\) は奇関数、\(\cos x\)は偶関数)

\(=\displaystyle\int_{0}^{\frac{π}{2}}2(\cos^2x+\cos x)dx\)

\(=\displaystyle\int_{0}^{\frac{π}{2}}(1+\cos2x+2\cos x)dx\)

\(=\left[x+\displaystyle\frac{\sin2x}{2}+2\sin x\right]_{0}^{\frac{π}{2}}\)

\(=\displaystyle\frac{π}{2}+2\)

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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