異なる2数の積の和を求める例題です。
(例題1)
\(n\)は2以上の整数とする。
(1)数列\(1,2,3,\cdots,n\) において、隣接する2数の積の総和を求めよ。
(2)数列\(1,2,3,\cdots,n\) において、互いに相異なり、かつ隣接しない2数の積の総和を求めよ。
(解答)
(1)
\(1\cdot2+2\cdot3+3\cdot4+4\cdot5+\cdots+(n-1)n\)
です。シグマを利用して求めていきます。
\(\displaystyle\sum_{k=1}^{n-1}k(k+1)\) か \(\displaystyle\sum_{k=2}^{n}(k-1)k\) になります。(初項と末項が正しいか確認すると式が立てやすいです)
求める和を\(S_1\)とすると
\(S_1=\displaystyle\sum_{k=1}^{n-1}k(k+1)\)
\(=\displaystyle\sum_{k=1}^{n-1}(k^2+k)\)
\(=\displaystyle\frac{1}{6}(n-1)n(2n-1)+\displaystyle\frac{1}{2}(n-1)n\)
\(=\displaystyle\frac{1}{6}n(n-1)\{(2n-1)+3\}\)
\(=\displaystyle\frac{1}{3}n(n-1)(n+1)\)
(2)
\(S_2=\)(相異なる2数の積の和\(S\))-(隣接する2数の積の和\(S_1\))
となります。よって\(S\)を求めればよいですが、ここでは
(i)シグマを利用する方法
(ii)2乗の展開を利用する方法
の2つを紹介します。
(i)シグマを利用する方法
\(1\cdot2,1\cdot3,1\cdot4,\cdots,1\cdot n\)
が異なる2数の組み合わせです。片方の数が\(2\)で今挙げたものと重複しない組み合わせ、つまりもう一方の数が\(3\)以上のものは
\(2\cdot3,2\cdot4,2\cdot5,\cdots,2\cdot n\)
です。これを一般化して片方が\(k\)、もう一方が\(k+1\)以上の積の和を求めて、シグマ計算すると相異なる積の和\(S\)が求まります。
相異なる2数の積の和を\(S\)とする。
一方の数が\(k\),もう一方の数が\(k+1\)以上の積の和は (\(1≦k≦n-1\))
\(k(k+1)+k(k+2)+k(k+3)+\cdots+k\cdot n\)
\(=k\{(k+1)+(k+2)+(k+3)+\cdots+n\}\) (項数は \(n-(k+1)+1=n-k\) 項)
\(=k\cdot\displaystyle\frac{1}{2}(n-k)(k+1+n)\)
\(=-\displaystyle\frac{1}{2}k^3-\displaystyle\frac{1}{2}k^2+\displaystyle\frac{1}{2}n(n+1)k\)
よって
\(S=\displaystyle\sum_{k=1}^{n-1}\{-\displaystyle\frac{1}{2}k^3-\displaystyle\frac{1}{2}k^2+\displaystyle\frac{1}{2}n(n+1)k\}\)
\(=-\displaystyle\frac{1}{2}\{\displaystyle\frac{1}{2}(n-1)n\}^2-\displaystyle\frac{1}{2}\cdot\displaystyle\frac{1}{6}(n-1)n(2n-1)+\displaystyle\frac{1}{2}n(n+1)\cdot\displaystyle\frac{1}{2}(n-1)n\)
\(=\displaystyle\frac{1}{24}n(n-1)\{-3(n-1)n-2(2n-1)+6n(n+1)\}\)
\(=\displaystyle\frac{1}{24}n(n-1)(n+1)(3n+2)\)
したがって求める和\(S_2\)は
\(S_2=S-S_1\)
\(=\displaystyle\frac{1}{24}n(n-1)(n+1)(3n+2)-\displaystyle\frac{1}{3}n(n-1)(n+1)\)
\(=\displaystyle\frac{1}{24}n(n-1)(n+1)\{(3n+2)-8\}\)
\(=\displaystyle\frac{1}{8}n(n-1)(n+1)(n-2)\)
(ii)2乗の展開を利用する方法
を展開すると、(2乗の和)+(異なる2数の積の和)×2 という形になることを利用します。
