逆関数の微分

逆関数の微分について見ていきます。

もとの関数 \(f(x)\) と その逆関数 \(f^{-1}(x)\) は別物の関数であることはある程度意識したほうがよいです。(ただし全く関連のない関数ではないです)

 

・逆関数の導関数
合成関数の微分を利用すると、逆関数の導関数を求めることができます。
関数\(f(x)\)の逆関数\(f^{-1}(x)\)をもつとき、\(y=f^{-1}(x)\) の導関数 \(y’=\{f^{-1}(x)\}’\) がどうなるかを考えてみます。

\(y=f^{-1}(x)\)・・・① より
\(x=f(y)\)・・・② だから (①②は同じ方程式)

②の両辺を\(x\)で微分すると
(左辺について)
\(\displaystyle\frac{d}{dx}(x)=\color{blue}{1}\)

(右辺について)
合成関数の微分より、\(y\)の微分で中継して
\(\displaystyle\frac{d}{dx}f(y)=\displaystyle\frac{d}{dy}f(y)\cdot\displaystyle\frac{dy}{dx}=\color{blue}{\displaystyle\frac{dx}{dy}\cdot\displaystyle\frac{dy}{dx}}\) (②より)

よって
\(1=\displaystyle\frac{dx}{dy}\cdot\displaystyle\frac{dy}{dx}\)
となるから、\(\displaystyle\frac{dx}{dy}≠0\) のとき

\(\displaystyle\frac{dy}{dx}=\displaystyle\frac{1}{\displaystyle\frac{dx}{dy}}\)・・・③

(逆関数の導関数)
\(\displaystyle\frac{dy}{dx}=\displaystyle\frac{1}{\displaystyle\frac{dx}{dy}}\)

③を①②を用いて表すと

\(\displaystyle\frac{d}{dx}f^{-1}(x)=\displaystyle\frac{1}{\displaystyle\frac{d}{dy}f(y)}\)・・・④

となるので、導関数 \(\{f^{-1}(x)\}’\) を求めるには、もとの関数の\(y=f(x)\)の\(x,y\)を入れかえた \(x=f(y)\) を\(y\)で微分して逆数をとればよいことになります。

ここで④において、左辺は\(x\)の式、右辺は\(y\)の式になっていますが、逆関数の方程式①②で\(y\)と\(x\)の関係式が与えられているので、簡単に文字消去できる場合には、一方の文字で統一することが可能です。

例えば、\(f(x)=x^2\) (\(x≧0\)) だと、
逆関数は
\(y=f^{-1}(x)=\sqrt{x}\)・・・①’
であり、
\(x=f(y)=y^2\)・・・②’ より (①’②’は同じ方程式)

\(\{f^{-1}(x)\}’=\displaystyle\frac{1}{f'(y)}=\displaystyle\frac{1}{2y}=\displaystyle\frac{1}{2\sqrt{x}}\)

 

この逆関数の導関数の公式の良いところは、もとの関数が \(f(x)=x^3+x^2-x+1\) のような、逆関数が具体的に求まらない場合でも導関数が分かる点にあります。ただし上の例のように、簡単に\(y\)を\(x\)で表すことができないので、\(\displaystyle\frac{d}{dx}f^{-1}(x)\)は\(y\)の式で表すことにはなります。

なお、\(\displaystyle\frac{dy}{dx}=\displaystyle\frac{1}{\displaystyle\frac{dx}{dy}}\)・・・③
は、もとの関数 \(y=f(x)\) についても同じ議論をすることで成り立つことが分かるので、
\(x=y^3+y+1\) のように \(x\)が\(y\)の式で表されている場合に、\(\displaystyle\frac{dy}{dx}\) を求めたい場合などにも有効です。

 

