命題の証明と帰納法

数学的帰納法を利用する証明問題について見ていきます。

 

(例題1)
整数 \(a_n=19^n+(-1)^{n-1}2^{4n-3}\)  (\(n=1,2,3,\cdots\)) のすべてを割り切る素数を求めよ。

 

素数は \(2,3,5,7,11,\cdots\) と無数にあるのでまず検討をつけます。
すべての\(a_n\)を割り切るので、一部分についてももちろん割り切る数となるので、\(n=1,2,3\) あたりを代入して候補を探します。

(解答)
\(a_1=19+2=21=7×3\)
\(a_2=19^2-2^5=329=7×47\)
より、すべての\(a_n\)を割り切る素数があるとすれば\(7\)である。

\(a_1,a_2\)しか確認できてないので、あとは他の\(n\)(すべての\(n\))で成り立つことを示していきます。合同式の利用など色々方法はあると思いますが、今回は帰納法で証明します。

以下題意の素数が\(7\)であることを数学的帰納法で示す。

[1]\(n=1\)のとき
\(a_1=21=7×3\)
よって\(7\)で割り切れる。

[2]\(n=k\)のとき (\(k=1,2,3,\cdots\))
\(a_k\)が\(7\)で割り切れると仮定すると

\(19^k+(-1)^{k-1}2^{4k-3}=7L\)・・・① (\(L\)は整数)

とおける。

①を利用して、\(a_{k+1}\)が\(7\)で割り切れることを示していきます。

このとき
\(a_{k+1}\)
\(=19^{k+1}+(-1)^{k}2^{4(k+1)-3}\)
\(=19\cdot19^{k}+(-1)^{k}2^{4k+1}\)

(①より \(19^k=7L-(-1)^{k-1}2^{4k-3}\) だから )

\(=19(7L-(-1)^{k-1}2^{4k-3})+(-1)^{k}2^{4k+1}\)

\(=19\cdot7L+19(-1)^{k}2^{4k-3}+(-1)^{k}\cdot16\cdot2^{4k-3}\)

\(=19\cdot7L+(19+16)(-1)^{k}2^{4k-3}\)

\(=19\cdot7L+35(-1)^{k}2^{4k-3}\)

\(=7\{19L+5(-1)^{k}2^{4k-3}\}\)

よって\(a_{k+1}\)も\(7\)で割り切れる。

[1][2]よりすべての\(a_n\)は\(7\)で割り切れるから、求める素数は\(7\)

 

 

 

(例題2)
(1)\(n\)を自然数とするとき、ある自然数\(a\)と\(b\)を用いて、
\((2+\sqrt{3})^n=a+b\sqrt{3}\)
\((2-\sqrt{3})^n=a-b\sqrt{3}\)
とかけることを、数学的帰納法を使って示せ。

(2) (1)の\(a\)と\(b\)について、\(a^2-3b^2=1\) が成り立つことを示せ。

(3)\(n\)を自然数とするとき、ある自然数\(m\)を用いて、
\((2+\sqrt{3})^n=\sqrt{m}+\sqrt{m-1}\)
\((2-\sqrt{3})^n=\sqrt{m}-\sqrt{m-1}\)
とかけることを示せ。

 

 

(解答)
(1)

2項定理を使うと、\(\sqrt{3},-\sqrt{3}\)が奇数乗の場合はルートが残り、偶数乗のときはルートが消えるということですが、指示通り帰納法で示します。

[1]\(n=1\) のとき
\((2+\sqrt{3})^1=2+1\cdot\sqrt{3}\)
\((2-\sqrt{3})^1=2-1\cdot\sqrt{3}\)
とかける。(\(a=2,b=1\))

[2]\(n=k\) のとき
\((2+\sqrt{3})^k=a+b\sqrt{3}\)
\((2-\sqrt{3})^k=a-b\sqrt{3}\)
とかけると仮定する。(\(a,b\)は自然数)

このとき
\((2+\sqrt{3})^{k+1}=(2+\sqrt{3})^{k}(2+\sqrt{3})\)
\(=(a+b\sqrt{3})(2+\sqrt{3})\)
\(=(2a+3b)+(a+2b)\sqrt{3}\)

\((2-\sqrt{3})^{k+1}=(2-\sqrt{3})^{k}(2-\sqrt{3})\)
\(=(a-b\sqrt{3})(2-\sqrt{3})\)
\(=(2a+3b)-(a+2b)\sqrt{3}\)

よって
\(a’=2a+3b\),  \(b’=a+2b\) とおけば、\(a’,b’\)は自然数であり
\((2+\sqrt{3})^{k+1}=a’+b’\sqrt{3}\)
\((2-\sqrt{3})^{k+1}=a’-b’\sqrt{3}\)
とかける。

[1][2]によりすべての自然数\(n\)について題意は成立する。

 

(2)

(1)の2つの等式を掛けます。

\((2+\sqrt{3})^n=a+b\sqrt{3}\)
\((2-\sqrt{3})^n=a-b\sqrt{3}\)
の両辺をそれぞれ掛けて

\((2+\sqrt{3})^n(2-\sqrt{3})^n=(a+b\sqrt{3})(a-b\sqrt{3})\)
\(\{(2+\sqrt{3})(2-\sqrt{3})\}^n=a^2-3b^2\)
\(1^n=a^2-3b^2\)
したがって
\(a^2-3b^2=1\)

(3)

(1)の\(a,b\)をルートの形にすると目的の形が見えてきます。

\(a,b\)は自然数(正の数)だから、(1)より
\((2+\sqrt{3})^n=a+b\sqrt{3}=\sqrt{a^2}+\sqrt{3b^2}\)
\((2-\sqrt{3})^n=a-b\sqrt{3}=\sqrt{a^2}-\sqrt{3b^2}\)

よって(2)より \(3b^2=a^2-1\) だから
\((2+\sqrt{3})^n=\sqrt{a^2}+\sqrt{a^2-1}\)
\((2-\sqrt{3})^n=\sqrt{a^2}-\sqrt{a^2-1}\)

したがって\(m=a^2\)  (\(m=3b^2+1\)) とすれば\(m\)は自然数で
\((2+\sqrt{3})^n=\sqrt{m}+\sqrt{m-1}\)
\((2-\sqrt{3})^n=\sqrt{m}-\sqrt{m-1}\)
とかける。

 

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見ていただきありがというございました。
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