変化率と積分③(放射能の強さの変化)

放射能の強さの変化を微分方程式により求める例題です。

 

(例題)
ある放射性物質の \(t=0\) における放射能の強さを\(N_0\ (>0)\)、時刻\(t\)における強さを\(N(t)\)で表す。放射能の強さは、各瞬間の放射能の強さに比例する速度で減少していく。\(N(t)\)は\(t\)で微分可能であるとして以下の問いに答えよ。

(1)比例定数を\(k\) (\(k<0\)) とするとき、\(N(t)\)を\(t\)で表せ。
(2)放射能の強さが\(5\)年後に最初の強さ\(N_0\)の\(\displaystyle\frac{1}{10}\)になったとする。強さが\(\displaystyle\frac{1}{2}N_0\)になるのは何年後になるか。 \(\log_{10}2=0.30\) として計算せよ。

 

 

放射性物質の性質について少しだけ。
放射性物質は放射線を放射し、放射線を放射しない安定な物質へと変化するという性質があります。この性質により放射能(放射線を出す能力)の強さは徐々に弱くなっていきますが、その変化の具合が問題文の「各瞬間の放射能の強さに比例する速度で減少」で表さています。この表現内容は少しややこしいので次で説明します。

(解答)
(1)

「放射能の強さは、各瞬間の放射能の強さに比例する速度で減少」を式で表すと
\(\displaystyle\frac{dN}{dt}=kN\) (\(k\)は負の定数)
となります。
ざっくりとこの式の意味を捉えてみます。具体的に \(k=-3\) として、初期値を \(N_0=40\) と設定すると、\(t=0\) での瞬間的な放射能の変化速度は
\(\displaystyle\frac{dN}{dt}=-3\cdot40=-120\)
となります。\(t\)の単位を年として仮に\(\displaystyle\frac{1}{4}\)年の間この速度で一定に減少することにすると、\(\displaystyle\frac{1}{4}\)年後には、\(40-\displaystyle\frac{120}{4}=10\) まで放射能の強さは減少します。同様にさらに\(\displaystyle\frac{1}{4}\)年後について考えると
\(\displaystyle\frac{dN}{dt}=-3\cdot10=-30\)、\(10-\displaystyle\frac{30}{4}=2.5\) となり、放射能の強さは \(N=40\to10\to2.5\) と変化し、その変化率は徐々に緩やかになることが分かります。
放射線強さ 例題1
実際にはこれらのことが各瞬間で成り立っているので、正確な放射能の強さを求めるには、微分方程式を解けばよいことになります。(徐々に傾きが緩やかになる曲線の方程式が得られるはず)

問題文の条件より
\(\displaystyle\frac{dN}{dt}=kN\)・・・①
が成り立つ。
(i)\(N≠0\) のとき①より
\(\displaystyle\frac{1}{N}\cdot\displaystyle\frac{dN}{dt}=k\)
両辺\(t\)で積分すると
\(\displaystyle\int\displaystyle\frac{1}{N}\cdot\displaystyle\frac{dN}{dt}dt=\displaystyle\int kdt\)
左辺は置換積分により
\(\displaystyle\int\displaystyle\frac{1}{N}dN=\displaystyle\int kdt\)
\(C\)を定数として
\(\log|N|=kt+C\)
よって
\(N=±e^{kt+C}\)
\(N=±e^{C}e^{kt}\)
初期条件は \(t=0\) のとき \(N=N_0\) だから
\(±e^{C}=N_0\)
したがって
\(N=N_0e^{kt}\)

(ii)\(N=0\) のとき
(i)の結果と\(N(t)\)が連続関数であることから・・・(注)
\(N=0\) (定数関数)
となり、これは
\(\displaystyle\frac{dN}{dt}=kN\)・・・①
を満たすが、\(t=0\) のとき \(N=N_0>0\) と矛盾するので不適。

\(N=N_0e^{kt}\)

(注)について
(ii)では部分的に\(N=0\)となるときも含めています。
\(N≠0\) (常に\(0\)でない) としたときの解は \(N=N_0e^{kt}>0\) となるので、もし\(N=0\)になる時刻\(t\)が存在すると、\(N(t)\)が連続関数であることから\(N=0\) (常に\(0\)) の場合しかありません。(\(N≠0\)をとるとするとジャンプしてしまう)。微分方程式①の一般的な解としては \(N=0\) (定数関数) もありえますが、この例題だと初期条件から排除されます。

 

(2)
\(N=N_0e^{kt}\)・・・②
\(t\)の単位を年とすると、条件より
\(\displaystyle\frac{1}{10}N_0=N_0e^{5k}\)
よって
\(e^{5k}=\displaystyle\frac{1}{10}\)・・・③

②に\(N=\displaystyle\frac{1}{2}N_0\)を代入して
\(\displaystyle\frac{1}{2}N_0=N_0e^{kt}\)
\(e^{kt}=\displaystyle\frac{1}{2}\)・・・④
④を満たす\(t\)が求めるものである。

(\(k\)を消去する方針をとると)
③より \(e^{k}=(\displaystyle\frac{1}{10})^{\frac{1}{5}}\)
これを④に代入して
\((\displaystyle\frac{1}{10})^{\frac{1}{5}t}=\displaystyle\frac{1}{2}\)
底を\(10\)とする対数をとると
\(-\displaystyle\frac{1}{5}t=-\log_{10}2\)
したがって
\(t=5\log_{10}2=5×0.30=1.50\)

\(1.5\)年後

 

※比例定数\(k\)を具体的に求めると
\(e^{5k}=\displaystyle\frac{1}{10}\)・・・③
より
\(5k=-\log_{e}10\)
\(k=-\displaystyle\frac{1}{5}\log_{e}10<0\)
です。

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
back→変化率と積分②(水の量の変化)

タイトルとURLをコピーしました