正射影と空間図形の方程式

空間図形の2つの方程式から、1文字を消去した方程式の表す図形について見ていきます。

 

・空間図形の方程式と正射影
次の球面と平面を題材に進めていきます。

\(x^2+y^2+(z-2)^2=1\)・・・① (球面\(S\))
\(x-y-z+2=0\)・・・② (平面\(α\))

球面\(S\)の 半径は\(1\), 中心は \(O_1(0,0,2)\) で、\(O_1\)と平面\(α\)の距離\(d\)は

\(d=\displaystyle\frac{|0-0-2+2|}{\sqrt{1^2+(-1)^2+(-1)^2}}=0<(球の半径1)\)

より平面\(α\)と球面\(S\)は無数の点で交わり、その交線は円になります。

ここで②より
\(z=x-y+2\)
を①に代入して\(z\)を消去すると

\(x^2+y^2+(x-y+2-2)^2=1\)
整理すると
\(2x^2+2y^2-2xy=1\)・・・③
となりますが、③は\(xy\)の項があるので円を表していません。

①②から得られた③式は、平面\(α\)と球面\(S\)の交線(円)に関する何らかの情報があるはずですが、③式は一体何を表しているのでしょうか。

空間 正射影1

ここで、まず③は\(xy\)平面において楕円の方程式を表していることに着目します。

数Ⅲで扱う標準形の楕円を回転させたものが③です。興味のある方は解の公式を使って、\(y=\cdots\) の形にして微分(数Ⅲ)して概形を調べてみて下さい。
これらの知識がない方は、とりあえず③が円状のつながった曲線であることをとりあえず認めて進めてください。

ところで、③は\(xy\)平面上では楕円を表していますが、空間においては楕円柱の側面を表しています。

\(x^2+y^2=1\) は\(xy\)平面では円を表しますが、空間ではこの式だけだと、\(z\)の値は任意となるので、この円を上下方向に平行移動させて通過してできた図形、つまり円柱の側面を表します。空間において\(xy\)平面におけるを表す場合には、\(x^2+y^2=1\) に加えて \(z=0\) が必要です。

また、球面\(S\)と平面\(α\)の交線(円)上の点を\((x_1,y_1,z_1)\) とおくと、①②から得られた③式にこの座標を代入しても成り立つので、楕円柱の側面③は\(S,α\)の交線(円)すべてと交わることになります。(楕円柱の側面③を平面②で切断したときの断面が、ちょうど球面①と平面②の交線(円)となっている)

よって交線(円)上の点\((x_1,y_1,z_1)\)について、\((x_1,y_1,0)\) とした点が\(xy\)平面における楕円③上の点になるので、交線(円)に上から光を当ててできた影がこの楕円③になるという関係になっています。

つまり、①②から\(z\)を消去してできた③式は\(xy\)平面においては、①②の交線に上から光を当てて\(xy\)平面へ映した影(正射影)を表す方程式ということになります。

同様に、\(y\)を消去すると\(zx\)平面への正射影、\(x\)を消去すると\(yz\)平面への正射影を表す方程式になります。

 

長々と書きましたが簡単にまとめてしまうと、\(z\)消去の場合は交線の\(x,y\)座標についてはそのままの状態で\(z\)だけ\(z=0\)としたものなので、影になっているということです。

 

以上の議論を座標平面においても検討してみます。

空間 正射影2

直線 \(y=x+1\)・・・(1)
直線 \(y=-x+5\)・・・(2)

について、(1)を(2)に代入して\(y\)を消去すると
\(x+1=-x+5\)
つまり
\(x=2\)・・・(3)

となりますが、(3)は座標平面上では\(x\)軸に垂直な直線になり、これが先ほどの楕円柱に相当します。(3)を \(y=0\) つまり、ただの数直線上(\(x\)軸)で考えると、\(x=2\) という点を表すことになり、これが影(交点 \((2,3)\) の\(x\)軸への影)となっています。

 

 

 

 

・正射影の面積

空間 正射影3

なす角が\(θ\) (\(0°≦θ≦90°\)) である、平面\(α,β\)があり、平面\(β\)上に面積が\(S\)である図形があるとします。この図形を平面\(α\)上へと正射影してできる図形の面積\(S’\)は

\(S’=Scosθ\)

となります。

(解説)

空間 正射影4

\(β\)上にある図形を、2辺が\(α,β\)の交線に平行である長方形とする。(残りの2辺は交線に垂直)

\(β\)上にある長方形を\(ABCD\)、\(α\)上の図形を四角形\(A’B’C’D’\)とすると、四角形\(A’B’C’D’\)も長方形となる。交線方向である、\(AB(CD)\)と\(A’B'(C’D’)\)の長さは変わらず、交線と垂直方向については、\(BC(AD)\)の \(\cosθ\) 倍 が\(B’C'(A’D’)\)となっているので、面積は

