組立除法と因数分解

 

\(x^4+3x^3-3x^2-7x+6\) のような高次式の因数分解を、因数定理を利用して解く方法について見ていきます。

 

・高次式の因数分解
整式\(P(x)\)を因数分解するとき、\(P(k)=0\)となる\(k\)を見つけることができれば、因数定理より\(P(x)\)が\(x-k\)を因数にもつので、\(P(x)=(x-k)Q(x)\)と因数でくくり出すことができます。次に\(Q(k’)=0\)となる\(k’\)を見つけ・・・と繰り返すことで、\(P(x)\)を因数分解することができます。

今回主に学んでいくことは
①\(P(k)=0\)となる\(k\)の見つけ方
②\(Q(x)\)を求める簡単な方法(組立除法)

についてです。順番的には逆になりますがまず②について見ていきます。

 

・組立除法
整式\(P(x)\)を1次式\(x-k\)で割ったときの、商\(Q(x)\)と余り\(R\)を求める簡単な方法があり、これを組立除法(くみたてじょほう)とよびます。

もちろん筆算でゴリゴリ計算しても求まりますが、1次式で割る場合には組立除法のほうが楽です。なお\(R\)だけなら剰余の定理で\(P(k)\)より求めることができます。

 

\(P(x)=ax^3+bx^2+cx+d\) (3次式)として、\(x-k\)で割ったときの商\(Q(x)\)と余り\(R\)について考えます。

\(Q(x)\)は2次式となるので、\(Q(x)=lx^2+mx+n\)とすると

\(ax^3+bx^2+cx+d=(x-k)(lx^2+mx+n)+R\)

が成り立ち、右辺を展開して整理すると

\(ax^3+bx^2+cx+d\)
\(=lx^3+(-lk+m)x^2+(-mk+n)x\)\(+(-nk+R)\)

となり、両辺の係数を比較して、変形すると

\(l=a\), \(m=b+lk\), \(n=c+mk\), \(R=d+nk\)・・・(A)

(A)より以下のように計算することで、商の係数\(l,m,n\)と余り\(R\)が求まります。

 

組立除法 理論

また、3次に限らず一般の整式\(P(x)\)についても同様のことが成り立ちます。

 

(例題1)
組立除法を用いて、次の割り算の商と余りを求めよ。
(1)\((x^3-10x+2)÷(x+2)\)
(2)\((3x^3-2x^2+4x-3)÷(3x-2)\)

 

(解答)
(1)

\(x^2\)の係数は\(0\)です。

組立除法 例①

よって
\(x^3-10x+2=(x+2)(x^2-2x-6)+14\) だから
商 \(x^2-2x-6\) 余り \(14\)

 

(2)

割る数\(3x-2\)の係数が\(1\)でない場合です。
\(3x^3-2x^2+4x-3=(3x-2)Q(x)+R\)\(=(x-\displaystyle\frac{2}{3})・3Q(x)+R\)
なので、\(k=\displaystyle\frac{2}{3}\)として組立除法を使います。
なお計算して得られる商は\(Q(x)\)そのものではなく、\(3Q(x)\)です。

\(x-\displaystyle\frac{2}{3}\) で割った余りを求めると

組立除法 例②

よって
\(3x^3-2x^2+4x-3\)\(=(x-\displaystyle\frac{2}{3})(3x^2+4)-\displaystyle\frac{1}{3}\) より

\(3x^3-2x^2+4x-3\)\(=(3x-2)(x^2+\displaystyle\frac{4}{3})\)\(-\displaystyle\frac{1}{3}\)

商 \(x^2+\displaystyle\frac{4}{3}\)  余り \(-\displaystyle\frac{1}{3}\)

 

 

・\(P(k)=0\) をみたす\(k\)の見つけ方
\(P(x)=ax^3+bx^2+cx+d\) とする。(ただし\(a,b,c,d\)は整数)

ここで、\(P(\displaystyle\frac{q}{p})=0\)  (\(p,q\)は互いに素である整数) が存在する場合・・・(注1)、(つまり有理数\(\displaystyle\frac{q}{p}\)が\(P(x)=0\)の解であるとき) \(P(x)\)は\(px-q\)で割り切れるので、商を\(lx^2+mx+n\) とすると

