極限値の値から、もとの関数の係数を決定する問題について見ていきます。
(例題1)
次の等式が成り立つように、定数\(a,b\)の値を求めよ。
\(\displaystyle\lim_{x\to3}\displaystyle\frac{ax^2+bx}{x-3}=12\)
ここで分子は \(9a+3b\) に近づきますが、もし仮に \(9a+3b≠0\) とすると、右辺は \(\displaystyle\frac{k}{0}\) (\(k≠0\)) (不能) の形になります。\(\displaystyle\lim_{x \to 0}\displaystyle\frac{k}{x}\) (\(k≠0\))は、\(x\)を\(0\)に近づければいくらでも大きくなる(負の方向から近づければいくらでも小さくなる)ので、一定の値に近づくことはなく極限値は存在しません(反比例 \(y=\displaystyle\frac{1}{x}\) のグラフを考えても分かります)。したがって極限値\(12\)が存在するためには、分子も\(0\)に近づく必要があるので、\(9a+3b=0\) です。このとき左辺は \(\displaystyle\frac{0}{0}\) (不定) の形になります。
なお、別解では \(x-3\) を掛けることで 「(分子)→0」を導く方法を紹介します。
(注)
(分子)→0 つまり \(9a+3b=0\) は必要条件です。
まず、\(9a+3b=0\) だけが成り立つとしても、その極限値が\(12\)になるとは限りませんし、
そもそも \(\displaystyle\frac{0}{0}\) の形になれば極限値が必ず存在するというわけではありません。例えば、
\(\displaystyle\lim_{x\to 0}\displaystyle\frac{x}{2x^2}\)
は、\(\displaystyle\frac{0}{0}\) の形ですが、
\(\displaystyle\lim_{x\to 0}\displaystyle\frac{x}{2x^2}=\displaystyle\lim_{x\to 0}\displaystyle\frac{1}{2x}\)
より極限値は存在しません。この例は簡単に約分できるケースなので間違えにくいかもしれませんが、約分できない場合で極限値が存在しない場合もあります。
なので、極限値が存在することを確かめる意味でも、\(9a+3b=0\) をもとの式に代入して\(a,b\)を求めていきます。
(解答)
\(\displaystyle\lim_{x\to3}\displaystyle\frac{ax^2+bx}{x-3}=12\)・・・① において
分母は\(0\)に近づくので、極限値が存在するためには、(分子)→0
よって
\(\displaystyle\lim_{x\to3}(ax^2+bx)=0\)
\(9a+3b=0\)・・・②
②を①に代入して
\(\displaystyle\lim_{x\to3}\displaystyle\frac{ax^2-3ax}{x-3}=12\)
\(\displaystyle\lim_{x\to3}\displaystyle\frac{ax(x-3)}{x-3}=12\)
(分子に\(x=3\)を代入すると\(0\)になるようにしたので、因数 \(x-3\) をもつのは当然です)
\(\displaystyle\lim_{x\to3}ax=12\)
したがって
\(3a=12\)
\(a=4\)
②より
\(b=-12\)
(別解)
\(\displaystyle\lim_{x\to3}\displaystyle\frac{ax^2+bx}{x-3}\cdot(x-3)\)
\(=(\displaystyle\lim_{x\to3}\displaystyle\frac{ax^2+bx}{x-3})\cdot\{\displaystyle\lim_{x\to3}(x-3)\}\)
\(=12×0\)
\(=0\)
したがって、(最初の式)\(=0\) より
\(\displaystyle\lim_{x\to3}(ax^2+bx)=0\)
\(9a+3b=0\)
以下同様。
(例題2)
次の等式が成り立つように 定数 \(a,b\) の値を決定せよ。
\(\displaystyle\lim_{x\to a}\displaystyle\frac{3x^2+5bx-2b^2}{x^2-(2+a)x+2a}=7\)
(解答)
\(\displaystyle\lim_{x\to a}\displaystyle\frac{3x^2+5bx-2b^2}{x^2-(2+a)x+2a}=7\)・・・① において
\(x→a\) のとき (分母)→0 だから、極限値が存在するためには (分子)→0
したがって