\(S’=Scosθ\)

他の図形、例えば曲線に囲まれた図形などについては微小な長方形に分割すれば同じ結論となる。

簡単にいうと、奥行きは変わらず横方向だけ \(\cosθ\) 倍 になっているということです。

 

 

 

 

(例題)
\(xyz\)空間内の\(\vec{0}\)でないベクトル \(\vec{p}=(x,y,z)\) を考え、\(\vec{p’}=\displaystyle\frac{\vec{p}}{|\vec{p}|}\) とおく。

(1)\(\vec{p’}\)の大きさを求めよ。

(2)\(\vec{p}\)と\(x\)軸,\(y\)軸,\(z\)軸の正の向きとのなす角をそれぞれ\(α,β,γ\)とおくとき、
\(\vec{p’}=(\cosα,\cosβ,\cosγ)\) を示せ。

(3)\(\vec{p}=(3,4,12)\) とする。頂点\(O(0,0,0)\), \(A(a_1,a_2,a_3)\), \(B(b_1,b_2,b_3)\) の\(△OAB\)について、\(\vec{a}=(a_1,a_2,a_3)\), \(\vec{b}=(b_1,b_2,b_3)\) はともに\(\vec{p}\)に垂直とする。\(△OAB\)の面積を\(S\)とおくとき、\(xy\)平面上の点\(O\),\(A'(a_1,a_2,0)\), \(B'(b_1,b_2,0)\) が作る\(△OA’B’\)の面積を\(S\)を用いて表せ。

 

 

(解答)
(1)

単位ベクトルです。

\(|\vec{p’}|=\displaystyle\frac{|\vec{p}|}{|\vec{p}|}\)\(=1\)

 

(2)

内積の定義から求めます。

\(\vec{p}=(x,y,z)\) と \(x\)軸の正方向 \(v_x=(1,0,0)\) とのなす角が\(α\)だから

\(\vec{p}\cdot\vec{v_x}=|\vec{p}||\vec{v_x}|\cosα\)
\(x=|\vec{p}|\cdot1\cdot\cosα\)
よって
\(\cosα=\displaystyle\frac{x}{|\vec{p}|}\)

同様に
\(\cosβ=\displaystyle\frac{y}{|\vec{p}|}\), \(\cosγ=\displaystyle\frac{z}{|\vec{p}|}\)

したがって
\(\vec{p’}=\displaystyle\frac{\vec{p}}{|\vec{p}|}\)
\(=(\displaystyle\frac{x}{|\vec{p}|},\displaystyle\frac{y}{|\vec{p}|},\displaystyle\frac{z}{|\vec{p}|})\)
\(=(\cosα,\cosβ,\cosγ)\)

 

(3)

\(△OAB\)の\(xy\)平面への正射影が\(△OA’B’\)となっています。
\(△OAB\)を含む平面と、\(xy\)平面のなす角\(θ\)の余弦\(\cosθ\)を求めれば正射影の面積は \(S\cosθ\) です。
\(△OAB\)を含む平面の法線ベクトルの1つが\(\vec{p}\)なので、\(xy\)平面 (\(z=0\)) の法線ベクトルの1つを \((0,0,1)\) とすれば、内積計算から \(\cosθ\) が分かります。(仮に負の値ででてきたら\(180°\)から引いた余弦を考える、つまり正の値とすればよいです)

空間 正射影 例題

\(\vec{p}=(3,4,12)\)は、\(\vec{a},\vec{b}\)に垂直なので、平面\(OAB\)に垂直。
また、\(xy\)平面 (\(z=0\)) の法線ベクトルの1つは \(\vec{v_z}=(0,0,1)\)

\(\vec{p},\vec{v_z}\) のなす角を\(Φ\)とすれば
\(\vec{p}\cdot\vec{v_z}=|\vec{p}||\vec{v_z}|\cosΦ\)

誘導にのるなら
\(\displaystyle\frac{\vec{p}}{|\vec{p}|}\cdot\vec{v_z}=\cosΦ\)
なるから、左辺は\(\cosγ\)となるわけですが、具体的な数値が与えられているので値で進めていきます。

\(12=\sqrt{3^2+4^2+12^2}\cdot1\cdot\cosΦ\)
よって
\(\cosΦ=\displaystyle\frac{12}{13}\)

平面\(OAB\)と\(xy\)平面のなす角を\(θ\)とすれば、\(\cosΦ>0\)より、\(θ=Φ\)で
\(\cosθ=\displaystyle\frac{12}{13}\)

\(△OAB\)の\(xy\)平面への正射影が\(△OA’B’\)なので

\(△OA’B’=△OAB\cosθ\)\(=\displaystyle\frac{12}{13}S\)

 

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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