極限と条件式

極限に関する式の係数決定の問題などについて見てきます。

 

(例題1)
(1)\(\displaystyle\lim_{x \to 1}\displaystyle\frac{a\sqrt{x+1}+b}{x-1}=1\) を満たす実数\(a,b\)の値を求めよ。

(2)\(\displaystyle\lim_{x \to 0}\displaystyle\frac{x\sin x}{a+b\cos x}=1\) が成り立つような定数\(a,b\)の値の組を求めよ。

 

(解答)
(1)

\(x \to 1\) のとき分母は\(0\)に近づくので、分子がもし\(0\)に近づかないと(\(0\)以外の有限な値や無限大だと)発散してしまうので、分子\(\to 0\) です。つまり \(\displaystyle\frac{0}{0}\) の形になる必要があるということですが、これは不定形なのでまだこれだけでは収束するかは不明です。よって、分子\(=0\) の条件式から実際に極限を求める作業をします。(十分性の確認)

\(\displaystyle\lim_{x \to 1}\displaystyle\frac{a\sqrt{x+1}+b}{x-1}=1\)・・・① (収束する)

\(x-1 \to 0\) だから、\(\displaystyle\lim_{x \to 1}(a\sqrt{x+1}+b)=0\) となる必要がある。よって、
\(\sqrt{2}a+b=0\)・・・②

②より \(b=-\sqrt{2}a\) を①の左辺に代入すると
\(\displaystyle\lim_{x \to 1}\displaystyle\frac{a\sqrt{x+1}+b}{x-1}\)

\(=\displaystyle\lim_{x \to 1}a\cdot\displaystyle\frac{\sqrt{x+1}-\sqrt{2}}{x-1}\)

(有理化して)

\(=\displaystyle\lim_{x \to 1}a\cdot\displaystyle\frac{(x+1)-2}{(x-1)(\sqrt{x+1}+\sqrt{2})}\)

\(=\displaystyle\lim_{x \to 1}a\cdot\displaystyle\frac{(x-1)}{(x-1)(\sqrt{x+1}+\sqrt{2})}\)

\(=\displaystyle\lim_{x \to 1}\displaystyle\frac{a}{\sqrt{x+1}+\sqrt{2}}\)

\(=\displaystyle\frac{a}{2\sqrt{2}}\)

①より\(1\)に収束するから
\(\displaystyle\frac{a}{2\sqrt{2}}=1\)
\(a=2\sqrt{2}\)
②より
\(b=-4\)

 

(2)

(1)と同様です。
\(\displaystyle\lim_{x \to 0}\displaystyle\frac{x\sin x}{a+b\cos x}=1\)
より (分子)\(\to 0\) だから、\(1\)に収束するためには、(分母)\(\to 0\) です。

\(\displaystyle\lim_{x \to 0}\displaystyle\frac{x\sin x}{a+b\cos x}=1\)・・・③

\(x\sin x \to 0\) だから、\(1\)に収束するためには
\(\displaystyle\lim_{x \to 0}(a+b\cos x)=0\)
となることが必要。よって
\(a+b=0\)・・・④

④より \(b=-a\) を③の左辺に代入して
\(\displaystyle\lim_{x \to 0}\displaystyle\frac{x\sin x}{a+b\cos x}\)

\(=\displaystyle\lim_{x \to 0}\displaystyle\frac{x\sin x}{a(1-\cos x)}\)

(分母分子 \(1+\cos x\) 倍して)

\(=\displaystyle\lim_{x \to 0}\displaystyle\frac{x\sin x(1+\cos x)}{a\sin^2x}\)

\(=\displaystyle\lim_{x \to 0}\displaystyle\frac{x}{\sin x}\cdot\displaystyle\frac{1+\cos x}{a}\)

\(=\displaystyle\frac{2}{a}\)

③より\(1\)に収束するから
\(\displaystyle\frac{2}{a}=1\)
\(a=2\)
④より \(b=-2\)

 

 

 

 

(例題2)
\(f(x)\)を3次関数とする。相異なる3つの定数\(α,β,γ\)に対して極限値
\(\displaystyle\lim_{x \to α}\displaystyle\frac{f(x)}{x-α}=l\)、\(\displaystyle\lim_{x \to β}\displaystyle\frac{f(x)}{x-β}=m\)、\(\displaystyle\lim_{x \to γ}\displaystyle\frac{f(x)}{x-γ}=n\)
が存在するとき、\(lm+mn+nl=0\) であることを示せ。

 

3つの式の分母は全部\(0\)に近づくので、有限値\(l,m,n\)に収束するためには、分子も\(0\)に近づきます。

(解答)
\(\displaystyle\lim_{x \to α}\displaystyle\frac{f(x)}{x-α}=l\)、\(\displaystyle\lim_{x \to β}\displaystyle\frac{f(x)}{x-β}=m\)、\(\displaystyle\lim_{x \to γ}\displaystyle\frac{f(x)}{x-γ}=n\)・・・①

いずれの分数についても分母が\(0\)に近づくので、極限値\(l,m,n\)が存在するためには
\(\displaystyle\lim_{x \to a}f(x)=0\)、\(\displaystyle\lim_{x \to β}f(x)=0\)、\(\displaystyle\lim_{x \to γ}f(x)=0\)

よって
\(f(α)=0\)、\(f(β)=0\)、\(f(γ)=0\) ・・・(注)
\(α,β,γ\)は相異なるので、三次関数\(f(x)\)は\(0\)でない定数\(k\)を用いて次のように表せる。

\(f(x)=k(x-α)(x-β)(x-γ)\)

ゆえに①より
\(\displaystyle\lim_{x \to α}k(x-β)(x-γ)=l\)、\(\displaystyle\lim_{x \to β}k(x-α)(x-γ)=m\)、\(\displaystyle\lim_{x \to γ}k(x-α)(x-β)=n\)

\(l=k(α-β)(α-γ)\)
\(m=k(β-α)(β-γ)\)
\(n=k(γ-α)(γ-β)\)

したがって
\(lm+mn+nl\)

\(=k^2(α-β)^2(β-γ)(γ-α)+k^2(α-β)(β-γ)^2(γ-α)\)
\(+k^2(α-β)(β-γ)(γ-α)^2\)

\(=k^2(α-β)(β-γ)(γ-α)\)
\(×\{(α-β)+(β-γ)+(γ-α)\}\)

\(=k^2(α-β)(β-γ)(γ-α)×0\)

\(=0\)

よって
\(lm+mn+nl=0\) であることが示された。

 

(注)について
\(\displaystyle\lim_{x \to a}f(x)=f(a)\) ・・・(i)
が成り立つためには、正確には\(f(x)\)が\(x=a\)で連続でなければなりません。3次関数は定義域全体で連続である(簡単にいうとつながっている)ので、(i)としても問題ありません。

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
next→はさみうちと関数の極限 back→図形と三角関数の極限

タイトルとURLをコピーしました