\(3a^2+5ab-2b^2=0\)
\((3a-b)(a+2b)=0\)
よって
\(b=3a\) または \(a=-2b\)
(ア)\(b=3a\) のとき
①より
\(\displaystyle\lim_{x\to a}\displaystyle\frac{3x^2+15ax-18a^2}{x^2-(2+a)x+2a}=7\)
\(\displaystyle\lim_{x\to a}\displaystyle\frac{3(x-a)(x+6a)}{(x-2)(x-a)}=7\)
\(\displaystyle\lim_{x\to a}\displaystyle\frac{3(x+6a)}{x-2}=7\)
よって
\(\displaystyle\frac{21a}{a-2}=7\) より
\(a=-1\)
\(b=3a\) より \(b=-3\)
(イ) \(a=-2b\) のとき
①より
\(\displaystyle\lim_{x\to a}\displaystyle\frac{3x^2+5bx-2b^2}{x^2+(2b-2)x-4b}=7\)
\(\displaystyle\lim_{x\to a}\displaystyle\frac{(3x-b)(x+2b)}{(x+2b)(x-2)}=7\)
\(\displaystyle\lim_{x\to a}\displaystyle\frac{3x-b}{x-2}=7\)
したがって
\(\displaystyle\frac{3a-b}{a-2}=7\)
\(4a+b-14=0\)・・・②
\(a=-2b\) と ②を連立すると
\(a=4\), \(b=-2\)
以上より
\((a,b)=(-1,-3),(4,-2)\)
(例題3)
\(x^3\) の係数が\(1\)である\(x\)の3次式\(f(x)\)が、ある実数\(a\)に対して
\(\displaystyle\lim_{x\to a}\displaystyle\frac{f(x)}{x-a}=-2\), \(\displaystyle\lim_{x\to -a}\displaystyle\frac{f(x)}{x+a}=6\)
を満たしている。\(f(x)\) を求めよ。
(解答)
ここで、因数定理を使うと、\(f(x)\)は \(x-a\), \(x+a\) の2つを因数にもつことになりますが、\(a=0\)の場合にはどちらも同じ因数になるので、因数 \(x\)をもつことしかわかりません(\(x^2\)を因数にもつとは決めきれない)。したがって \(a=0\) の場合は別に考える必要がありますが、条件式をよく見ると、\(a=0\)のときは左辺が2式とも同じになり、極限値はそれぞれ違うことから不適であることが分かります。
\(a=0\) とすると、2式の左辺はどちらも同じになるが、極限値が異なるので不適。
よって \(a≠0\)
\(\displaystyle\lim_{x\to a}\displaystyle\frac{f(x)}{x-a}=-2\)・・・①, \(\displaystyle\lim_{x\to -a}\displaystyle\frac{f(x)}{x+a}=6\)・・・②
より、どちらも (分母)→0 だから、極限値が存在するためには (分子)→0
したがって
\(f(a)=0\), \(f(-a)=0\)
ゆえに \(f(x)\)は、\(x-a\) と \(x+a\) を因数にもつ\(x^3\)の係数が1の3次式だから
\(f(x)=(x-a)(x+a)(x-b)\) (\(b\)は定数)
とおける。
①②より
\(\displaystyle\lim_{x\to a}\displaystyle\frac{(x-a)(x+a)(x-b)}{x-a}=-2\)
\(\displaystyle\lim_{x\to -a}\displaystyle\frac{(x-a)(x+a)(x-b)}{x+a}=6\)
\(\displaystyle\lim_{x\to a}(x+a)(x-b)=-2\)
\(\displaystyle\lim_{x\to -a}(x-a)(x-b)=6\)
よって
\(2a(a-b)=-2\)・・・③
\(2a(a+b)=6\)・・・④
③+④より
\(4a^2=4\)
\(a=±1\)
(ア)
\(a=1\) のとき ④より \(b=2\)
(イ)
\(a=-1\) のとき ④より \(b=-2\)
以上より
\(f(x)=(x-1)(x+1)(x-2)\)
または
\(f(x)=(x+1)(x-1)(x+2)\)
以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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