陰関数の微分について見ていきます。
・陰関数の微分
\(y=x^2+1\)・・・①
で定められる\(x,y\)については、「\(x\)の値を1つ定めると、\(y\)の値が1つ定まる」ので、\(y\)は\(x\)の関数となっています。ここで、①を移項すると
\(x^2-y+1=0\)・・・②
となり、\(F(x,y)=0\) の形にすることができます。②と①は同値なので、②で表される\(y\)も\(x\)の関数です。このように、\(x\)の関数\(y\)が \(F(x,y)=0\)・・・③ の形で表されているとき、\(y\)は\(x\)の陰関数であるといい、③による関数表示を陰関数表示といいます。
これに対し、①のように\(x\)の関数\(y\)が \(y=f(x)\)・・・④ の形で表されるとき、\(y\)は\(x\)の陽関数であるといい、④による関数表示を陽関数表示といいます。
ここで次の式で表される曲線について考えてみます。
\(x^2+y^2-1=0\) (\(y≧0\))・・・⑤
⑤は、中心が原点である半径\(1\)の円の上半分を表していますが、⑤を変形すると
\(y^2=1-x^2\)
\(y≧0\) より
\(y=\sqrt{1-x^2}\)・・・⑥ (陽関数表示)
となり、\(y\)は\(x\)の関数であることが分かります。したがって⑤で表される\(y\)は\(x\)の陰関数です。
陰関数の導関数を求めるには、陽関数表示にできるならばそこから求めることも可能ですが、陰関数表示⑤のまま、微分することで求めることもできます。⑤の両辺を\(x\)で微分すると、\(y^2\)については合成関数の微分を利用することで、(\(y\)での微分で仲介することで)
\(2x+\displaystyle\frac{d}{dy}y^2\cdot\displaystyle\frac{dy}{dx}=0\)
となるので、
\(\displaystyle\frac{dy}{dx}=-\displaystyle\frac{x}{y}\) (ただし \(y≠0\))
となります。\(x,y\)が混在したこのままの式でも問題ないですが、⑥を使えば、
\(\displaystyle\frac{dy}{dx}=-\displaystyle\frac{x}{\sqrt{1-x^2}}\)
となり\(x\)のみの式にすることもでき、これは⑥を\(x\)で微分した結果と同じになっています。
ただし、\(F(x,y)=0\) の形で表された\(y\)がいつも\(x\)の関数になるとは限りません。例えば先ほどの半円を円にした場合、方程式は
\(x^2+y^2-1=0\)・・・⑦
となりますが、\(x=\displaystyle\frac{1}{2}\) と定めると、\(y=±\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}\) となり2通りの値が出てくるので、⑦において\(y\)は\(x\)の関数になっていません。
しかし⑦を同様に \(y=\cdots\) の形に変形すると
\(y^2=1-x^2\)
\(y=±\sqrt{1-x^2}\)
となるので、2つの関数(陽関数)で表すことが可能です。したがって、このどちらの関数においても先ほどと同様に \(F(x,y)=0\) のままの形で微分することが可能なので、⑦においても導関数は
\(2x+\displaystyle\frac{d}{dy}y^2\cdot\displaystyle\frac{dy}{dx}=0\)
より
\(\displaystyle\frac{dy}{dx}=-\displaystyle\frac{x}{y}\) (ただし \(y≠0\))
と求めることができます。
(例題)
方程式 \(\displaystyle\frac{x^2}{4}+\displaystyle\frac{y^2}{9}=1\)
で定められる\(x\)の関数\(y\)について、\(\displaystyle\frac{dy}{dx}\) と \(\displaystyle\frac{d^2y}{dx^2}\) を求めよ。
(解答)
は2つの関数(陽関数)で表されるので、そのうち片方について導関数を求めればよいです。どちらを選んでも同じになります。
陰関数の微分では、\(y=(xの式)\) であることを意識するとよいです。(\(x\)で微分する際には定数扱いしない)
\(\displaystyle\frac{x^2}{4}+\displaystyle\frac{y^2}{9}=1\)・・・①
①の両辺を\(x\)で微分して
\(\displaystyle\frac{2x}{4}+\displaystyle\frac{2y}{9}\cdot\displaystyle\frac{dy}{dx}=0\)
よって、\(y≠0\) のとき
\(\displaystyle\frac{dy}{dx}=-\displaystyle\frac{9x}{4y}\)・・・②
さらに②を\(x\)で微分すると
\(\displaystyle\frac{d^2y}{dx^2}=-\displaystyle\frac{9}{4}\cdot\displaystyle\frac{1\cdot y-x\cdot\displaystyle\frac{dy}{dx}}{y^2}\)
(②を代入して)
\(=-\displaystyle\frac{9}{4}\cdot\displaystyle\frac{y-x\cdot(-\displaystyle\frac{9x}{4y})}{y^2}\)
(分母分子に\(4y\)を掛けて)
\(=-\displaystyle\frac{9}{16}\cdot\displaystyle\frac{4y^2+9x^2}{y^3}\)
(もう少し整理すると、①より \(9x^2+4y^2=36\) だから)
\(=-\displaystyle\frac{9}{16}\cdot\displaystyle\frac{36}{y^3}\)
\(=-\displaystyle\frac{81}{4y^3}\)
したがって
\(\displaystyle\frac{d^2y}{dx^2}=-\displaystyle\frac{81}{4y^3}\) (\(y≠0\))
以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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