漸化式と定積分と極限

定積分の極限の漸化式に関する例題です。

 

(例題1)
数列\(\{a_n\}\)を
\(a_n=\displaystyle\int_{0}^{1}x^ne^xdx\)  (\(n=1,2,3,\cdots\))
で定める。ここで、\(e\)は自然対数の底である。

(1)\(a_{n+1}\)と\(a_n\)の関係式を求めよ。
(2)自然数\(n\)に対して、\(a_n=b_ne+c_n\) となる整数\(b_n,c_n\)があることを、数学的帰納法を用いて証明せよ。
(3)\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\displaystyle\frac{b_n}{c_n}=-\displaystyle\frac{1}{e}\) を示せ。

 

(解答)
(1)

\(n+1\) から \(n\) の式を導きたいので、次数を下げる部分積分を利用します。
積分するのはもちろん\(e^{x}\)のほうです。

\(a_{n+1}=\displaystyle\int_{0}^{1}x^{n+1}e^xdx\)

\(=[x^{n+1}e^{x}]_{0}^{1}-\displaystyle\int_{0}^{1}(n+1)x^{n}e^xdx\)

\(=e-(n+1)a_n\)

よって
\(a_{n+1}=e-(n+1)a_n\)

(2)
(誘導通り帰納法で示します)
(i)\(n=1\) のとき
\(a_1=\displaystyle\int_{0}^{1}xe^xdx=[xe^{x}]_{0}^{1}-\displaystyle\int_{0}^{1}e^xdx\)
\(=e-[e^{x}]_{0}^{1}\)
\(=0\cdot e+1\)
よって、\(b_1=0\)、\(c_1=1\) であり成立する。

(ii)\(n=k\) (\(k=1,2,\cdots\)) のとき
\(a_k=b_ke+c_k\) となる整数\(b_k,c_k\)があると仮定する。

このとき (1)の漸化式
\(a_{n+1}=e-(n+1)a_n\)
より

\(a_{k+1}=e-(k+1)(b_ke+c_k)\)
\(=\{1-(k+1)b_k\}e-(k+1)c_k\)
となり、\(b_{k+1}=1-(k+1)b_k\)、\(c_{k+1}=-(k+1)c_k\) は整数なので、\(n=k+1\) のときも成立する。

以上(i)(ii)より証明された。

(3)

目的の極限の式に近づけるために、\(a_n=b_ne+c_n\) の両辺をとりあえず\(c_n\)で割ってみると
\(\displaystyle\frac{a_n}{c_n}=\displaystyle\frac{b_n}{c_n}e+1\)
となるので、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\displaystyle\frac{b_n}{c_n}=-\displaystyle\frac{1}{e}\) のとき \(\displaystyle\frac{a_n}{c_n} \to 0\) になります。これを示せばよいことになります。
\(c_n\) については(2)で求めた \(c_{n}=-nc_{n-1}\) (1つ下げた)と \(c_1=1\) より、\(c_n=(-1)^{n-1}n!\)。よって \(c_n≠0\) なので割ることが可能で、\(|c_n| \to \infty\) です。
また、\(a_n\)については漸化式を利用してもよいですし (\(a_n=\displaystyle\frac{e-a_{n+1}}{n+1}\) の形にして、\(a_{n+1}>0\) (元の積分から判断する) より \(a_n<\displaystyle\frac{e}{n+1}\) とする)、もともとの積分からはさみうちの原理を用いてもよいです。

(2)より
\(c_1=1\)、\(c_{n}=-nc_{n-1}\) だから
\(c_n=(-1)^{n-1}n!\)
よって、\(c_n≠0\) で、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}|c_n|=\infty\)

また
\(a_n=\displaystyle\int_{0}^{1}x^ne^xdx\) について

\(0≦x≦1\) のとき (\(n\)のほうを残すように不等式ではさむ。もちろん積分計算しやすい式になるようにはさむ)
\(x^{n}≦x^{n}e^{x}≦x^ne\)
であり、等号は常に成り立たないので
\(\displaystyle\int_{0}^{1}x^{n}dx<\displaystyle\int_{0}^{1}x^{n}e^{x}dx<e\displaystyle\int_{0}^{1}x^{n}dx\)

よって
\(\displaystyle\frac{1}{n+1}<\displaystyle\int_{0}^{1}x^{n}e^{x}dx<\displaystyle\frac{e}{n+1}\)
となるから、はさみうちの原理より
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}a_n=0\)

ゆえに(2)の等式
\(a_n=b_ne+c_n\)
の両辺を\(ec_n\)で割って整理すると
\(\displaystyle\frac{b_n}{c_n}=\displaystyle\frac{a_n}{c_n}\cdot\displaystyle\frac{1}{e}-\displaystyle\frac{1}{e}\)

\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\left|\displaystyle\frac{a_n}{c_n}\right|=0\)
となるから、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\displaystyle\frac{a_n}{c_n}=0\)

したがって
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\displaystyle\frac{b_n}{c_n}=-\displaystyle\frac{1}{e}\)

 

 

