ド・モアブルの定理と方程式・因数定理

ド・モアブルの定理を利用した方程式などの例題です。

 

(例題1)
次の方程式を解け。
\(z^5+2z^4+4z^3+8z^2+16z+32=0\)

 

ド・モアブルの定理を利用するなら、\(z^n=k\) の形にするために \(z-2\) を両辺に掛けます。
\(z^n-a^n=(z-a)(z^{n-1}+z^{n-2}a+\cdots+za^{n-2}+a^{n-1})\)
(この例題だと \(n=6\)) を意識するとよいです。
他にも素直に因数分解する方法などもあります。

(解答)
\(z^5+2z^4+4z^3+8z^2+16z+32=0\)・・・①
両辺に \(z-2\) を掛けて
\(z^6-64=0\)
\(z^6=2^6\)・・・②

\(z=2(\cosθ+i\sinθ)\) とおくと、②より
\(\cos6θ+i\sin6θ=\cos0+i\sinθ\)
よって、\(6θ=2kπ\)
\(θ=\displaystyle\frac{kπ}{3}\)

\(z-2\) を掛けたので、\(z=2\) が余分な解かどうかを確認しておきます。

①の解は、\(z≠2\) であり、\(k=0\) を除けばよいので
\(z=2(\cos\displaystyle\frac{kπ}{3}+i\sin\displaystyle\frac{kπ}{3})\) (\(k=1,2,3,4,5\))

それぞれ\(k\)の値を代入すると①の解は
\(z=1+\sqrt{3}i,\ -1+\sqrt{3}i,\ -2,\ -1-\sqrt{3}i,\ 1-\sqrt{3}i\)

(参考)
\(z^5+2z^4+4z^3+8z^2+16z+32=0\)
の両辺を定数項 \(32\ (=2^5)\) で割ると
\((\displaystyle\frac{z}{2})^5+(\displaystyle\frac{z}{2})^4+(\displaystyle\frac{z}{2})^3+(\displaystyle\frac{z}{2})^2+(\displaystyle\frac{z}{2})+1=0\)

\(\displaystyle\frac{z}{2}=t\) とおいて
\(t^5+t^4+t^3+t^2+t+1=0\)
こうすれば簡単な方程式になる。あとは両辺 \(t-1\) 倍して\(t\)を求めてから、\(z=2t\) により\(z\)を求めればよい。

 

(別解)
\(z^5+2z^4+4z^3+8z^2+16z+32=0\)
\(z^3(z^2+2z+4)+8(z^2+2z+4)=0\)
\((z^3+8)(z^2+2z+4)=0\)
\((z+2)(z^2-2z+4)(z^2+2z+4)=0\)
よって
\(z=-2, 1±\sqrt{3}i,\ -1±\sqrt{3}i\)

 

 

 

(例題2)
正の整数\(n\)に対し、\(f(z)=z^{2n}+z^n+1\) とする。
\(f(z)\) を \(z^2+z+1\) で割ったときの余りを求めよ。

 

素直に余りを \(z=az+b\) とおく方法(因数定理を利用)と、\(z^3-1\) が \(z^2+z+1\) で割り切れることを利用する方法を紹介します。

(解答1)
\(z^{2n}+z^n+1=(z^2+z+1)Q(z)+az+b\)・・・① (\(a,b\)は実数)
とおく。(実数係数の整式を実数係数の整式で割るので、余りも実数係数)

\(z^2+z+1=0\) を解くと
\(z=\displaystyle\frac{-1±\sqrt{3}i}{2}\)
一方の解を
\(ω=\displaystyle\frac{-1+\sqrt{3}i}{2}=\cos\displaystyle\frac{2π}{3}+i\sin\displaystyle\frac{2π}{3}\)
とおく。(虚数解なので、①に代入して実部虚部を比較して式が2つ立つので、一方の解で足りる)

\(ω\)を①に代入すると
\(ω^{2n}+ω^n+1=aω+b\)・・・②

\(ω\)は、\(ω^3=1\) を満たす(1の3乗根)ことに着目して、\(n\)を3の倍数で割った余りで場合分けします。

(i)\(n=3k\) (\(k\)は自然数) のとき
②より
\(ω^{6k}+ω^{3k}+1=aω+b\)
\(ω^3=1\) だから
\(3=aω+b\)
\(a,b\)は実数、\(ω\)が虚数なので
\(a=0\)、\(b=3\)
よって 余りは \(3\)

(ii)\(n=3k+1\) (\(k\)は0以上の整数) のとき
②より
\(ω^{6k+2}+ω^{3k+1}+1=aω+b\)
\(ω^{6k}ω^2+ω^{3k}ω+1=aω+b\)
\(ω^3=1\) だから
\(ω^2+ω+1=aω+b\)
\(ω\)は \(z^2+z+1=0\) の解だから
\(0=aω+b\)
よって、\(a=b=0\) より
余りは \(0\)

(iii)\(n=3k+2\) (\(k\)は0以上の整数) のとき
②より
\(ω^{6k+4}+ω^{3k+2}+1=aω+b\)
\(ω^{6k+3}ω+ω^{3k}ω^2+1=aω+b\)
\(ω+ω^2+1=aω+b\)
\(0=aω+b\)
よって、\(a=b=0\) より
余りは \(0\)

以上から余りは
\(n\)が3の倍数 \(3\)
\(n\)が3の倍数でない \(0\)

 

(解答2)

\(z^2+z+1\) が \(z^3-1\) を因数分解するとでてくる式なので、\(f(z)\)を\(z^3-1\)で割ることを考えます。(\(z^m-1\) というより簡単な式で割ることになる)
\(f(z)=z^{2n}+z^{n}+1\)
の\(z\)の指数が\(3\)の倍数になるようにしたいので、\(n\)を3で割った余りで場合分けします。

\(f(z)=z^{2n}+z^{n}+1\)

(i)\(n=3k\) (\(k\)は自然数) のとき
\(f(z)=z^{6k}+z^{3k}+1\)
\(=(z^3)^{2k}+(z^3)^k+1\)
\(=(z^3-1+1)^{2k}+(z^3-1+1)^k+1\)
(2項定理を利用して)
\(=Q_1(x)(z^3-1)+1+1+1\)
\(=Q_1(x)(z-1)(z^2+z+1)+3\)
よって余りは \(3\)

(ii)\(n=3k+1\) (\(k\)は\(0\)以上の整数) のとき
\(f(z)=z^{6k+2}+z^{3k+1}+1\)
\(=z^2(z^3)^{2k}+z(z^3)^{k}+1\)
\(=z^2(z^3-1+1)^{2k}+z(z^3-1+1)^k+1\)
\(=Q_2(x)(z^3-1)+z^2+z+1\)
\(=\{Q_2(x)(z-1)+1\}(z^2+z+1)\)
よって余りは \(0\)

(iii)\(n=3k+2\) (\(k\)は\(0\)以上の整数) のとき
\(f(z)=z^{6k+4}+z^{3k+2}+1\)
\(=z(z^3)^{2k+1}+z^2(z^3)^k+1\)
\(=z(z^3-1+1)^{2k+1}+z^2(z^3-1+1)^k+1\)
\(=Q_3(x)(z^3-1)+z+z^2+1\)
\(=\{Q_3(x)(z-1)+1\}(z^2+z+1)\)
よって余りは \(0\)

正確には\(k=0\)の場合、一部2項定理が使えない箇所がありますが、それも含めて成り立っているので問題ないです。

 

 

以上になります。お疲れ様でした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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