1変数の不等式の証明問題です。
微分を用いるなら、差をとって関数の増減を考えるのが基本となります。
(例題1)
\(e\)を自然対数の底、すなわち \(e=\displaystyle\lim_{t \to \infty}\left(1+\displaystyle\frac{1}{t}\right)^{t}\) とする。すべての正の実数\(x\)に対し、次の不等式が成り立つことを示せ。
\(\left(1+\displaystyle\frac{1}{x}\right)^{x}<e<\left(1+\displaystyle\frac{1}{x}\right)^{x+\frac{1}{2}}\)
まず、自然対数をとると
\(x\log(1+\displaystyle\frac{1}{x})<1<(x+\displaystyle\frac{1}{2})\log(1+\displaystyle\frac{1}{x})\)
さらに、微分が楽になるように\(\log\)の前の式を無くすようにすると
(左辺と中辺) \(\log(1+\displaystyle\frac{1}{x})<\displaystyle\frac{1}{x}\)
(中辺と右辺) \(\displaystyle\frac{1}{x+\displaystyle\frac{1}{2}}<\log(1+\displaystyle\frac{1}{x})\)
を示せばよいことになります。あとは \(\displaystyle\frac{1}{x}=s\) と置きかえをすればさらに楽になります。
(解答)
\(\left(1+\displaystyle\frac{1}{x}\right)^{x}<e<\left(1+\displaystyle\frac{1}{x}\right)^{x+\frac{1}{2}}\)
自然対数をとって
\(x\log(1+\displaystyle\frac{1}{x})<1<(x+\displaystyle\frac{1}{2})\log(1+\displaystyle\frac{1}{x})\)
さらに変形して
(左辺と中辺) \(\log(1+\displaystyle\frac{1}{x})<\displaystyle\frac{1}{x}\)
(中辺と右辺) \(\displaystyle\frac{1}{x+\displaystyle\frac{1}{2}}<\log(1+\displaystyle\frac{1}{x})\)
\(\displaystyle\frac{1}{x}=s\) とおくと
\(x>0\) のとき \(s>0\) で
(左辺と中辺) \(\log(1+s)<s\)
(中辺と右辺) \(\displaystyle\frac{1}{\displaystyle\frac{1}{s}+\displaystyle\frac{1}{2}}<\log(1+s)\)
つまり \(s>0\) において
\(\log(1+s)<s\)・・・①
\(\displaystyle\frac{2s}{2+s}<\log(1+s)\)・・・②
を示せばよい。
①について
\(f(s)=s-\log(1+s)\) とおくと
\(f'(s)=1-\displaystyle\frac{1}{1+s}>0\) (\(s>0\)のとき)
よって \(s≧0\) において \(f(s)\)は単調増加で、\(f(0)=0\) だから
\(s>0\) において \(f(s)>0\)
ゆえに \(\log(1+s)<s\)
②について
\(g(s)=\log(1+s)-\displaystyle\frac{2s}{2+s}\) とおくと
\(g'(s)=\displaystyle\frac{1}{1+s}-\displaystyle\frac{2(2+s)-2s\cdot1}{(2+s)^2}\)
\(=\displaystyle\frac{(2+s)^2-4(1+s)}{(1+s)(2+s)^2}\)
\(=\displaystyle\frac{s^2}{(1+s)(2+s)^2}>0\) (\(s>0\) のとき)
よって \(s≧0\) において \(g(s)\)は単調増加で、\(g(0)=0\) だから
\(s>0\) において \(g(s)>0\)
ゆえに \(\displaystyle\frac{2s}{2+s}<\log(1+s)\)
以上より与えられた不等式は成り立つ。
(例題2)
\(x>0\) のとき、次の不等式が成り立つことを示せ。
\(e^{x}>1+x+\displaystyle\frac{x^2}{2!}+\displaystyle\frac{x^3}{3!}+\cdots+\displaystyle\frac{x^n}{n!}\) (\(n\)は自然数)
\(1+x+\displaystyle\frac{x^2}{2!}+\cdots+\displaystyle\frac{x^{n-1}}{(n-1)!}\)
となり、\(n\)が1つ下がった同じ式が出てきます。よって帰納法を利用するとよいです。
(解答)
\(e^{x}>1+x+\displaystyle\frac{x^2}{2!}+\displaystyle\frac{x^3}{3!}+\cdots+\displaystyle\frac{x^n}{n!}\)・・・① (\(x>0\))
を数学的帰納法で示す。
(i)\(n=1\) のとき
\(e^x>1+x\) が示したい不等式で
\(f_1(x)=e^{x}-(1+x)\) とおくと
\(f’_1(x)=e^x-1>0\) (\(x>0\) のとき)
よって \(f_1(x)\) は \(x≧0\) で単調増加で、\(f_1(0)=0\) だから
\(x>0\) において \(f_1(x)>0\)
ゆえに①は \(n=1\) のとき成立する。
(ii)\(n=k\) のとき (\(k=1,2,\cdots\))
不等式①が成立すると仮定すると、\(x>0\) のとき
\(e^{x}>1+x+\displaystyle\frac{x^2}{2!}+\displaystyle\frac{x^3}{3!}+\cdots+\displaystyle\frac{x^k}{k!}\)・・・②
このとき
\(f_{k+1}(x)=e^{x}-(1+x+\displaystyle\frac{x^2}{2!}+\displaystyle\frac{x^3}{3!}+\cdots+\displaystyle\frac{x^k}{k!}+\displaystyle\frac{x^{k+1}}{(k+1)!})\)
とおくと
\(f_{k+1}'(x)=e^{x}-(1+x+\displaystyle\frac{x^2}{2!}+\cdots+\displaystyle\frac{x^{k-1}}{(k-1)!}+\displaystyle\frac{x^k}{k!})\)
仮定②より \(x>0\) のとき
\(f’_{k+1}(x)>0\) となるから、 \(x≧0\) で \(f_{k+1}(x)\) は単調増加。
\(f_{k+1}(0)=0\) だから \(x>0\) において \(f_{k+1}(x)>0\)
ゆえに①は \(n=k+1\) のときも成立する。
以上より任意の自然数\(n\)について不等式①は成立する。
グラフを考えると、\(y=e^x\) と \(y=x+1\) は \(x=0\) のときに接していて、\(y=e^x\) のほうが上側にあります。
以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
next→2変数の不等式の証明①(1変数にする) back→媒介変数表示とグラフの概形