整式の加法・減法・乗法(展開)

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整式の計算は、高校数学で最初に習う分野で、定期試験などで出題されることはあっても、そのものが入試で問われることは少ないでしょう。ですが、高校数学のあらゆる分野で必要となってくるまさに土台のようなものなので、しっかり身につけましょう。計算結果が答えと合わない場合はどこで計算ミスをしたか確認して、答えと合うまで練習を積み重ねましょう。

 

整式の加法・減法・乗法では、次の法則を利用して計算します。

交換法則
\(A+B=B+A\)    \(AB=BA\)
結合法則
\((A+B)+C=A+(B+C)\)    \((AB)C=A(BC)\)
分配法則
\(A(B+C)=AB+AC\)  \((A+B)C=AC+BC\)
一番重要なのは分配法則です。整式を展開する際に何度も使用します。交換法則と結合法則は簡単に言えば、計算をする順番を入れ替えてもよいという法則です。
指数法則
\(m,n\)を正の整数とすると、
①\(a^ma^n=a^{m+n}\)  ②\((a^m)^n=a^{mn}\)  
③\((ab)^m=a^mb^m\)
指数の計算は、和なのか積なのか間違えやすいところです。\(m,n\)に具体的な数値を代入して考えてみましょう。
①\(a^3a^4=(aaa)(aaaa)=a^{3+4}=a^7\)
\((≠a^{3×4})\)
②\((a^3)^4=(aaa)(aaa)(aaa)(aaa)=a^{3×4}=a^{12}\)
\((≠a^{3+4})\)
 
 
整式の展開
整式の積を計算して整理した形にすることを、整式の展開といいます。
例) \((x+2)(x+3)\)
\(=(x+2)x+(x+2)3\)
\(=x^2+2x+3x+6\)
\(=x^2+5x+6\)
\((a+b+1)(a+2b)\)
\(=(a+b+1)a+(a+b+1)2b\)
\(=a^2+ab+a+2ab+2b^2+2b\)
\(=a^2+3ab+a+2b^2+2b\)
上記記載の分配法則等を使って計算しています。整式を整理する際には、同類項(例では\(2x\)と\(3x\)、\(ab\)と\(2ab\))をまとめることを忘れずに。
 
※一般に整式の積\(P×Q\)を展開するには、\(P\)の1つ1つの項に\(Q\)の各項をもれなく重複なく掛けて加えればよいです。
分配法則
(\(P=a+b,  Q=x+y\))
 
 
分配法則等を使って整式を整理すれば時間はかかりますが、どんな複雑な式でも計算できます。しかし当たり前ですが、複雑になればなるほど手間もかかりますし、計算ミスもずっと増えることでしょう。なので展開する際には工夫がとても重要になってきます。
 
工夫① 公式の暗記と利用
よくあるパターンの展開を公式として暗記して利用する方法です。公式をド忘れした場合でも、導けるようにしましょう。
2次の公式
①\((a+b)^2=a^2+2ab+b^2\)
②\((a-b)^2=a^2-2ab+b^2\)
③\((a+b)(a-b)=a^2-b^2\)
④\((x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab\)
⑤\((ax+b)(cx+d)=acx^2+(ad+bc)x+bd\)
⑥\((a+b+c)^2\)
\(=a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca\)
3次の公式
⑦\((a+b)^3=a^3+3a^2b+3ab^2+b^3\)
⑧\((a-b)^3=a^3\color{red}{-}3a^2b+3ab^2\color{red}{-}b^3\)
⑨\((a+b)(a^2\color{red}{-}ab+b^2)=a^3+b^3\)
⑩\((a\color{red}{-}b)(a^2+ab+b^2)=a^3-b^3\)
⑪\((a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)\)
\(=a^3+b^3+c^3-3abc\)
⑦だけ示します。他の公式も各自、示してみて下さい。
\((a+b)^3\)
\(=(a+b)^2(a+b)\)
\(=(a^2+2ab+b^2)(a+b)\)
\(=a^3+2a^2b+ab^2+a^2b+2ab^2+b^3\)
\(=a^3+3a^2b+3ab^2+b^3\)
※⑧も⑦同様の方法でも示せるが、⑦の\(b\)を\(-b\)に置き換えて考えると
\((a-b)^3\)
\(=(a+(-b))^3\)
\(=a^3+3a^2(-b)+3a(-b)^2+(-b)^3\)
\(=a^3-3a^2b+3ab^2-b^3\)
\(-b\) が何回(偶数回か奇数回)掛けられているかを考えれば符号の間違いが起きにくくなります。
 

