数や式の大小を不等号で表した式、つまり不等式について見ていきましょう。この単元では特に文字の次数が1である1次不等式について扱っていきます。
(この単元では文字は実数を表すこととします。ちなみに実数でない複素数(数Ⅱ)の場合は、数の大小は定めません)
・不等式の性質
不等式には以下の性質があります。
① \(a>b,b>c\) \(→\) \(a>c\)
② \(a>b\) \(→\) \(a+c>b+c\) \(a-c>b-c\)
③(A) \(a>b\) \(m>0\) \(→\) \(am>bm\) \(\displaystyle\frac{a}{m}>\displaystyle\frac{b}{m}\)
(B) \(a>b\) \(m<0\) \(→\) \(am\)\(<\)\(bm\) \(\displaystyle\frac{a}{m}\)\(<\)\(\displaystyle\frac{b}{m}\)
③(A)も同様です。同じ数(ただし正の数)で掛けたり割ったりしても傾きは変わりません。しかし同じ数(負の数)を掛けたり割ったりすると傾きは反対になります。(③(B))(不等号が入れ替わる)
\(3>1\) の両辺に\(-2\)をかけると、\(-6<-2\)
\(2>-3\) の両辺に\(-1\)をかけると、\(-2<3\)
\(-2>-4\) の両辺に\(-3\)をかけると、\(6<12\)
例題で不等式を利用した、式のとりうる値を考えてみます。
(例題)
\(3<x<6\)、 \(2<y<6\)である2つの数\(x,y\)について次の式のとりうる値の範囲を求めよ。
(1) \(x-4\)
(2) \(2x\)
(3) \(x+y\)
(4) \(x-y\)
(解答)
(1)
\(3<x<6\)の各辺から4を引いて
\(-1<x-4<2\)
(2)
\(3<x<6\)の各辺を2倍して
\(6<2x<12\)
(3)
丁寧に解いてみます。
\(3<x<6\)の各辺に\(y\)を加えて
\(3+y<x+y<6+y\)・・・①
\(2<y<6\)から \(2<y\) 両辺に3を加えて
\(5<3+y\)・・・②
\(2<y<6\)から \(y<6\) 両辺に6を加えて
\(6+y<12\)・・・③
②と①の左辺、中辺より、\(5<x+y\)
③と①の中辺、右辺より、\(x+y<12\)
よって、\(5<x+y<12\)
一般的に、\(a<x<b\)、 \(c<y<d\) \(→\) \(a+c<x+y<b+d\) ・・・(X)が成り立ちます。証明は解法と全く同じようにできます。
(X)を用いて解いてみます。\(-y\)の範囲を出すときに負の数を各辺に掛けるので、不等号が入れ替わることに注意してください。
\(2<y<6\)の各辺に\(-1\)(\(<0\))を掛けて
つまり\(-6<-y<-2\)
これに\(3<x<6\)の辺々を加えて((X)の利用)