\(ax^3+bx^2+cx+d=(px-q)(lx^2+mx+n)\) (\(l,m,m\)は整数)・・・(注2)

と表せます。両辺の\(x^3\)の項と定数項を比較すると

\(a=pl\) \(d=-qn\)

よって、\(p\)は\(a\)の約数、\(q\)は\(d\)の約数なので

\(\displaystyle\frac{q}{p}=±\displaystyle\frac{dの約数}{aの約数}\)・・・(B)

\(\displaystyle\frac{q}{p}\)は、\(P(\displaystyle\frac{q}{p})=0\)を満たす有理数で、これを見つけるには(B)より「定数項の約数÷最高次の係数の約数」を考えればよいことになります。

特に、最高次の係数が\(1\)のとき\(a=1\)なので、\(d\)の約数を考えることになります。

一般の整式\(P(x)\)においても同様です。

 

整数係数の\(P(x)\)において、\(P(k)=0\)を見つけるには
\(±\displaystyle\frac{定数項の約数}{最高次の係数の約数}\)
を考えればよい。

 

(注1)について
\(P(x)=0\)を満たす有理数解が存在すると仮定した場合の話なので、もちろん有理数解が存在しないケースもあります。そのときは無理数の解や虚数解をもったりします。

(注2)について
\(a,b,c,d\)が整数, \(p,q\)が互いに素である整数のとき、\(l,m,n\)が整数になるのは、「整数係数の整式が、有理数係数の整式に因数分解できるならば、整数係数でも因数分解できる」という定理(ガウスの定理)より導かれます。
まず\(l,m,n\)が有理数なのは両辺を比較すれば分かり、\(p,q\)が互いに素であることから、\(px-q\)は整数(定数)でくくり出すことができないため、\(lx^2+mx+n\)に掛ける整数がないので、係数\(l,m,n\)はすべて整数となります。

 

 

(例題2)
次の式を因数分解せよ。
(1)\(x^4+3x^3-3x^2-7x+6\)
(2)\(4x^4+8x^3+7x^2-2x-2\)

 

 

(1)

与式を\(P(x)\)とすると、\(P(x)=0\)となる\(x\)の候補は最高次の係数が\(1\)なので、\(±1,±2,±3,±6\)です。

与式を\(P(x)\)とおくと、\(P(1)=1+3-3-7+6=0\) だから
\(x-1\)を因数にもつ。よって

高次式因数分解①

\(P(x)=(x-1)(x^3+4x^2+x-6)\)

また、\(Q(x)=x^3+4x^2+x-6\) とおくと、\(Q(1)=1+4+1-6=0\)
よって

高次式因数分解①-2

\(P(x)=(x-1)^2(x^2+5x+6)\)
\(=\)\((x-1)^2(x+2)(x+3)\)

 

 

(2)

最高次の係数は\(4\),定数項は\(-2\)です。よって (与式)=0 となる\(x\)の候補は
\(±\displaystyle\frac{1,2}{1,2,4}\) です。

\(P(x)=4x^4+8x^3+7x^2-2x-2\) とおくと、
\(P(\displaystyle\frac{1}{2})\)\(=\displaystyle\frac{1}{4}+1+\displaystyle\frac{7}{4}-1-2\)\(=0\) なので、\(x-\displaystyle\frac{1}{2}\) を因数にもつ。よって

高次式因数分解 ②ー1

\(P(x)=\)\((x-\displaystyle\frac{1}{2})\)\((4x^3+10x^2+12x+4)\)
\(=(2x-1)(2x^3+5x^2+6x+2)\)

また、\(Q(x)=2x^3+5x^2+6x+2\) とおくと
\(Q(-\displaystyle\frac{1}{2})=-\displaystyle\frac{1}{4}+\displaystyle\frac{5}{4}-3+2\)\(=0\) なので、\(Q(x)\)は \(x+\displaystyle\frac{1}{2}\) を因数にもつから

高次式因数分解②ー2

\(Q(x)=(2x-1)(x+\displaystyle\frac{1}{2})\)\((2x^2+4x+4)\)
\(=\)\((2x-1)(2x+1)(x^2+2x+2)\)

 

有理数係数の範囲では、\(x^2+2x+2\)は因数分解できないので、これで終了です。

 

 

 

 

 

以上になります。お疲れ様でした。
ここまで見ただきありがとうございました。

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