三角関数の最大最小①(基本)

今回からは三角関数の最大最小に関する問題について見ていきます。
三角関数の性質や公式をフル活用していくことになりますが、新しい知識はほとんど必要ありません。各問題において、どの公式を使えばいいかということに重点をおいてみてください。

 

(例題)
(1)\(y=2\sin(θ+\displaystyle\frac{π}{3})\) (\(0≦θ≦\displaystyle\frac{π}{2}\)) の最大値と最小値を求めよ。

(2)\(F=\displaystyle\frac{\sin(θ+30°)-\sin(θ-30°)}{\sin(θ+60°)}\)
(\(30°≦θ≦60°\)) の最大値・最小値を求めよ。

(3)\(0<x<\displaystyle\frac{π}{2}\), \(0<y<\displaystyle\frac{π}{2}\) とする。
\(\tan x\tan y=\displaystyle\frac{1}{2}\)のとき
\(\tan(x+y)+\tan(x-y)\) の最小値を求めよ。

 

 

三角関数の最大最小値問題の基本は
①三角関数の種類の統一 ②角の統一
です。これを目指して式変形していきます。

(解答)
(1)

\(θ\)の範囲に気を付けながら、とりうる値を考えます。
大丈夫だと思いますが、加法定理を使ったりしないように。すでに\(\sin\)のみの関数にまとめられているので、そのまま考えます。

\(0≦θ≦\displaystyle\frac{π}{2}\) より
\(\displaystyle\frac{π}{3}≦θ+\displaystyle\frac{π}{3}≦\displaystyle\frac{5π}{6}\)

したがって
\(y=2\sin(θ+\displaystyle\frac{π}{3})\) の

最大値は \(θ+\displaystyle\frac{π}{3}=\displaystyle\frac{π}{2}\) のとき \(y=2\)
最小値は \(θ+\displaystyle\frac{π}{3}=\displaystyle\frac{5π}{6}\) のとき \(y=2・\displaystyle\frac{1}{2}=1\)

三角関数 最大最小①

最大値  \(2\)  (\(θ=\displaystyle\frac{π}{6}\))
最小値  \(1\)  (\(θ=\displaystyle\frac{π}{2}\))

 

(2)

角の部分がバラバラなので、加法定理により統一します。(和積の公式を使ってもよいです)

\(\sin(θ±30°)\)
\(=\sinθ\cdot\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}±\cosθ\cdot\displaystyle\frac{1}{2}\)
より

\(\sin(θ+30°)-\sin(θ-30°)\)
\(=\cosθ\)

また
\(\sin(θ+60°)\)
\(=\sinθ\cdot\displaystyle\frac{1}{2}+\cosθ\cdot\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}\)
より

\(F=\displaystyle\frac{\sin(θ+30°)-\sin(θ-30°)}{\sin(θ+60°)}\)

\(=\displaystyle\frac{\cosθ}{\displaystyle\frac{1}{2}\sinθ+\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}\cosθ}\)

 

分母分子に\(\sinθ\),\(\cosθ\)があるので、\(\cosθ\)で分母分子を割って\(\tanθ\)に統一します。ついでに\(2\)もかけて分数のところも無くしてしまいます。
ちなみに分母だけを合成しても意味がありません。そもそも加法定理によって変形をしたので合成したらもとに戻るだけです(合成は加法定理の逆の操作)。

分母分子を2倍して、\(30°≦θ≦60°\) より、\(\cosθ(≠0)\)で分母分子を割ると

\(F=\displaystyle\frac{2}{\tanθ+\sqrt{3}}\)

 

分母にのみ変数があるので、これの最大最小値を考えます。(分子)>0 (分母)>0 で、小さい数で割ったほうが値としては大きくなることから、分母が最小値をとるときに\(F\)は最大に、分母が最大値をとるときに\(F\)は最小になります。つまり逆数をとると最大値と最小値が入れ替わるのですが、この問題のように値がすべて正のとき(またはすべて負のとき)にのみ成り立つことで、負と正が混ざっている場合には当たり前ですが逆数をとっても入れ替わらず負のほうが小さいです。

ここで、\(30°≦θ≦60°\) より

\(\displaystyle\frac{4\sqrt{3}}{3}≦\tanθ+\sqrt{3}≦2\sqrt{3}\)

よって
分母,分子が正の値であることから
\(F\) は \(\tanθ+\sqrt{3}\)が最小値をとるとき最大となり
最大値 \(F=\displaystyle\frac{3・2}{4\sqrt{3}}\)\(=\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}\) (\(θ=30°\))

最小値は \(\tanθ+\sqrt{3}\)が最大値をとるときで
最小値 \(F=\displaystyle\frac{2}{2\sqrt{3}}\)\(=\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{3}\) (\(θ=60°\))

 

(3)

条件式が使えるように加法定理により変形します。

加法定理と \(\tan x\tan y=\displaystyle\frac{1}{2}\) より

\(\tan(x+y)+\tan(x-y)\)

\(=\displaystyle\frac{\tan x+\tan y}{1-\tan x\tan y}\)\(+\displaystyle\frac{\tan x-\tan y}{1+\tan x\tan y}\)

\(=\displaystyle\frac{\tan x+\tan y}{1-\displaystyle\frac{1}{2}}\)\(+\displaystyle\frac{\tan x-\tan y}{1+\displaystyle\frac{1}{2}}\)

\(=2(\tan x+\tan y)+\displaystyle\frac{2}{3}(\tan x-\tan y)\)

\(=\displaystyle\frac{8}{3}\tan x+\displaystyle\frac{4}{3}\tan y\)

 

\(\tan x\tan y=\displaystyle\frac{1}{2}\) を満たすとき、
\(\displaystyle\frac{8}{3}\tan x+\displaystyle\frac{4}{3}\tan y\) の最小値がどうなるかということですが、\(x,y\)の範囲から \(\tan x,\tan y\)がともに正なので相加相乗平均を使います。本問は最小値だけを求める問題なのでこれで構いませんが、最大値も求める場合などは文字消去など別の方法に頼ることになります。なおこの問題では\(x,y\)を\(\displaystyle\frac{π}{2}\) に近づければいくらでも大きくなるので最大値はないことになります。

ここで、\(0<x<\displaystyle\frac{π}{2}\), \(0<y<\displaystyle\frac{π}{2}\) より
\(\tan x>0\), \(\tan y>0\) となるので、相加相乗平均の不等式から

\(\displaystyle\frac{8}{3}\tan x+\displaystyle\frac{4}{3}\tan y\)
\(≧2\sqrt{\displaystyle\frac{8}{3}\tan x\cdot\displaystyle\frac{4}{3}\tan y}\)
\(=2\sqrt{\displaystyle\frac{8}{3}\cdot\displaystyle\frac{4}{3}\cdot\displaystyle\frac{1}{2}}\)
\(=\displaystyle\frac{8}{3}\)

等号は

\(\displaystyle\frac{8}{3}\tan x=\displaystyle\frac{4}{3}\tan y\)
つまり
\(2\tan x=\tan y\)
のとき成り立ち

\(\tan x\tan y=\displaystyle\frac{1}{2}\) より
\(\tan x\cdot2\tan x=\displaystyle\frac{1}{2}\)
\(\tan^2x=\displaystyle\frac{1}{4}\)
\(\tan x>0\) より
\(\tan x=\displaystyle\frac{1}{2}\)

このとき \(\tan y=1\)

したがって 最小値は \(\displaystyle\frac{8}{3}\)

 

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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