主な関数の第\(n\)次関数について見ていきます。
予想して、帰納法で証明するという流れが基本となります。
以下、 \(y=y^{(0)}\) とします。
・\(e^{x}\) の第\(n\)次導関数
\(y=e^x\)
の導関数は、変わらず \(y’=e^{x}\) です。
したがって第\(n\)次導関数も
\(y^{(n)}=e^{x}\)
となります。(正確には帰納法で示す)
・\(\sin x,\cos x\) の第\(n\)次導関数
\(y=\sin x\) について、順次微分していくと
\(y=\sin x\)
\(y’=\cos x\)
\(y^{\prime\prime}=-\sin x\)
\(y^{\prime\prime\prime}=-\cos x\)
\(y^{(4)}=\sin x\)
\(y^{(5)}=\cos x\)
・・・
とループすることになります。よって第\(n\)次導関数は次のように予想できます。
\(\begin{eqnarray} y^{(n)}=(\sin x)^{(n)} = \begin{cases} \sin x & (n=4k ) \\ \cos x & ( n=4k+1 ) \\ -\sin x &(n=4k+2) \\ -\cos x &(n=4k+3)\end{cases} \end{eqnarray}\)
(\(k=0,1,2,\cdots\))
これを数学的帰納法により証明します。
(i)\(k=0\) のとき
第3次導関数まで具体的に求めることで成り立つことが分かる。
(ii)\(k=m\) のとき (\(m=0,1,2,\cdots\))
上記のように導関数が表されると仮定すると
\(y^{(4(m+1))}=y^{(4m+4)}=(y^{(4m+3)})’=(-\cos x)’=\sin x\)
よってさらに順次微分すると
\(y^{(4(m+1)+1)}=(y^{(4(m+1))})’=(\sin x)’=\cos x\)
\(y^{(4(m+1)+2)}=(y^{(4(m+1)+1)})’=(\cos x)’=-\sin x\)
\(y^{(4(m+1)+3)}=(y^{(4(m+1)+2)})’=(-\sin x)’=-\cos x\)
ゆえに \(k=m+1\) のときも成り立つ。
したがって(i)(ii)より任意の\(0\)以上の整数\(k\)について、上記のように導関数は表される。
なお、
(\(\sin x=\sin x\))
\(\sin(x+\displaystyle\frac{π}{2})=\cos x\)
\(\sin(x+π)=-\sin x\)
\(\sin(x+\displaystyle\frac{3}{2}π)=-\cos x\)
\(\sin(x+2π)=\sin x\)
\(\sin(x+\displaystyle\frac{5}{2}π)=\cos x\)
・・・
より、\(y=\sin x\) の第\(n\)次導関数を次のように1つの式で表すこともできます。
\(y^{(n)}=(\sin x)^{(n)}=\sin(x+\displaystyle\frac{n}{2}π)\)
(\(n=0,1,2,\cdots\))
また、\(y=\cos x\) についても同様に考えることで、第\(n\)次導関数が次のようになることが分かります。
\(\begin{eqnarray} y^{(n)}=(\cos x)^{(n)} = \begin{cases} \cos x & (n=4k ) \\ -\sin x & ( n=4k+1 ) \\ -\cos x &(n=4k+2) \\ \sin x &(n=4k+3)\end{cases} \end{eqnarray}\)
(\(k=0,1,2,\cdots\))
または
\(y^{(n)}=(\cos x)^{(n)}=\cos(x+\displaystyle\frac{n}{2}π)\)
(\(n=0,1,2,\cdots\))
・\(\log x\) の第\(n\)次導関数
\(y=\log x\) については
\(y’=\displaystyle\frac{1}{x}=x^{-1}\)
となるので、以降は \(x^{n}\) (\(n\)は整数) の微分を考えればよいことなります。順次指数の部分が降りてくることを意識すると
\(y^{\prime\prime}=(-1)x^{-2}=\displaystyle\frac{-1}{x^2}\)
\(y^{\prime\prime\prime}=(-1)\cdot(-2)x^{-3}=\displaystyle\frac{(-1)^2\cdot2!}{x^3}\)
