引き続き2変数の不等式の証明です。
今回は1文字固定がテーマです。例題は敢えて前回と同じものにしてあります。
(例題1)
\(0<y<x<\displaystyle\frac{π}{2}\) のとき、次の不等式を証明せよ。
\(\sin x-\sin y<\tan x-\tan y\)
解答では\(y\)固定で(\(x\)固定でもよい)、定数であることを強調して \(y=k\) としますが、\(y\)のままで進めても構いません。
場合によっては固定した文字も最後に変数として変化させますが、今回は不要です。
(解答)
\(y=k\) (\(0<k<\displaystyle\frac{π}{2}\)) と固定して
\(f(x)=(\tan x-\tan k)-(\sin x-\sin k)\) (\(k≦x<\displaystyle\frac{π}{2}\))
とおく。
\(f'(x)=\displaystyle\frac{1}{\cos^2x}-\cos x=\displaystyle\frac{1-\cos^3x}{\cos^2x}>0\) (∵\(k≦x<\displaystyle\frac{π}{2}\) のとき \(\cos x<1\))
よって \(f(x)\) は単調増加で
\(f(k)=0\) だから
\(k<x<\displaystyle\frac{π}{2}\) のとき、\(f(x)>0\)
ゆえに \(0<k<x<\displaystyle\frac{π}{2}\) のとき
\(\sin x-\sin k<\tan x-\tan k\)
が成り立つので、題意は示された。
(例題2)
\(a≧b>0\) とする。自然数\(n\)に対して、次の不等式を証明せよ。
\(a^{n}-b^{n}≦\displaystyle\frac{n}{2}(a-b)(a^{n-1}+b^{n-1})\)
前回と同様に、微分していくと \((n-1)(n-2)\) という係数がでてくるので、\(n=1,2\) とそれ以外で場合分けします。
なお今回は分母の\(2\)が邪魔なので、不等式を先に2倍しておきます。
(解答)
\(a≧b>0\) のとき
\(2a^{n}-2b^{n}≦n(a-b)(a^{n-1}+b^{n-1})\)・・・①
を示せばよい。
(i)\(n=1\) のとき
①の両辺はどちらも \(2a-2b\) となるから、①は成立。(常に等号成立)
(ii)\(n=2\) のとき
①の両辺はどちらも \(2a^2-2b^2\) となるから、①は成立。(常に等号成立)
(iii)\(n≧3\) のとき
\(b=k\) \((k>0)\) と固定して
\(f(a)=n(a-k)(a^{n-1}+k^{n-1})-(2a^{n}-2k^{n})\) (\(a≧k\))
とおく。
\(f(a)=(n-2)\color{blue}{a^{n}}-nk\color{blue}{a^{n-1}}+nk^{n-1}\color{blue}{a}+(-nk^{n}+2k^{n})\)
\(f'(a)=n(n-2)\color{blue}{a^{n-1}}-n(n-1)k\color{blue}{a^{n-2}}+nk^{n-1}\)
\(f”(a)=n(n-1)(n-2)a^{n-2}-n(n-1)(n-2)ka^{n-3}\)
\(=n(n-1)(n-2)a^{n-3}(a-k)\)
よって、\(a>k\) のとき \(f”(a)>0\) となるから、\(f'(a)\) は \(a≧k\) で単調増加。
\(f'(k)=n(n-2)k^{n-1}-n(n-1)k^{n-1}+nk^{n-1}=0\)
より、\(a>k\) で \(f'(a)>0\)
ゆえに\(f(a)\)も \(a≧k\) で単調増加で
\(f(k)=0\) より、\(a≧k\) のとき \(f(a)≧0\)
つまり
\(a≧k>0\) のとき
\(2a^{n}-2k^{n}≦n(a-k)(a^{n-1}+k^{n-1})\)
が成り立つので、①も成り立つ。
等号は \(a=k\) つまり \(a=b\) のとき成立する。
以上より任意の自然数\(n\)について不等式①が成り立つので題意は示された。
等号は
\(n=1,2\) のとき: 常に成立
\(n≧3\) のとき:\(a=b\) のとき
以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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