極限と正誤判定

極限の正誤判定の例題について見ていきます。

極限の正誤判定は紛らわしいものが多いです。
主に誤っている命題について意識するといいですが、気を付けるポイントは「不等号にイコールがつくかどうか、\(0\)への収束」です。

 

(例題)
数列\(\{a_n\},\{b_n\}\)について、次の命題が正しいか誤っているか判定せよ。また、誤っている場合には反例をあげよ。

(1)\(a_n<b_n\) であり、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}a_n=α\)、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}b_n=β\) (どちらも収束) ならば、\(α<β\)
(2)\(\{a_nb_n\}\)が収束するならば、\(\{a_n\},\{b_n\}\)はどちらも収束する。
(3)\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}b_n=0\) ならば、\(\left\{\displaystyle\frac{a_n}{b_n}\right\}\) は発散する。
(4)\(b_n≠0\) であり、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}a_n=α\)、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}b_n=β\) (どちらも収束) ならば、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\displaystyle\frac{a_n}{b_n}=\displaystyle\frac{α}{β}\) (収束する)
(5)\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}(a_n-b_n)=0\) ならば、\(\{a_n\},\{b_n\}\)の極限は一致する。
(6)\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}(a_{n+1}-a_n)=0\) ならば、\(\{a_n\}\)は収束する。

 

 

(解答)
(1)
\(\{a_n\},\{b_n\}\)が同じ値に収束する、つまり\(α=β\)のときもあり得る。
反例は、\(a_n=\displaystyle\frac{1}{n}\)、\(b_n=\displaystyle\frac{2}{n}\) など。

(2)
一方が発散して、もう一方がそれを打ち消すような場合もあり得る。
反例は、\(a_n=n\)、 \(b_n=\displaystyle\frac{1}{n+1}\) など。

(3)
分子\(a_n\)の\(0\)への収束のほうが強い場合もあり得る。
反例は、\(a_n=\displaystyle\frac{1}{n^2}\)、\(b_n=\displaystyle\frac{1}{n}\)。このとき
\(\displaystyle\frac{a_n}{b_n}=\displaystyle\frac{\displaystyle\frac{1}{n^2}}{\displaystyle\frac{1}{n}}=\displaystyle\frac{1}{n}→0\) (収束)

(4)
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}b_n=0\) の場合もあり得る。
反例は、\(a_n=\displaystyle\frac{1}{n}\)、\(b_n=\displaystyle\frac{1}{n^2}\)。このとき
\(\displaystyle\frac{a_n}{b_n}=\displaystyle\frac{\displaystyle\frac{1}{n}}{\displaystyle\frac{1}{n^2}}=n→\infty\) (発散)

(5)
そもそもこの命題が成り立つから極限が求まる場合も多々ある。
例えば片方の極限を求めることができて、もう一方の極限が分からない場合でも、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}(a_n-b_n)=0\) が成り立てば、もう一方の極限が分かる(同じになる)ことになる。
ざっくりとした説明にはなるが、\(b_n=a_n-(a_n-b_n)\) より、\(\{a_n\},\{b_n\}\)の極限が一致することが分かる。
なお、どちらも収束する場合と、どちらも発散する場合がある。

(6)
\(a_{n+1},a_{n}\) がどちらも同じ強さで発散する場合もあり得る。
反例は、\(a_n=\sqrt{n}\), (\(a_{n+1}=\sqrt{n+1}\)) 。このとき

\(a_{n+1}-a_{n}=\sqrt{n+1}-\sqrt{n}\)
\(=\displaystyle\frac{1}{\sqrt{n+1}+\sqrt{n}}→0\) (収束)

 

 

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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