引き続き逆関数がテーマの定積分の例題です。
(例題1)
\(x>0\) で定義された微分可能な関数\(f(x)\)とその逆関数\(g(x)\)に対して、等式
\(\displaystyle\int_{1}^{f(x)}g(t)dt=\displaystyle\frac{1}{3}(x^{\frac{3}{2}}-8)\)
が成り立つとき、\(f(x)\)を求めよ。
\(f(f^{-1}(x))=f^{-1}(f(x))=x\) を利用します。
\(\displaystyle\int_{1}^{f(x)}g(t)dt=\displaystyle\frac{1}{3}(x^{\frac{3}{2}}-8)\)・・・①
①の両辺を\(x\)で微分すると
\(g(f(x))f'(x)=\displaystyle\frac{1}{3}\cdot\displaystyle\frac{3}{2}x^{\frac{1}{2}}\)
\(g(f(x))=x\) だから
\(xf'(x)=\displaystyle\frac{1}{2}x^{\frac{1}{2}}\)
\(x>0\) で定義されているから
\(f'(x)=\displaystyle\frac{1}{2}x^{-\frac{1}{2}}\)
よって\(C\)を定数とすると
\(f(x)=x^{\frac{1}{2}}+C\)
ここで、\(f(x)=1\) のとき
\(1=x^{\frac{1}{2}}+C\) だから
\(x^{\frac{1}{2}}=1-C\)
\(1-C>0\) として
\(x=(1-C)^2\)
これを①に代入すると
\(\displaystyle\int_{1}^{1}g(t)dt=\displaystyle\frac{1}{3}\{(1-C)^{2\cdot\frac{3}{2}}-8\}\)
\(0=\displaystyle\frac{1}{3}\{(1-C)^3-8\}\)
よって
\((1-C)^3=8\)
\(1-C=2\)
\(C=-1\) (\(1-C>0\) を満たす)
したがって
\(f(x)=\sqrt{x}-1\)
(例題2)
実数\(x\)に対して、\(f(x)=\displaystyle\int_{0}^{x}\displaystyle\frac{1}{t^2+1}dt\) とおく。
(1)\(|x|<1\)、\(|y|<1\) のとき、\(f(\displaystyle\frac{x+y}{1-xy})=f(x)+f(y)\) が成り立つことを示せ。
(2)\(x>0\) のとき、\(f(x)+f(\displaystyle\frac{1}{x})\) の値を求めよ。
(3)\(\displaystyle\lim_{x \to \infty}f(x)\) を求めよ。
(4) (3)の極限値を\(c\)とするとき、\(\displaystyle\lim_{x \to \infty}x\{c-f(x)\}\) を求めよ。
(解答)
(1)
\(|x|<1\)、\(|y|<1\) より、\(-\displaystyle\frac{π}{4}<α,β<\displaystyle\frac{π}{4}\) として、\(x=\tanα\)、\(y=\tanβ\) とおける。
\(t=\tanθ\) と置換すると
\(f(x)=\displaystyle\int_{0}^{α}\displaystyle\frac{1}{\tan^2θ+1}\cdot\displaystyle\frac{1}{\cos^2θ}dθ=\displaystyle\int_{0}^{α}dθ=α\)
\(f(y)=\displaystyle\int_{0}^{β}dθ=β\)
また (\(\tan\)の加法定理の逆から)
\(\displaystyle\frac{x+y}{1-xy}=\displaystyle\frac{\tanα+\tanβ}{1-\tanα\tanβ}=\tan(α+β)\)
より
\(f(\displaystyle\frac{x+y}{1-xy})=\displaystyle\int_{0}^{α+β}dθ=α+β\)
したがって
\(f(\displaystyle\frac{x+y}{1-xy})=f(x)+f(y)\ (=α+β)\)
が成り立つ。
(2)
\(x>0\) より、\(x=\tanγ\) (\(0<γ<\displaystyle\frac{π}{2}\)) とおけて
(1)と同様に \(t=\tanθ\) の置換をして
\(f(x)=\displaystyle\int_{0}^{γ}dθ=γ\)
また
\(\displaystyle\frac{1}{x}=\displaystyle\frac{1}{\tanγ}=\tan(\displaystyle\frac{π}{2}-γ)\) より
\(f(\displaystyle\frac{1}{x})=\displaystyle\int_{0}^{\frac{π}{2}-γ}dθ=\displaystyle\frac{π}{2}-γ\)
したがって
\(f(x)+f(\displaystyle\frac{1}{x})=γ+\displaystyle\frac{π}{2}-γ\)
\(=\displaystyle\frac{π}{2}\)
(3)
\(x \to \infty\) を考えるので、\(x=\tan γ\) (\(0<γ<\displaystyle\frac{π}{2}\)) とおけて
\(f(x)=γ\)
\(x \to \infty\) のとき \(γ \to \displaystyle\frac{π}{2}-0\) だから
\(\displaystyle\lim_{x \to \infty}f(x)=\displaystyle\lim_{γ \to \frac{π}{2}-0}γ\)
\(=\displaystyle\frac{π}{2}\)
(別解)
(2)を用いてもよい。
\(\displaystyle\lim_{x \to \infty}f(x)=\displaystyle\lim_{x \to \infty}\{\displaystyle\frac{π}{2}-f(\displaystyle\frac{1}{x})\}\)
\(=\displaystyle\frac{π}{2}-f(0)\) (\(f(x)\)の連続性から \(\displaystyle\lim_{x \to \infty}f(\displaystyle\frac{1}{x})=f(0)\) )
\(=\displaystyle\frac{π}{2}\)
(4)
(3)と同様に、\(x \to \infty\) を考えるので、\(x=\tan γ\) (\(0<γ<\displaystyle\frac{π}{2}\)) とおけて
\(f(x)=γ\)
\(x \to \infty\) のとき \(γ \to \displaystyle\frac{π}{2}-0\) だから
\(\displaystyle\lim_{x \to \infty}x\{c-f(x)\}\)
\(=\displaystyle\lim_{γ \to \frac{π}{2}-0}(\tanγ)(\displaystyle\frac{π}{2}-γ)\)
(\(\displaystyle\frac{π}{2}-γ=s\) と置き換えて)
\(=\displaystyle\lim_{s \to +0}\tan(\displaystyle\frac{π}{2}-s)×s\)
\(=\displaystyle\lim_{s \to +0}\displaystyle\frac{s}{\tan s}\)
\(=1\)
(別解)
(2)を利用すると
\(\displaystyle\lim_{x \to \infty}x\{\displaystyle\frac{π}{2}-f(x)\}\)
\(=\displaystyle\lim_{x \to \infty}xf(\displaystyle\frac{1}{x})\)
(\(\displaystyle\frac{1}{x}=u\) と置き換えて)
\(=\displaystyle\lim_{x \to +0}\displaystyle\frac{f(u)}{u}\)
\(=\displaystyle\lim_{x \to +0}\displaystyle\frac{f(u)-f(0)}{u}\) (\(f(0)=0\) より)
\(=f'(0)\)
\(=1\) (\(f'(x)=\displaystyle\frac{1}{x^2+1}\) より)
以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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