3次関数のグラフの特徴②(対称性)

3次関数のグラフの対称性について見ていきます。

 

・3次関数のグラフの対称性
3次関数のグラフをいくつか書いていると、なんとなくグラフが対称(点対称)であると気づいた人もいるかもしれませんが、その通りである点について対称になっています。

(3次関数のグラフの対称性)
\(f(x)=ax^3+bx^2+cx+d\) (\(a≠0\)) は、\(y=f(x)\)上の 点\(M(-\displaystyle\frac{b}{3a},f(-\displaystyle\frac{b}{3a}))\) について対称である。特に極値をとる場合、極大値となる座標と極小値となる座標は点\(M\)について対称である。
また、点\(M\) は変曲点であり、点\(M\)の\(x\)座標は、導関数 \(y=f'(x)\) のである。
前半部分の証明を2パターン紹介します。
1つ目は\(M\)を原点について平行移動する方法(原点対称が扱いやすいため)、
2つ目は素直に点対称の条件を立式する方法です。
変曲点や導関数の軸についてはあとでまとめて解説します。

 

(証明1)平行移動の方法

3次関数 グラフ対称性1

\(y=f(x)=ax^3+bx^2+cx+d\) を、点\(M(-\displaystyle\frac{b}{3a},f(-\displaystyle\frac{b}{3a}))\) が原点にくるように
\(x\)軸方向に \(+\displaystyle\frac{b}{3a}\), \(y\)軸方向に \(-f(-\displaystyle\frac{b}{3a})\)
だけ平行移動すると

\(f(-\displaystyle\frac{b}{3a})=\displaystyle\frac{2b^3}{27a^2}-\displaystyle\frac{bc}{3a}+d\) より

\(y=g(x)=a(x-\displaystyle\frac{b}{3a})^3+b(x-\displaystyle\frac{b}{3a})^2+c(x-\displaystyle\frac{b}{3a})+d\)\(-(\displaystyle\frac{2b^3}{27a^2}-\displaystyle\frac{bc}{3a}+d)\)

(展開して整理すると、\(x^2\)の項と定数項が消えて)

\(g(x)=ax^3+(-\displaystyle\frac{b^2}{3a}+c)x\)

\(g(x)=-g(-x)\) だから、\(y=g(x)\)は原点について対称。
したがって、移動前の \(y=f(x)\) は 点\(M\) について対称となる。

また、\(g'(x)=3ax^2+(-\displaystyle\frac{b^2}{3a}+c)\) より
\(g'(x)=0\) が異なる2つの実数解\(p,q\)をもつとき、つまり極大値と極小値が存在するとき
\(g'(x)=0\) を満たす解は符号が反対なだけなので
\(p=-q\) (極値をとる\(x\)座標は原点対称)
またこれより \(g(p)=-g(q)\) だから、\((p,g(p))\), \((q,g(q))\) は原点対称となるので、移動前の極値どうしも点\(M\)について対称となる。

 

(証明2)点対称の条件式を立てる

3次関数 対称性2

\(y=f(x)=ax^3+bx^2+cx+d\) が 点\((k,f(k))\) について対称
\(⇔\)
すべての\(x\)について \(\displaystyle\frac{f(k-x)+f(k+x)}{2}=f(k)\)・・・① が成り立つ

\((k-x,f(k-x))\) と \((k+x,f(k+x))\) の中点が \((k,f(k))\) になればよいので上記のようになります。(\(x\)座標は条件を満たすので、\(y\)座標のみ考えればよい)
\(k=-\displaystyle\frac{b}{3a}\) ですが、最後に代入します。

\(f(k-x)=a(k-x)^3+b(k-x)^2+c(k-x)+d\)
\(f(k+x)=a(k+x)^3+b(k+x)^2+c(k+x)+d\)
より

(①の左辺)
\(=ak^3+3kax^2+bk^2+bx^2+ck+d\)
\(=(3ka+b)x^2+ak^3+bk^2+ck+d\)・・・(X)

(\(k=-\displaystyle\frac{b}{3a}\)を1項目だけ代入して)

\(=ak^3+bk^2+ck+d\)
\(=f(k)\)
\(=\)(右辺)

