三角形の内接円とベクトル

内接円(内心)とベクトルに関する例題について見ていきます。

 

(例題1)
\(△ABC\)において、頂点\(A,B,C\)の位置ベクトルを\(\vec{a},\vec{b},\vec{c}\)とし、辺の長さを \(BC=a\), \(CA=b\), \(AB=c\) とする。\(△ABC\)の内接円の中心\(P\)の位置ベクトルは
\(\vec{p}=\displaystyle\frac{a\vec{a}+b\vec{b}+c\vec{c}}{a+b+c}\) で与えられることを示せ。

 

 

三角形の内角の2等分線の交点が内接円の中心です。この問題も角の2等分線と比の定理を用いていきます。

内心 ベクトル 例題1

内接円の中心は、内角の2等分線の交点である。
角\(A\)の2等分線と\(BC\)の交点を\(D(\vec{d})\)とすると

\(BD=\displaystyle\frac{c}{c+b}×a=\displaystyle\frac{ca}{b+c}\)

また
\(AP:PD\)
\(=BA:BD\)
\(=c:\displaystyle\frac{ca}{b+c}\)
\(=(b+c):a\)

ここで \(\vec{d}=\displaystyle\frac{b\vec{b}+c\vec{c}}{c+b}\) だから

\(\vec{p}=\displaystyle\frac{a\vec{a}+(b+c)\vec{d}}{(b+c)+a}\)

\(=\displaystyle\frac{a\vec{a}+(b+c)\cdot\displaystyle\frac{b\vec{b}+c\vec{c}}{c+b}}{(b+c)+a}\)

\(=\displaystyle\frac{a\vec{a}+b\vec{b}+c\vec{c}}{a+b+c}\)

 

 

 

 

(例題2)
三角形\(ABC\)において、\(BC=5\), \(CA=6\), \(AB=7\) とする。この三角形の内接円と辺\(BC,CA,AB\)の接点をそれぞれ\(D,E,F\)とする。また線分\(BE\)と線分\(AD\)の交点を\(G\)とする。\(\overrightarrow{AB}=\vec{p}\), \(\overrightarrow{AC}=\vec{q}\) として

内接円 ベクトル 例題2-1

(1)\(\overrightarrow{AD}\)を\(\vec{p},\vec{q}\)を用いて表せ。
(2)\(\overrightarrow{AG}\)を\(\vec{p},\vec{q}\)を用いて表せ。
(3)3点 \(C,G,F\) は1直線上にあることを示せ。

 

 

 

(注)\(AD\) (\(BE\)) は角の2等分線ではありません。
内心を\(I\)とすると、\(AI\)が角の2等分線になりますが、\(AI\)と\(BC\)が垂直でないことと(2等辺三角形なら垂直になる)、\(ID \perp BC\) から \(A,I,D\) は1直線上にはないです。よって\(AI\)と\(AD\)は別の直線です。
内接円 ベクトル 例題2-2

(解答)
(1)

頂点\(A\)から接点までの長さが等しいので、\(AF=AE\)。同様に\(BF=BD\), \(CD=CE\) です。それぞれを\(x,y,z\)とおいて方程式をたてて求めます。

内接円 ベクトル 例題2-3

図より
\(x+y=7\), \(y+z=5\), \(z+x=6\)

これらの連立方程式を解いて
\(x=4\), \(y=3\), \(z=2\)

したがって
\(\overrightarrow{AD}=\displaystyle\frac{2\vec{p}+3\vec{q}}{3+2}\)
\(=\displaystyle\frac{2}{5}\vec{p}+\displaystyle\frac{3}{5}\vec{q}\)

 

(2)

交点\(G\)についてのベクトルを求める問題です。
解答では 係数の和=1 を使いますが、2通りに表して係数比較でもOKです。

内接円 ベクトル 例題2-4

\(\overrightarrow{AG}=k\overrightarrow{AD}\)
\(=\displaystyle\frac{2}{5}k\vec{p}+\displaystyle\frac{3}{5}k\vec{q}\)・・・①
\(=\displaystyle\frac{2}{5}k\vec{p}+\displaystyle\frac{3}{5}k(\displaystyle\frac{3}{2}\overrightarrow{AE})\) (\(AC=\displaystyle\frac{3}{2}AE\) より)
\(=\displaystyle\frac{2}{5}k\overrightarrow{AB}+\displaystyle\frac{9}{10}k\overrightarrow{AE}\)

\(G\)は\(BE\)上にあるので
\(\displaystyle\frac{2}{5}k+\displaystyle\frac{9}{10}k=1\)
よって
\(k=\displaystyle\frac{10}{13}\)

①より
\(\overrightarrow{AG}=\displaystyle\frac{2}{5}k\vec{p}+\displaystyle\frac{3}{5}k\vec{q}\)

\(=\displaystyle\frac{4}{13}\vec{p}+\displaystyle\frac{6}{13}\vec{q}\)

 

(3)

\(\overrightarrow{CF}=m\overrightarrow{CG}\) (\(m\)は実数) を示すだけです。

\(\overrightarrow{CF}=\overrightarrow{AF}-\overrightarrow{AC}\)
\(=\displaystyle\frac{4}{7}\vec{p}-\vec{q}\)
\(=\displaystyle\frac{1}{7}(4\vec{p}-7\vec{q})\)

\(\overrightarrow{CG}=\overrightarrow{AG}-\overrightarrow{AC}\)
\(=(\displaystyle\frac{4}{13}\vec{p}+\displaystyle\frac{6}{13}\vec{q})-\vec{q}\)
\(=\displaystyle\frac{1}{13}(4\vec{p}-7\vec{q})\)

よって
\(\overrightarrow{CF}=\displaystyle\frac{13}{7}\overrightarrow{CG}\)

したがって \(C,G,F\) は一直線上にある。

 

 

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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