※⑨⑩の一般的な場合(n次式)について知っておくと符号の間違いが起きにくくなります。

nが奇数のとき
\((a+b)(a^{n-1}-a^{n-2}b+a^{n-3}b^2-・・・+a^2b^{n-3}-ab^{n-2}+b^{n-1})=a^n+b^n\)
 ↑ここは+  ↑+と-が入れ替わり
nが自然数のとき
\((a-b)(a^{n-1}+a^{n-2}b+a^{n-3}b^2+・・・+a^2b^{n-3}+ab^{n-2}+b^{n-1})=a^n-b^n\)
↑ここだけ-  ↑あとは全部+
(注)スマホ閲覧の場合はスクロールして下さい。
 
工夫② 置き換えと順序の工夫
こちらは具体例を挙げて説明します。
例) \((x+1)(x+2)(x+3)(x+4)\)
\((x+1)(x+2)\) と\((x+3)(x+4)\)から計算し始めるより、\((x+1)(x+4)\)と\((x+2)(x+3)\)から計算し始めるほうが良さそうです。何故ならそれぞれ \(x^2+5x\) という同じ形が表れてこれを\(X\)と置き換えれば計算が楽になるからです。
(解答)
与式
\(=(x+1)(x+4)(x+2)(x+3)\)
\(=(x^2+5x+4)(x^2+5x+6)\)
\(X=x^2+5x\)とおくと
与式
\(=(X+4)(X+6)=X^2+10X+24\)
\(=(x^2+5x)^2+10(x^2+5x)+24=・・・\)
\(=x^4+10x^3+35x^2+50x+24\)
 
工夫③ あえて因数分解してみる
因数分解は展開の逆の操作なので遠回りのような気もしますが、かえって計算が楽になることがあります。
例)
\((x^2-1)(x^2-x+1)(x^2+x+1)\)
\(=(x+1)(x-1)(x^2-x+1)(x^2+x+1)\)
\(=(x+1)(x^2-x+1)(x-1)(x^2+x+1)\)
\(=(x^3+1)(x^3-1)=x^6-1\)
 
 
最後に用語をまとめておきましょう。
特に大事なのは整式整式の次数の意味です。意味は説明できなくてもよいですが、具体的にどんなものなのか分からないと問題が解けない場合もありますので押さえておきましょう。
単項式:文字と数およびそれらの積で表される式 (\(3,2x,xyz^2\)など)
次数:単項式で掛け合わされている文字の個数
係数:文字以外(数字)の部分
多項式:単項式の和
項:多項式の各々の単項式
整式:単項式と多項式をあわせたもの
同類項:文字の部分が一致している項
整式の整理:同類項をまとめて整式を単純化すること
整式の次数:整理された整式で、各項のうち次数が最大のもの
定数項:文字を含まない項(数字のみの項)
降べき(昇べき)の順に整理:次数の高い順(低い順)から並べて整式を整理すること
\(x\)の整式といったら\(x\)の指数が整数のみであらわされているものです。係数は整数でなくても構いません。
(整式の例)
\(x^3+x^2+1\) (次数3) \(\displaystyle \frac{1}{2}x^5+\sqrt{2}x^2-x\) (次数5)
(整式ではないもの)
\(x^3-x^2+\displaystyle \frac{1}{x}+3\) \(2x^2+2x+\sqrt{x}\)
 
降べき(昇べき)の「べき」は漢字で「冪」と書かれ、「同じものを掛け合わせる」という意味です。\(x^5\)とか\(x^2\)は同じ\(x\)を5回、2回掛け合わせていますね。降べきは\(x\)の次数が高いものから並べ、順に次数が小さくなる(降りて行っている)ので、降べきの順といいます。
 
 
以上です。お疲れ様でした。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
 
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