定積分と不等式②(三角形・台形近似)

三角形や台形の面積により定積分を評価する例題です。

 

(例題1)
(1)\(0≦x≦\displaystyle\frac{π}{2}\) のとき、次の不等式を証明せよ。
\(\displaystyle\frac{2}{π}x≦\sin x\)

(2)次の不等式を証明せよ。
\(\displaystyle\frac{π}{2}(e-1)<\displaystyle\int_{0}^{\frac{π}{2}}e^{\sin x}dx<e^{\frac{π}{2}}-1\)

 

(解答)
(1)

差をとって微分します。2回微分してもよいですが、今回は1回微分で済ませます。(\(f'(x)=0\) の解は具体的には求まらない)

\(f(x)=\sin x-\displaystyle\frac{2}{π}x\) (\(0≦x≦\displaystyle\frac{π}{2}\))
とおく。

\(f'(x)=\cos x-\displaystyle\frac{2}{π}\)

ここで、\(0<\displaystyle\frac{2}{π}<1\) より
\(\cos x=\displaystyle\frac{2}{π}\) を満たす\(x\)が範囲の中にただ1つ存在し、それを\(c\) (\(0<c<\displaystyle\frac{π}{2}\)) とおくと、増減表は次の通り。

定積分不等式② 例題1-1

よって \(f(x)≧0\) となるから
\(\displaystyle\frac{2}{π}x≦\sin x\) (\(0≦x≦\displaystyle\frac{π}{2}\) )

※グラフで考えると

定積分不等式② 例題1-2

\(y=\sin x\) が \(0<x≦\displaystyle\frac{π}{2}\) で上に凸の関数なので、\(y=\displaystyle\frac{2}{π}x\) は下側にあります。この位置関係からも不等式が成り立つことが分かります。

 

(2)

\(\displaystyle\int_{0}^{\frac{π}{2}}e^{\sin x}dx\) は計算できないので、計算しやすい定積分を使って不等式ではさみこみます。もちろん(1)の不等式は使いますが、もう片側については \(y=\sin x\) の接線を利用します。\(y=\sin x\) が \(0<x≦\displaystyle\frac{π}{2}\) で上に凸の関数なので、接線は上側にあります(解答では(1)と同様に微分して示します)。
なお、この例題では直接使いませんが、定積分を三角形の面積ではさみこむという方法は非常によく使います。
定積分不等式② 例題1-3

\(y=\sin x\) を微分すると \(y’=\cos x\) だから
原点における \(y=\sin x\) の接線は \(y=x\)

そこでまず
\(\sin x≦x\) (\(0≦x≦\displaystyle\frac{π}{2}\))
を示す。

\(g(x)=x-\sin x\) (\(0≦x≦\displaystyle\frac{π}{2}\))
とおくと
\(g'(x)=1-\cos x≧0\)

よって、\(g(x)\)は単調増加関数で、\(g(0)=0\) より
\(g(x)≧0\)
ゆえに \(\sin x≦x\) が成り立つ。

(1)の結果も合わせると
\(\displaystyle\frac{2}{π}x≦\sin x≦x\)・・・①

ゆえに
\(e^{\frac{2}{π}x}≦e^{\sin x}≦e^{x}\)・・・②

①の等号は \(0≦x≦\displaystyle\frac{π}{2}\) の範囲では常には成り立たないので②も同様に成り立たない。したがって②より

\(\displaystyle\int_{0}^{\frac{π}{2}}e^{\frac{2}{π}x}dx<\displaystyle\int_{0}^{\frac{π}{2}}e^{\sin x}dx<\displaystyle\int_{0}^{\frac{π}{2}}e^{x}dx\)

\(\left[\displaystyle\frac{π}{2}e^{\frac{2}{π}x}\right]_{0}^{\frac{π}{2}}<\displaystyle\int_{0}^{\frac{π}{2}}e^{\sin x}dx<[e^{x}]_{0}^{\frac{π}{2}}\)

