微分積分を一般的に応用した問題です。
・変化率(水の量などの変化)
速度や加速度は、微積分を実生活に応用した例の1つです。例えば速度は\(t\)の関数で表された位置\(x(t)\)を\(t\)で微分すると求めることができますが、これは簡単に言ってしまうと極めて小さい時間\(t\)に対する位置\(x\)の変化量\(\displaystyle\frac{Δx}{Δt}\)、つまり瞬間的な\(x\)の変化率ということです。
よって同様の議論をすることで幅広い分野に利用でき、物体の運動に限らず数値で扱えるもの、例えば気温の変化や株価の変化など様々なことに応用できることになります。
高校数学では、容器に入っている水の量の変化に関する問題がよく扱われるので、これについて整理してみます。
(水の変化に関する問題)
まず登場する変数について。
(1)時刻\(t\)
すべての変数の中核。時刻\(t\)における体積\(V(t)\)のように\(t\)を用いて他の量を表したり、微積分の変数になる。また、\(t_2-t_1\) や \(\displaystyle\frac{dt}{dV},\displaystyle\frac{dt}{dh}\) のように時刻自身の変化量に着目することもある。
(2)水の体積\(V\)
容器に入っている水の体積\(V\)。\(\displaystyle\frac{dV}{dt}\) は水の(瞬間的な)変化率であり、\(\displaystyle\frac{dV}{dt}>0\) のときは容器内の水の量は増え(蛇口をひねるイメージ)、\(\displaystyle\frac{dV}{dt}<0\) のときは容器内の水の量は減り(お風呂の水を抜いているイメージ)、\(\displaystyle\frac{dV}{dt}=0\) のときは水の量が変わらないことになる。特に一定の割合で水の量が変化するときには、\(\displaystyle\frac{dV}{dt}\)は定数になる。
(3)水面の高さ\(h\)
時刻の経過により水面は上下する。容器内の水の体積\(V\)が増えれば\(h\)は増え、反対に\(V\)が減ると\(h\)は減る。
(4)水面の面積\(S\)
容器の断面積と同じになる。時刻の経過により水面が上下することで水面の面積も変化する。
容器の断面が円や正方形などのように特徴的な形をしている場合には、その半径や一辺の長さ\(r(t)\)を扱うこともある。
問題の解法手段
(i)容器の体積や水の体積を求める際には積分を利用。
(ii)積分区間が変数になっている定積分では、定積分の微分を利用。
(iii)合成関数の微分を利用。
(iv)逆関数の微分を利用。
(v)微分方程式を解く。(直接積分や置換積分を利用)
(例題)
曲線 \(y=e^{x}-1\) (\(x≧0\)) を\(y\)軸のまわりに1回転してできる容器がある。空の状態からこの容器に毎秒\(a\)の割合で水を注ぐ。水面の高さが\(b\)に達したときの
(1)水面の上昇する速さ (2)水面の面積が増加する速さ
を\(a,b\)を用いて表せ。(ただし \(a>0\)、\(b>0\) とする)
まずは問題文の条件から\(V\)に関する式を整理します。
(解答)
(1)
時刻\(t\)における水面の高さを\(h(t)\)、容器内にある水の体積を\(V(t)\)とおく。
毎秒\(a\)の割合で水を注ぐので
\(\displaystyle\frac{dV}{dt}=a\)・・・①
\(y=e^{x}-1\) より
\(x=\log(y+1)\)
よって、高さ\(h\)まで水を注いだときの体積\(V\)は
\(V=\displaystyle\int_{0}^{h}π\{\log(y+1)\}^2dy\)・・・②
②の両辺を\(t\)で微分すると、合成関数の微分より
\(\displaystyle\frac{dV}{dt}=π\{\log(h+1)\}^2\cdot\displaystyle\frac{dh}{dt}\)
これと①より
\(π\{\log(h+1)\}^2\cdot\displaystyle\frac{dh}{dt}=a\)
ゆえに\(h>0\) のとき
\(\displaystyle\frac{dh}{dt}=\displaystyle\frac{a}{π\{\log(h+1)\}^2}\)・・・③
したがって高さ\(b\)における水面の上昇する速さは、③に\(h=b\) を代入して
\(\left|\displaystyle\frac{dh}{dt}\right|=\displaystyle\frac{a}{π\{\log(b+1)\}^2}\ (>0)\)
(2)
以下 \(h>0\) とする。
時刻\(t\)における水面の面積を\(S(t)\)とおくと、そのとき水面の高さは\(h\)だから
\(S=π\{\log(h+1)\}^2\)
\(t\)で微分して (右辺はまず\(h\)で微分して、\(\displaystyle\frac{dh}{dt}\) を掛ける)
\(\displaystyle\frac{dS}{dt}=π\cdot2\{\log(h+1)\}\cdot\displaystyle\frac{1}{h+1}\cdot\displaystyle\frac{dh}{dt}\)
(1)の③より
\(\displaystyle\frac{dS}{dt}=\displaystyle\frac{2π\log(h+1)}{h+1}\cdot\displaystyle\frac{a}{π\{\log(h+1)\}^2}\)
よって
\(\displaystyle\frac{dS}{dt}=\displaystyle\frac{2a}{(h+1)\log(h+1)}\)
したがって高さ\(b\)における水面の面積が増加する速さは
\(\left|\displaystyle\frac{dS}{dt}\right|=\displaystyle\frac{2a}{(b+1)\log(b+1)}\ (>0)\)
(参考)
\(at=\displaystyle\int_{0}^{h}π\{\log(y+1)\}^2dy \ (=V)\)
より右辺の定積分を計算すれば\(t\)と\(h\)の関係式が手に入りますが(微分方程式③を解いてもよい。ほぼ同じことになる)、この例題に関してはあまり有用ではないです。(時刻\(t\)を求めたいときなどには使える)
以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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