したがって、任意の\(x\)で①が成り立つので、点\((k,f(k))\) つまり 点\(M\) について対称となる。

ここで、極値をもつ場合
\(f'(x)=3ax^2+2bx+c=0\) の異なる2つの実数解を \(α,β\) として
\(α+β=-\displaystyle\frac{2b}{3a}\)
よって
\(2k=(α+β)\)・・・②

\(k+x=β\)・・・③ とすれば、(\(k+x,f(k+x)\)) は極値をとる座標であり、
\(M\)について対称な点については②③より
\(k-x=k+(k-β)=2k-β=(α+β)-β=α\)

したがって、対称な点も極値をとる座標となる。

 

(※)
\((x,f(x))\) と \((X,f(X))\) を考えて

\(\displaystyle\frac{x+X}{2}=k\)
\(\displaystyle\frac{f(x)+f(X)}{2}=f(k)\)

より、
\(X=2k-x\), \(f(X)=2f(k)-f(x)\)

したがって
\(f(X)=f(2k-x)=2f(k)-f(x)\)

中辺と右辺から
\(\displaystyle\frac{f(2k-x)+f(x)}{2}=f(k)\)

としてもよいです。なおこの式で \(x→x+k\) とすれば①と同じになります。

 

 

(変曲点・導関数の軸について)
\(y=f(x)=ax^3+bx^2+cx+d\) について
\(f'(x)=3ax^2+2bx+c\) より
\(y=f'(x)\) の\(x=-\displaystyle\frac{b}{3a}\) であり、これは対称点\(M\)の\(x\)座標と一致している。

2次関数 \(y=f'(x)\) は軸について対称なので、微分係数つまり関数の増減の程度が \(x=-\displaystyle\frac{b}{3a}\) について対称なので、3次関数 \(y=f(x)\)のグラフも対称になることが納得できます。

また、\(y=f'(x)\) をさらに微分すると
\(f^{\prime\prime}(x)=6ax+2b\)
であり、\(f^{\prime\prime}(x)=0\) を満たす\(x\)、\(x=-\displaystyle\frac{b}{3a}\) とも一致している。

2回微分した \(f^{\prime\prime}(x)=0\) を満たす\(x=k\) について、その前後で符号が変わるとき、曲線上の点 \((k,f(k))\) を変曲点とよびます。変曲点は簡単にいうとグラフの凸性(上に凸、下に凸)が変化する点です。詳しくは数Ⅲの内容なので割愛します。

 

覚えてもよいですが、\(x=-\displaystyle\frac{b}{3a}\) を導くには以上のように \(f'(x)\) か \(f^{\prime\prime}(x)\) を考えると楽です。丁寧にやるなら先ほど証明したように平行移動や対称な点の条件式を立式していくことなります。
例えば対称点の条件式の立式の場合だと、上記証明の(X)から
\((3ka+b)x^2+f(k)=f(k)\) が任意の\(x\)について成り立つので、
\(k=-\displaystyle\frac{b}{3a}\) という対称の中心が求まります。しかもこれ以外に対称の中心が無いことも示しています。

 

 

・3次関数のグラフの等間隔性
簡単のため\(x^3\)の係数が\(1\)とした

\(y=x^3+ax^2+bx+c\)

についてこれが極値をもつとき、この曲線に接する傾きが同じである2本の異なる接線について考えます。
このとき「接点、接線の曲線とのもう1つの交点、点対称の中心」の\(x\)座標は、次のような等間隔の位置関係になります。

3次関数 等間隔性 1

特に接線が\(x\)軸に平行なとき、接点は極値をとるときの座標になり次の通り

3次関数 等間隔性2

 

 

(証明)
\(y=x^3+ax^2+bx+c\) について

点対称の中心は
\(γ=-\displaystyle\frac{a}{3}\)・・・①

また、2つの接線が\(x=β\), \(x=δ\) でそれぞれ接しているので

\(x^3+ax^2+bx+c-(px+q)=(x-β)^2(x-ε)\)
\(x^3+ax^2+bx+c-(px+r)=(x-δ)^2(x-α)\)