\(\displaystyle\frac{π}{2}(e-1)<\displaystyle\int_{0}^{\frac{π}{2}}e^{\sin x}dx<e^{\frac{π}{2}}-1\)

 

 

(例題2)
\(f(x)=\displaystyle\frac{1}{1+x^2}\) とし、曲線 \(y=f(x)\) (\(x>0\)) の変曲点を \((a,f(a))\) とする。

(1)\(a\)の値を求めよ。
(2)\(I=\displaystyle\int_{a}^{1}f(x)dx\) の値と、4点 \((a,f(a))\)、\((a,0)\)、\((1,0)\)、\((1,f(1))\) を頂点とする台形の面積\(S\)を求めよ。
(3)円周率\(π\)は\(3.17\)より小さいことを証明せよ。ただし必要ならば \(\sqrt{3}>1.732\) を用いてよい。

 

(解答)

\(f”(x)=0\) となる\(x\)を求めます。ただしその前後で符号が変わることの確認は忘れずに。

(1)
\(f(x)=\displaystyle\frac{1}{1+x^2}\) (\(x>0\)) より

\(f'(x)=\displaystyle\frac{-2x}{(1+x^2)^2}\)

\(f”(x)=\displaystyle\frac{-2(1+x^2)^2+2x\cdot2(1+x^2)\cdot2x}{(1+x^2)^4}\)

\(=\displaystyle\frac{2(3x^2-1)}{(1+x^2)^3}\)

よって \(x=\displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}}\) 前後で\(f”(x)\)の符号が変わるので
変曲点は \((\displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}},\displaystyle\frac{3}{4})\)

したがって \(a=\displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}}\)

(2)
(定積分は \(x=\tanθ\) の置換をする基本パターンです)

\(x=\tanθ\) と置換すると

\(I=\displaystyle\int_{\frac{1}{\sqrt{3}}}^{1}\displaystyle\frac{1}{x^2+1}dx\)

\(=\displaystyle\int_{\frac{π}{6}}^{\frac{π}{4}}\displaystyle\frac{1}{\tan^2θ+1}\cdot\displaystyle\frac{1}{\cos^2θ}dθ\)

\(=\displaystyle\int_{\frac{π}{6}}^{\frac{π}{4}}dθ\)

\(=\displaystyle\frac{π}{4}-\displaystyle\frac{π}{6}\)

\(=\displaystyle\frac{π}{12}\)

定積分不等式② 例題2-1

また、台形の面積\(S\)については、4点が \((\displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}},\displaystyle\frac{3}{4})\)、\((\displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}},0)\)、\((1,0)\)、\((1,\displaystyle\frac{1}{2})\) となるので

\(S=\displaystyle\frac{1}{2}(\displaystyle\frac{1}{2}+\displaystyle\frac{3}{4})(1-\displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}})\)

\(=\displaystyle\frac{5(3-\sqrt{3})}{24}\)

 

(3)

台形の面積と定積分(面積)の大小を考えることで、\(π\)に関する不等式を作ることができます。どちらが大きいかはグラフの凸性で判断します。\(x>\displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}}\) では \(f(x)\) は下に凸なので、台形の辺\(AB\)はグラフの上側にあります。したがって台形の面積の方が大きいです。(上に凸だと大小は逆になる)

定積分不等式② 例題2-2

\(x>a\) において \(y=f(x)\) のグラフは下に凸なので、台形の辺\(AB\)はグラフの上側にある。
よって台形の面積のほうが大きいから、\(S>I\)

(1)(2)より
\(\displaystyle\frac{5(3-\sqrt{3})}{24}>\displaystyle\frac{π}{12}\) となるから

\(π<\displaystyle\frac{5(3-\sqrt{3})}{2}<\displaystyle\frac{5(3-1.732)}{2}=3.17\) (\(-\sqrt{3}<-1.732\) より)

したがって
\(π<3.17\)

 

 

以上になります。お疲れ様でした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
next→積分型の平均値の定理 back→定積分と不等式①

タイトルとURLをコピーしました