複素数平面と軌跡①(逆像型)

これから複素数平面における軌跡や領域の例題を扱っていきますが、その解法は大きく分けて次の通りです。

(複素数平面の軌跡領域の解法)
①逆像型: \(w=f(z)\) と\(z\)の条件式から\(z\)を消去して\(w\)の軌跡を求める。
②図で考える: 回転移動平行移動を組み合わせて軌跡を考える。
③\(x+iy\)とおく: つまり実数平面で考える。円が絡む場合には三角関数を用いて \(\cosθ+i\sinθ\) などの形を用いることもある。

解法の選択の目安ですが、①が本命で、\(z\)が簡単に消去できないような場合には③。②は①③で考えると複雑になりそうな場合といった感じです。角に関する条件が含まれる場合には、複素数の商を利用したりすることもあります。
①~③のどれを使っても解ける場合もありますし、一部でしか解けない場合もあります。

今回は①のケースを扱いますが、②③で解けることもあります。

 

(例題1)
複素数\(z\)は複素数平面上で円
\(|z+i|=2\)
の周上を動く。このとき次の問いに答えよ。

(1)複素数 \(w=-z+iz\) が表す点の軌跡を求めよ。
(2)複素数 \(w=\displaystyle\frac{z+i}{z-i}\) が表す点の軌跡を求めよ。

 

(1)

\(w=\cdots\) の式を \(z=(wの式)\) の形にして条件式 \(|z+i|=2\) に代入します(\(z\)消去)。すると\(w\)のみの方程式が得られます。(2)も同様の方法で解けます。

\(w=-z+iz\) より
\((-1+i)z=w\)
よって
\(z=\displaystyle\frac{w}{-1+i}\)・・・①

①を \(|z+i|=2\) に代入して
\(\left|\displaystyle\frac{w}{-1+i}+i\right|=2\)

\(\left|\displaystyle\frac{w+(-1+i)i}{-1+i}\right|=2\)

\(|w-1-i|=2|-1+i|\)

\(|w-(1+i)|=2\sqrt{2}\)

したがって中心を\(1+i\)とする半径\(2\sqrt{2}\)の円

 

(2)
\(w=\displaystyle\frac{z+i}{z-i}\) より

\(w(z-i)=z+i\)

\((w-1)z=(w+1)i\)・・・②

\(w=1\) は②を満たさないので \(w≠1\) であり②より
\(z=\displaystyle\frac{(w+1)i}{w-1}\)・・・③

③を \(|z+i|=2\) に代入して
\(\left|\displaystyle\frac{(w+1)i}{w-1}+i\right|=2\)

\(\left|\displaystyle\frac{2wi}{w-1}\right|=2\)

\(|2wi|=2|w-1|\)

\(|2i||w|=2|w-1|\)

\(|w|=|w-1|\)・・・④

④は \(w≠1\) を満たすので(\(w=1\)のとき④は成り立たない)、求める軌跡は④の全部となる。
したがって軌跡は、2点\(0,1\)を結ぶ線分の垂直二等分線

今回は \(w≠1\) が答えに影響しませんでしたが、場合によっては影響して除外点が出てくる場合もあります。

 

(参考)
\(w=\displaystyle\frac{z+i}{z-i}=f(z)\)
は、\(z\)の1次式の分数関数で表されているので、このような変換\(f\)は1次分数変換と呼ばれます。
1次分数変換により、「円または直線 円または直線に移される」ことが知られているので、答えの確認の目安にして下さい。

(1)も分母が定数の1次分数変換とみると
(1)円→円 (2)円→直線
と移されています。

 

 

 

(例題2)
複素数\(z\)に対して複素数\(w\)を
\(w=\displaystyle\frac{2iz}{z+3i}\)
で定める。また、点\(z\)は複素数平面上で実軸上を動くとする。

(1)\(z\)と\(\bar{z}\)の関係式を求めよ。
(2)点\(ω\)が描く図形を求めよ。

 

(解答)
(1)
\(z\)は実数だから
\(z=\bar{z}\)

(2)

(例題1)と同様に、\(z=\cdots\) の形にして(1)で求めた条件式に代入します。

\(w=\displaystyle\frac{2iz}{z+3i}\) より

\(w(z+3i)=2iz\)

\((w-2i)z=-3iw\)・・・①

\(w=2i\) は①を満たさないので \(w≠2i\) であり①より

\(z=\displaystyle\frac{-3iw}{w-2i}\)・・・②

②を \(z=\bar{z}\) に代入して

\(\displaystyle\frac{-3iw}{w-2i}=\displaystyle\frac{3i\bar{w}}{\bar{w}+2i}\)

\(-w(\bar{w}+2i)=\bar{w}(w-2i)\)

\(w\bar{w}+iw-i\bar{w}=0\)

\((w-i)(\bar{w}+i)-1=0\)

\(|w-i|^2=1\)

\(|w-i|=1\)

よって \(w≠2i\) より、中心\(i\)、半径\(1\)の円(ただし\(2i\)は除く)を描く。

 

(参考)
\(z=\displaystyle\frac{-3iw}{w-2i}\)・・・②
より、\(w \to 2i\) では \(z \to ±\infty\) (実数)に対応する。\(z\)は実数なので、これは実軸上の無限の彼方になる。求めた円 \(|w-i|=1\) の\(2i\)が除外されるのは、\(2i\)に対応するのがこの無限の彼方になっているからである。これは
\(w=\displaystyle\frac{2iz}{z+3i}\)
で、\(w=k\) (実数) として
\(w=\displaystyle\frac{2ik}{k+3i}\)
より、\(k \to ±\infty\) のとき \(w \to 2i\) となることからも分かる。

また具体的に\(w\)の実部と虚部を求めてみると
\(w=\displaystyle\frac{2ik}{k+3i}\)

\(=\displaystyle\frac{6k+2k^2i}{k^2+9}\)

となるので、\(k \to +\infty\) では \(|w-i|=1\) の\(2i\)に右方向から、\(k \to -\infty\) では左方向から近づくことが分かる。

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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