\(x^2\) の係数より
\(a=-2β-ε=-2δ-α\)・・・②

①②より
\(γ=\displaystyle\frac{2β+ε}{3}=\displaystyle\frac{2δ+α}{3}\)・・・③

(\(γ\)は、\(β\)から\(ε\) までを\(1:2\)に内分する点
かつ \(α\)から\(δ\) までを\(2:1\)に内分する点 となる)

また
\(y’=3x^2+2ax+b\)
の軸は \(x=-\displaystyle\frac{a}{3}=γ\) であり
2次関数が軸に対称なことと、2つの接線の傾きが等しいことから
\(x=β,δ\) は \(x=γ\) から等距離にあるので

\(γ=\displaystyle\frac{β+δ}{2}\)・・・④

③④より\(α,β,γ,δ,ε\) が等間隔に並ぶことが分かる。

\(x=α\) ,\(x=ε\) における点についても、\(x=γ\)について対称となっています。
したがって、これらの\(y\)座標も対称の中心から距離が等しくなっています。

 

なお \(x^3\)の係数が\(1\)でない場合でもほとんど同じように証明できます。

 

 

 

(例題)
\(x\) の関数 \(y=x^3+ax^2+bx+c\) は、\(x=-3\) で極値をとり、そのグラフは点\((-1,3)\) を通り、この点について対称であるという。このとき、\(a,b,c\)の値を求めよ。

 

 

(解答1)極値どうしが対称であることを利用する方法
\(f(x)=x^3+ax^2+bx+c\) とおく。

\(f(-1)=3\) より
\(-1+a-b+c=3\)・・・①

また
\(f'(x)=3x^2+2ax+b\) と \(x=-3\) で極値をとることから
\(f'(-3)=0\) より
\(27-6a+b=0\)・・・②

さらに、極値をとる \((-3,y)\)  の対称な点 の\(x\)座標を\(p\)とすると
\(\displaystyle\frac{p-3}{2}=-1\) より
\(p=1\)
この対称な点でも 極値となるから
\(f'(1)=0\) より
\(3+2a+b=0\)・・・③

①②③より
\(a=3\), \(b=-9\), \(c=-8\)

最後に2点確認作業をします。
まず、\(x=-3\) で極値をとっているか(符号が変化しているかどうか)。
そして、極値しか対称であることを確認していないので、グラフ全体として対称になっているか。

このとき
\(f'(x)=3x^2+6x-9\)\(=3(x+3)(x-1)\)
よって、\(x=-3\) で極値をとる。

そして
\(f(x)=x^3+3x^2-9x-8\) を \((-1,3)\) が原点にくるように平行移動したあとのグラフを\(y=g(x)\) とすると

\(g(x)=(x-1)^3+3(x-1)^2-9(x-1)-8-3\)
\(=x^3-12x\)

となりこれは原点対称。
したがって、移動前の \(y=f(x)\) は \((-1,3)\) について対称となる。

答 \(a=3\), \(b=-9\), \(c=-8\)

 

 

(解答2)グラフ全体が点対称であることを利用する方法

極値どうしが対称であることは使わずに、グラフ全体が点対称であることから\(a,b,c\)を求めます。①②については先ほどと同じです。

\(f(x)=x^3+ax^2+bx+c\) とおく。
\(f'(x)=3x^2+2ax+b\)

\((-1,3)\) を通るから
\(-1+a-b+c=3\)・・・①

\(x=-3\) で極値をとるから
\(27-6a+b=0\)・・・②

また、グラフは \((-1,3)\) について対称だから
\(\displaystyle\frac{f(-1+x)+f(-1-x)}{2}=3\)・・・③

\(f(-1+x)=(x-1)^3+a(x-1)^2+b(x-1)+c\)
\(f(-1-x)=(-x-1)^3+a(-x-1)^2+b(-x-1)+c\)

したがって③は
\((-3+a)x^2+(-1+a-b+c)=3\)

任意の\(x\)について③が成り立つので
\(-3+a=0\)・・・④ (定数項については①と同じ)

①②④より
\(a=3\), \(b=-9\), \(c=-8\)

(以下、\(x=-3\) で 極値をとることの確認をするが省略します)

 

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとございました。
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