\((1+2+3+\cdots+n)(1+2+3+\cdots+n)\)
を分配法則により計算すると、左と右から1つずつ取り出すので、同じ数の組み合わせは \((左,右)=(1,1),(2,2),\cdots,(n,n)\) と1通りずつでてきますが、違う数の組み合わせは \((左,右)=(1,2),(2,1),(1,3),(3,1),\cdots\) と2通りずつ出てきます。
相異なる2数の積の和を\(S\)とすると
\((1+2+3+\cdots+n)^2=(1^2+2^2+3^2+\cdots+n^2)+2S\)
よって
\(2S=\left\{\displaystyle\sum_{k=1}^{n}k\right\}^2-(\displaystyle\sum_{k=1}^{n}k^2)\)
\(=\{\displaystyle\frac{1}{2}n(n+1)\}^2-\displaystyle\frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)\)
\(=\displaystyle\frac{1}{12}n(n+1)\{3n(n+1)-2(2n+1)\}\)
\(=\displaystyle\frac{1}{12}n(n+1)(3n^2-n-2)\)
ゆえに
\(S=\displaystyle\frac{1}{24}n(n+1)(3n+2)(n-1)\)
あとは(i)と同様に、この\(S\)から(1)の\(S_1\)を引くだけ。
(例題2)
\(n\)を\(1\)より大きい整数とする。\(1\)から\(n\)までの整数\(1,2,3,\cdots,n\)の中から異なる2つの整数をとり出す仕方の各々に対して、とり出されたそれら2つの整数の和を\(s\)とする。とり出し方すべてを考えたときの\(s\)の総和\(S\)を\(n\)の式で表せ。
(解答1)まず同じ数どうしや重複を無視した全体の和を求める方法
\((1,1),(1,2),(1,3),\cdots,(1,n)\)
\((2,1),(2,2),(2,3),\cdots,(2,n)\)
・・・
\((n,1),(n,2),(n,3),\cdots,(n,n)\)
上の\((x,y)\)すべてについて \(x+y\) を計算して、その総和を\(T\)とすると
\(T=2n(1+2+3+\cdots+n)\)\(=n^2(n+1)\)・・・①
①では同じ数の場合を含み、\((1,2),(2,1)\)などの入れ替えたものを重複しているので、求める和\(S\)は
\(S=\displaystyle\frac{1}{2}[T-\{(1+1)+(2+2)+(3+3)+\cdots+(n+n)\}]\)
\(=\displaystyle\frac{1}{2}T-(1+2+3+\cdots+n)\)
\(=\displaystyle\frac{1}{2}n^2(n+1)-\displaystyle\frac{1}{2}n(n+1)\)
\(=\displaystyle\frac{1}{2}n(n+1)(n-1)\)
(解答2)シグマ計算する方法
一方の数が\(k\)、もう一方の数が\(k+1\)以上であるときの和については (\(1≦k≦n-1\))
\(\{k+(k+1)\}+\{k+(k+2)\}+\cdots+\{k+n\}\)
(項数は \(n-(k+1)+1=n-k\))
\(=k(n-k)+\{(k+1)+(k+2)+\cdots+n\}\)
\(=k(n-k)+\displaystyle\frac{1}{2}(n-k)(k+1+n)\)
\(=-\displaystyle\frac{3}{2}k^2+(n-\displaystyle\frac{1}{2})k+\displaystyle\frac{1}{2}n(n+1)\)
よって
\(S=\displaystyle\sum_{k=1}^{n-1}\{-\displaystyle\frac{3}{2}k^2+\displaystyle\frac{1}{2}(2n-1)k+\displaystyle\frac{1}{2}n(n+1)\}\)
\(=-\displaystyle\frac{3}{2}\cdot\displaystyle\frac{1}{6}(n-1)n(2n-1)+\displaystyle\frac{1}{2}(2n-1)\cdot\displaystyle\frac{1}{2}(n-1)n+\displaystyle\frac{1}{2}n(n+1)\cdot(n-1)\)
(前2つは打ち消されて)
\(=\displaystyle\frac{1}{2}n(n+1)(n-1)\)