相加・相乗平均②(最小・最大値)

相加相乗平均の関係を利用して、最大値最小値を求める問題について見ていきます。

 

相加相乗平均を利用した最大最小値を求める際の注意点
\(x>0\)のとき、\(x+\displaystyle\frac{1}{x}\)の最小値は、
\(x+\displaystyle\frac{1}{x}≧2\)
であり、等号成立は \(x=1\) のときなので、最小値は\(2\)となります。

しかし、\(x>2\)のとき、\(x+\displaystyle\frac{1}{x}\)の最小値は、
\(x+\displaystyle\frac{1}{x}≧2\)
より、\(2\)としたいところですが、\(x=1\)で最小値をとるため、\(2\)ではありません。(最小値は別にあります)

したがって、最大最小値を求める問題を解く際には、等号成立となる\(x\)が存在することを確かめる必要があることに注意してください。

 

(例題)
(1)\(\displaystyle\frac{a^2+5a+4}{a}\)の最小値を求めよ。ただし\(a>0\)とする。

(2)正の実数\(x,y,z\)について、\((x+y+z)(\displaystyle\frac{1}{x+y}+\displaystyle\frac{1}{z})\) の最小値を求めよ。

(3)\(x>0,y>0,z>0\)とする。\(\displaystyle\frac{1}{x}+\displaystyle\frac{2}{y}+\displaystyle\frac{3}{z}\)\(=\displaystyle\frac{1}{4}\)のとき、\(x+2y+3z\)の最小値を求めよ。

(4)\(y=\sqrt{x+1}+\sqrt{1-x}\) (\(-1<x<1\))の最大値を求めよ。

 

 

(解答)
(1)

分子の次数が分母より大きいので、分子を分母で割ります。

\(\displaystyle\frac{a^2+5a+4}{a}\)
\(=a+5+\displaystyle\frac{4}{a}\)
\(=a+\displaystyle\frac{4}{a}+5\)\(≧2\sqrt{a・\displaystyle\frac{4}{a}}+5\)\(=9\)

よって、\(\displaystyle\frac{a^2+5a+4}{a}\)\(≧9\) であり、
等号は、\(a=\displaystyle\frac{4}{a}\) のとき、つまり\(a=2\)のとき成立する。

よって、\(a=2\)のとき最小値\(9\)をとる。

 

(2)

展開して相加相乗平均の関係を使いやすいように、\(x+y+z\) を \(\{(x+y)+z\}\) とみます。

\((x+y+z)(\displaystyle\frac{1}{x+y}+\displaystyle\frac{1}{z})\)
\(=\{(x+y)+z\}(\displaystyle\frac{1}{x+y}+\displaystyle\frac{1}{z})\)

\(=1+\displaystyle\frac{x+y}{z}+\displaystyle\frac{z}{x+y}+1\)

\(=2+\displaystyle\frac{x+y}{z}+\displaystyle\frac{z}{x+y}\)

\(≧2+2\sqrt{\displaystyle\frac{x+y}{z}・\displaystyle\frac{z}{x+y}}\)\(=4\)

よって、\((x+y+z)(\displaystyle\frac{1}{x+y}+\displaystyle\frac{1}{z})\)\(≧4\) であり、等号は \(\displaystyle\frac{x+y}{z}=\displaystyle\frac{z}{x+y}\)のとき、つまり \(x+y=z\) のとき成り立つので、最小値は\(4\)

 

(3)

\(\displaystyle\frac{1}{x}+\displaystyle\frac{2}{y}+\displaystyle\frac{3}{z}\) と \(x+2y+3z\) の積をとると、相加相乗平均の関係を使えるようになります。
条件式を変形した \(4(\displaystyle\frac{1}{x}+\displaystyle\frac{2}{y}+\displaystyle\frac{3}{z})=1\)・・・(A) より、\((x+2y+3z)×1\) の\(1\)に(A)の左辺を代入すると考えてもよいです。

\((\displaystyle\frac{1}{x}+\displaystyle\frac{2}{y}+\displaystyle\frac{3}{z})\)\((x+2y+3z)\)

\(=14+2(\displaystyle\frac{y}{x}+\displaystyle\frac{x}{y})\)\(+6(\displaystyle\frac{z}{y}+\displaystyle\frac{y}{z})\)\(+3(\displaystyle\frac{x}{z}+\displaystyle\frac{x}{z})\)

\(≧14+2×2\sqrt{\displaystyle\frac{y}{x}・\displaystyle\frac{x}{y}}\)\(+6×2\sqrt{\displaystyle\frac{z}{y}・\displaystyle\frac{y}{z}}\)\(+3×2\sqrt{\displaystyle\frac{x}{z}・\displaystyle\frac{x}{z}}\)

\(=14+4+12+6=36\)

よって、\((\displaystyle\frac{1}{x}+\displaystyle\frac{2}{y}+\displaystyle\frac{3}{z})\)\((x+2y+3z)\)\(≧36\)・・・(B) であり、

等号は \(\displaystyle\frac{y}{x}=\displaystyle\frac{x}{y}\) かつ \(\displaystyle\frac{z}{y}=\displaystyle\frac{y}{z}\) かつ \(\displaystyle\frac{x}{z}=\displaystyle\frac{z}{x}\) のとき、つまり \(x=y=z\) のときに成立。

\(\displaystyle\frac{1}{x}+\displaystyle\frac{2}{y}+\displaystyle\frac{3}{z}\)\(=\displaystyle\frac{1}{4}\) であるから、\(\displaystyle\frac{6}{x}\)\(=\displaystyle\frac{1}{4}\)

よって、\(x=y=z=24\)のときに等号は成立。

 

また、(B)は

\(\displaystyle\frac{1}{4}(x+2y+3z)\)\(≧36\) なので

\(x+2y+3z≧144\)

以上より、\(x=y=z=24\) のとき、最小値\(144\)

 

 

(4)

今までは積の形のほうが定数となっていましたが、今回は和の形のほうが定数となる場合です。ルートの中身を足すと定数になるので、(積の形≦和の形=定数)とうまく変形したいと考えます。\(y\)は正の数なので、\(y^2\)が最大値をとるとき\(y\)も最大値をとるので、\(y^2\)について考えると、積の形ができます。

\(y>0\)より、\(y^2\)が最大値をとるときに\(y\)も最大値をとるため\(y^2\)について考えばよい。

\(y^2\)
\(=(x+1)+2\sqrt{(x+1)(1-x)}+(1-x)\)
\(=2+2\sqrt{(x+1)(1-x)}\)

ここで相加相乗平均の関係から、\(2\sqrt{(x+1)(1-x)}≦(x+1)+(1-x)=2\) より

\(2+2\sqrt{(x+1)(1-x)}\)\(≦2+2=4\) であるから

\(y^2≦4\) 等号は、\(x+1=1-x\) つまり \(x=0\) のときに成り立つ。

よって最大値は\(x=0\)のとき \(y=\sqrt{4}=\)\(2\)

 

 

(4)は微分(数Ⅲ)する方法が普通の解法でしょうか。

 

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見ていただきありがとうございました。

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