実は \(\displaystyle\frac{dy}{dx}=\displaystyle\frac{1}{\displaystyle\frac{dx}{dy}}\)・・・③ について、\(\displaystyle\frac{dy}{dx}\) が \(\displaystyle\frac{yの変化量}{xの変化量}\) の極限、\(\displaystyle\frac{dx}{dy}\) が \(\displaystyle\frac{xの変化量}{yの変化量}\) の極限であることを考えれば、逆数の関係になっていることはすぐに分かります。
それと、③式の両辺の\(x,y\)は同じものです。よって逆関数なら③の両辺の\(x,y\)はどちらもその逆関数の\(x,y\)です。(一方が逆関数の\(x,y\)、片方がもとの関数の\(x,y\)とはならない)

 

 

 

 

(例題)
(1)\(f(x)=x^3\) の逆関数 \(g(x)=\sqrt[3]{x}\) の導関数 \(g'(x)\) を求めよ。

(2)\(x=y^2+2y+1\) (\(y<-1\)) について、\(\displaystyle\frac{dy}{dx}\) を\(x\)で表せ。

(3)\(f(x)=x^3+3x\) の逆関数を \(g(x)\) とするとき、\(g'(0)\) を求めよ。

 

 

(解答)
(1)

\(\{x^p\}’=px^{p-1}\) を利用すれば
\(g'(x)=\displaystyle\frac{1}{3}x^{-\frac{2}{3}}\) とすぐに分かりますが、せっかくなので逆関数の導関数を利用します。

\(y=g(x)=\sqrt[3]{x}\)・・・① より
\(x=y^3\)・・・②

②を\(y\)で微分して
\(\displaystyle\frac{dx}{dy}=3y^2\)

よって
\(g'(x)=\displaystyle\frac{dy}{dx}=\displaystyle\frac{1}{\displaystyle\frac{dx}{dy}}=\displaystyle\frac{1}{3y^2}\)

\(=\displaystyle\frac{1}{3\sqrt[3]{x^2}}\) (①より)

 

(2)
\(x=y^2+2y+1\)・・・③ (\(y<-1\))

③を\(y\)で微分して
\(\displaystyle\frac{dx}{dy}=2y+2\)

よって
\(\displaystyle\frac{dy}{dx}=\displaystyle\frac{1}{\displaystyle\frac{dx}{dy}}=\displaystyle\frac{1}{2y+2}\)

\(x\)で表す必要があるので、③から \(y=(xの式)\) の形を導きます。
\(y\)の2次式なので2次方程式の解の公式を利用してもよいですが、\((y+1)^2\) と因数分解できることを利用すると楽です。

③より
\((y+1)^2=x\) で、\(y<-1\) だから
\(y+1=-\sqrt{x}\)
よって
\(y=-\sqrt{x}-1\)

したがって
\(\displaystyle\frac{dy}{dx}=\displaystyle\frac{1}{2y+2}\)

\(=-\displaystyle\frac{1}{2\sqrt{x}}\)

\(\{x^p\}’=px^{p-1}\) を利用すれば
\(y=-\sqrt{x}-1\) より \(y’=-\displaystyle\frac{1}{2}x^{-\frac{1}{2}}\) と求めることもできます。

 

(3)

逆関数が具体的に分からないパターンです。まずは、逆関数の導関数を導きます。(\(y\)の式にはなる)

\(f(x)=x^3+3x\) の逆関数の方程式は

\(x=y^3+3y\)・・・④

④を\(y\)で微分して
\(\displaystyle\frac{dx}{dy}=3y^2+3\)

よって
\(\displaystyle\frac{dy}{dx}=\displaystyle\frac{1}{3y^2+3}\)・・・⑤

\(g'(0)\)を求めたいのですが、これは\(x=0\)での微分係数で、⑤は\(y\)の式で表されているから、逆関数について \(x=0\) に対応する \(y\)の値を調べる必要があります。④に\(x=0\) を代入すれば、\(y\)の値が分かります。

ここで④に\(x=0\)を代入すると
\(0=y^3+3y\)
\(0=y(y^2+3)\)

\(y^2+3>0\) だから
\(y=0\)

したがって⑤より
\(g'(0)=\displaystyle\frac{1}{0+3}\)\(=\displaystyle\frac{1}{3}\)

\(x=0\) に対応する\(y\)も同じ \(y=0\) になったのは偶然です。
別の値になることもあります。

 

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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