ド・モアブルの定理について見ていきます。
・ド・モアブルの定理
複素数の積は偏角が足されることを利用して、次の定理を導くことができます。
\(n\)を整数とするとき
\((\cosθ+i\sinθ)^n=\cos nθ+i\sin nθ\)
(解説)
絶対値が\(1\)の極形式で表された複素数の\(n\)乗は、偏角を\(n\)倍すればよいというスッキリした定理です。
\(z=\cosθ+i\sinθ\) について \(z\)倍すると偏角だけが\(+θ\)されることから、\(z^n\)では偏角が\(nθ\)となるのはほとんど自明ですが、丁寧にやるなら数学的帰納法を用いることなります。
(証明)
(i)\(n=1\) のとき
\((\cosθ+i\sinθ)^1=\cosθ+i\sinθ\) は成立。
(ii)\(n=k\) (\(k=1,2,\cdots\)) のとき
\((\cosθ+i\sinθ)^k=\cos kθ+i\sin kθ\)
が成り立つと仮定。このとき
\((\cosθ+i\sinθ)^{k+1}=(\cosθ+i\sinθ)^k(\cosθ+i\sinθ)\)
(仮定より)
\(=(\cos kθ+i\sin kθ)(\cosθ+i\sinθ)\)
(複素数の積より)
\(=\cos(k+1)θ+i\sin(k+1)θ\)
これで\(n\)が自然数のときに成り立つことは分かりましたが、\(n\)が\(0\)以下の整数のときは
\(z^0=1\)、\(z^{-m}=\displaystyle\frac{1}{z^m}\) (\(m\)は自然数)
と指数関数の場合と同じように定義すると、同様に成り立つことになります。
まず \(n=0\) の場合は
\((\cosθ+i\sinθ)^0=1\)
\(\cos0+i\sin0=1\)
より成立。
次に\(n\)が負の整数の場合は、\(m\)を自然数として
\((\cosθ+\sinθ)^{-m}=\displaystyle\frac{1}{(\cosθ+i\sinθ)^m}\)
(\(m\)が自然数の場合のド・モアブルの定理が使えて)
\(=\displaystyle\frac{1}{\cos mθ+i\sin mθ}\)
\(=\displaystyle\frac{\cos0+i\sin0}{\cos mθ+i\sin mθ}\)
(複素数の商より)
\(=\cos(-mθ)+i\sin(-mθ)\)
となりこれも成立することが分かります。
また一般的に複素数\(z\)を
\(z=r(\cosθ+i\sinθ)\)
と表すことができるとき、\(z^n\) (\(n\)は整数) はド・モアブルの定理を利用することで
\(z^n=r^n(\cos nθ+i\sin nθ)\) (絶対値\(n\)乗、偏角\(n\)倍)
となることが分かります。
(例題)
(1)\(\left(\displaystyle\frac{-1+i}{\sqrt{3}+i}\right)^6\) の値を求めよ。
(2)\(z+\displaystyle\frac{1}{z}=\sqrt{3}\) を満たす複素数\(z\)について、\(z^{12}+\displaystyle\frac{1}{z^{12}}\) の値を求めよ。
(1)
\(\left(\displaystyle\frac{-1+i}{\sqrt{3}+i}\right)^6\)
\(=\left\{\displaystyle\frac{\sqrt{2}(\cos\displaystyle\frac{3π}{4}+i\sin\displaystyle\frac{3π}{4})}{2(\cos\displaystyle\frac{π}{6}+i\sin\displaystyle\frac{π}{6})}\right\}^6\)
\(=(\displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}})^6(\cos\displaystyle\frac{7π}{12}+i\sin\displaystyle\frac{7π}{12})^6\)
\(=\displaystyle\frac{1}{8}(\cos\displaystyle\frac{7π}{2}+i\sin\displaystyle\frac{7π}{2})\)
\(=-\displaystyle\frac{1}{8}i\)
(2)
\(z+\displaystyle\frac{1}{z}=\sqrt{3}\)
両辺\(z\)倍して
\(z^2-\sqrt{3}z+1=0\)
よって
\(z=\displaystyle\frac{\sqrt{3}±i}{2}\)
\(=\cos(±\displaystyle\frac{π}{6})+i\sin(±\displaystyle\frac{π}{6})\)
よって
\(z^{12}=\left\{\cos(±\displaystyle\frac{π}{6})+i\sin(±\displaystyle\frac{π}{6})\right\}^{12}\)
\(=\cos(±2π)+i\sin(±2π)\)
\(=1\)
したがって
\(z^{12}+\displaystyle\frac{1}{z^{12}}\)\(=2\)
以上になります。お疲れ様でした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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