(例題2)
次の式
\(x_n=\displaystyle\int_{0}^{\frac{π}{2}}\cos^nθdθ\) (\(n=0,1,2,\cdots\))
によって定義される数列\(\{x_n\}\)について、次の問いに答えよ。

(1)漸化式 \(x_n=\displaystyle\frac{n-1}{n}x_{n-2}\) (\(n=2,3,4,\cdots\)) を示せ。
(2)\(x_n\cdot x_{n-1}\) の値を求めよ。
(3)不等式 \(x_{n}>x_{n+1}\) (\(n=0,1,2,\cdots\)) が成り立つことを示せ。
(4)\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}nx_n^2\) を求めよ。

 

(解答)
(1)

ウォリス積分です。\(\cosθ\) を1つつまみ出して、部分積分するのが基本です。
積分するのは、もちろんつまみ出した\(\cosθ\)の方です。

\(x_n=\displaystyle\int_{0}^{\frac{π}{2}}\cos^{n-1}θ\cosθdθ\)

\(=[\cos^{n-1}θ\sinθ]_{0}^{\frac{π}{2}}-\displaystyle\int_{0}^{\frac{π}{2}}(n-1)\cos^{n-2}θ(-\sinθ)\sinθdθ\)

\(=(n-1)\displaystyle\int_{0}^{\frac{π}{2}}\cos^{n-2}θ(1-\cos^2θ)dθ\)

\(=(n-1)\left(\displaystyle\int_{0}^{\frac{π}{2}}\cos^{n-2}θ-\displaystyle\int_{0}^{\frac{π}{2}}\cos^{n}θ\right)\)

よって
\(x_n=(n-1)x_{n-2}-(n-1)x_n\) より
\(nx_n=(n-1)x_{n-2}\)

したがって
\(x_n=\displaystyle\frac{n-1}{n}x_{n-2}\)

(2)

(1)の漸化式から一般項を求めて、偶奇で場合分けして直接計算・・・とやってもよいですが、(1)のとびとびの漸化式に間を埋めるように\(x_{n-1}\)を掛けると楽です。

\(x_n=\displaystyle\frac{n-1}{n}x_{n-2}\)
の両辺に\(x_{n-1}\)を掛けて、分母\(n\)を払うと

\(nx_n\cdot x_{n-1}=(n-1)x_{n-1}x_{n-2}\) (両辺がちょうど1つずれた形)

よって
\(nx_n\cdot x_{n-1}=(n-1)x_{n-1}x_{n-2}=(n-2)x_{n-2}x_{n-3}\)
\(=\cdots=1\cdot x_1x_0\)

(あとは、\(x_0,x_1\)を求めるだけです)

ここで
\(x_0=\displaystyle\int_{0}^{\frac{π}{2}}dθ=\displaystyle\frac{π}{2}\)

\(x_1=\displaystyle\int_{0}^{\frac{π}{2}}\cosθdθ=[\sinθ]_{0}^{\frac{π}{2}}=1\)
だから

\(nx_nx_{n-1}=\displaystyle\frac{π}{2}\)

したがって
\(x_n\cdot x_{n-1}=\displaystyle\frac{π}{2n}\)

(3)

これも一般項から偶奇で場合分けして・・・とやってもできるかもしれませんが、元の積分に着目して積分区間より、\(0≦\cosθ≦1\) となるので、\(\cos^{n}θ≧\cos^{n+1}θ\) より積分の不等式を導いた方が楽です。
なお、証明したい不等式は\(\{x_n\}\)が単調減少数列であるという意味を表しています。

\(0≦θ≦\displaystyle\frac{π}{2}\) のとき、\(0≦\cosθ≦1\) だから
\(\cos^{n}θ≧\cos^{n+1}θ\)

等号は常には成り立たないので
\(\displaystyle\int_{0}^{\frac{π}{2}}\cos^{n}θdθ>\displaystyle\int_{0}^{\frac{π}{2}}\cos^{n+1}θdθ\)

よって
\(x_n>x_{n+1}\)

(4)

(2)(3)の誘導を利用します。まず(3)より、\(x_n\)が中辺にくるようにはさみこむと
\(x_{n-1}>x_n>x_{n+1}\)
これに目標の極限の式に近づけるために、\(x_n\) を掛けると
\(x_nx_{n-1}>x_n^2>x_{n+1}x_n\)
すると両側は(2)より具体的な式で表すことができ、はさみうちの原理が利用できます。

(3)より
\(x_{n-1}>x_n>x_{n+1}\)
辺々に\(nx_n\)を掛けて
\(nx_nx_{n-1}>nx_n^2>nx_{n+1}x_n\)

(2)より
\(x_nx_{n-1}=\displaystyle\frac{π}{2n}\) だから

\(n\cdot\displaystyle\frac{π}{2n}>nx_n^2>n\cdot\displaystyle\frac{π}{2(n+1)}\)

\(\displaystyle\frac{π}{2}>nx_n^2>\displaystyle\frac{π}{2(1+\displaystyle\frac{1}{n})}\)

したがってはさみうちの原理より
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}nx_n^2=\displaystyle\frac{π}{2}\)

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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