\(y^{(4)}=(-1)\cdot(-2)\cdot(-3)x^{-4}=\displaystyle\frac{(-1)^3\cdot3!}{x^4}\)
・・・
となるので、\(y=\log x\) の第\(n\)次導関数は次のように予想されます。
\(\begin{eqnarray} y^{(n)}=(\log x)^{(n)} = \begin{cases} \log x & (n=0 ) \\ \displaystyle\frac{(-1)^{n-1}\cdot (n-1)!}{x^n} & ( n=1,2,3,\cdots )\end{cases} \end{eqnarray}\)
証明は同様に数学的帰納法を利用します。
\(n=0\) のときは自明なので、\(n≧1\) について
(i)\(n=1\) のとき
\(y’=\displaystyle\frac{1}{x}=\displaystyle\frac{(-1)^0\cdot0!}{x^1}\)
となるから、成立。
(ii)\(n=k\) のとき (\(k=1,2,3,\cdots\))
\(y^{(k)}=\displaystyle\frac{(-1)^{k-1}\cdot (k-1)!}{x^k}\)
が成り立つと仮定すると
\(y^{(k+1)}=(-1)^{k-1}\cdot (k-1)!\cdot(x^{-k})’\)
\(=(-1)^{k-1}\cdot(k-1)!\cdot(-k)\cdot x^{-k-1}\)
\(=\displaystyle\frac{(-1)^{k}\cdot k!}{x^{k+1}}\)
となり、\(n=k+1\) でも成立する。
(i)(ii)より、任意の\(1\)以上の整数\(n\)について上記のように導関数が表される。
・\(x^{α}\) の第\(n\)次導関数
\(y=x^{α}\) について、微分を繰り返すと指数の部分が順次降りてくることを意識すると
\(y’=αx^{α-1}\)
\(y^{\prime\prime}=α(α-1)x^{α-2}\)
\(y^{\prime\prime\prime}=α(α-1)(α-2)x^{α-3}\)
\(y^{(4)}=α(α-1)(α-2)(α-3)x^{α-4}\)
・・・
となるので、第\(n\)次関数は次のようになります。(正確には帰納法で示すことになる)
\(y^{(n)}=α(α-1)(α-2)\cdots(α-n+1)x^{α-n}\)・・・(※)
(\(n=1,2,3,\cdots\))
とくに、\(α\)と\(n\)が同じであるとき、(このとき関数は \(y=x^n\) となる)
\(n\)回微分すると、ちょうど変数の部分が無くなり、定数になるので
\(y^{(n)}=n!\) となります。((※)で \(α=n\) としても成り立ちます)
なお、\(α\)が\(0\)以上の整数で、さらに\(α\)が\(n\)より小さい場合には、\(n\)回微分するよりも前の段階で定数になってしまうので、\(n\)回微分すると、\(y^{(n)}=0\) となります。この場合も(※)は成り立ちますが(積の途中の項が\(0\)になる)、これは別途考えたほうがよいかもしれません。
(例題)
\(y=xe^{x}\) の第\(n\)次導関数を求めよ。
(解答)
\(y=xe^{x}\) より
\(y’=1\cdot e^x+xe^{x}=(x+1)e^{x}\)
\(y^{\prime\prime}=1\cdot e^{x}+(x+1)e^{x}=(x+2)e^{x}\)
\(y^{\prime\prime\prime}=1\cdot e^{x}+(x+2)e^{x}=(x+3)e^{x}\)
よって第\(n\)次導関数は次のように予想される。
\(y^{(n)}=(x+n)e^{x}\)・・・①
①を数学的帰納法で示す。
(i)\(n=1\) のとき
\(y’=(x+1)e^{x}\) だから成立。
(ii)\(n=k\) のとき (\(k=1,2,\cdots\))
①が成り立つと仮定すると
\(y^{(k)}=(x+k)e^{x}\)
ゆえに
\(y^{(k+1)}=1\cdot e^x+(x+k)e^{x}\)
\(=(x+k+1)e^{x}\)
となるから、\(n=k+1\) のときも①が成立する。
(i)(ii)より任意の自然数\(n\)について①が成り立つ。
したがって
\(y^{(n)}=(x+n)e^{x}\)
以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
next→高次導関数の例題(帰納法など) back→高次導関数