はさみうちの原理②(二項定理)

指数型の極限は、二項定理を用いるとうまくいくことがあります。

 

(例題1)
次の極限を求めよ。
(1)\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\displaystyle\frac{n^2}{2^n}\)
(2)\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\displaystyle\frac{n^2}{r^n}\) (ただし \(r>1\))

 

指数を整式で不等式評価するために二項定理を用います。
結果を見ると分かりますが、指数(関数)のほうが発散のスピードが速いです。(知識として知っていると証明がよりやりやすくなります)

(解答)
(1)
\(2^n=(1+1)^n\)
\(={}_n\mathrm{C}_0+{}_n\mathrm{C}_1+{}_n\mathrm{C}_2+{}_n\mathrm{C}_3+\cdots+{}_n\mathrm{C}_n\)

\(n^2\) と比べることができるように、3乗の項を取り出します。(3乗以下の項を全部とってもよいです)

よって
\(2^n>{}_n\mathrm{C}_3=\displaystyle\frac{n(n-1)(n-2)}{6}\)
逆数を取って
\(\displaystyle\frac{1}{2^n}<\displaystyle\frac{6}{n(n-1)(n-2)}\)

ゆえに
\(0<\displaystyle\frac{n^2}{2^n}<\displaystyle\frac{6n^2}{n(n-1)(n-2)}\)

\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\displaystyle\frac{6n^2}{n(n-1)(n-2)}=\displaystyle\lim_{n \to \infty}\displaystyle\frac{6}{n(1-\displaystyle\frac{1}{n})(1-\displaystyle\frac{2}{n})}=0\)

したがってはさみうちの原理より
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\displaystyle\frac{n^2}{2^n}=0\)

 

(2)

(1)と同様に2項定理により不等式評価します。\(r>1\) より \(h\) を正の数として
\(r=1+h\) とおきます。

\(r=1+h\)  (\(h>0\)) おけて

\(r^n=(1+h)^n\)
\(={}_n\mathrm{C}_0+{}_n\mathrm{C}_1h+{}_n\mathrm{C}_2h^2+{}_n\mathrm{C}_3h^3+\cdots+{}_n\mathrm{C}_nh^n\)

よって
\(r^n>{}_n\mathrm{C}_3h^3\) となるから逆数をとって
\(\displaystyle\frac{1}{r^n}<\displaystyle\frac{6}{n(n-1)(n-2)h^3}\)

ゆえに
\(0<\displaystyle\frac{n^2}{r^n}<\displaystyle\frac{6n^2}{n(n-1)(n-2)h^3}\)

\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\displaystyle\frac{6n^2}{n(n-1)(n-2)h^3}=\displaystyle\lim_{n \to \infty}\displaystyle\frac{6}{n(1-\displaystyle\frac{1}{n})(1-\displaystyle\frac{2}{n})h^3}=0\)

したがってはさみうちの原理より
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\displaystyle\frac{n^2}{r^n}=0\)

 

 

(参考)
(1)や(2)と同様に2項定理を用いると次の等式が成り立つことが分かります。
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\displaystyle\frac{n^k}{r^n}=0\) (\(r>1\), \(k\)は自然数)

したがって \(\{\displaystyle\frac{n^{100}}{r^n}\}\) のような数列も\(0\)に収束します。指数(関数)の発散のスピードは整式と比べるとそれほど速いわけです。

なお、\(0<r<1\) の場合には、(分母)\(→+0\) に向かうので
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\displaystyle\frac{n^k}{r^n}=\infty\)
と発散します。
\(r=1\) のときも \(r^n=1\) だから、同じく\(\infty\)に発散します。

 

 

 

 

(例題2)
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\displaystyle\frac{2^n}{n!}\) を求めよ。

 

 

階乗と指数(関数)の発散のスピードの問題です。
2項定理は使いませんが、\(n!,2^n\)を具体的に書くと簡単に分かります。

(解答)
\(\displaystyle\frac{2^n}{n!}\)

\(=\displaystyle\frac{2\cdot2\cdot2\cdot2\cdot2\cdots2}{1\cdot2\cdot3\cdot4\cdot5\cdots n}\)

積の3つ目は分母のほうが大きく、以降は分子はそのままで分母はどんどん大きくなっていくので、3つ目以降を全部\(\displaystyle\frac{2}{3}\)にして不等式ではさみます。(はさみうち)

よって
\(0<\displaystyle\frac{2^n}{n!}<\displaystyle\frac{2\cdot2}{1\cdot2}\left(\displaystyle\frac{2}{3}\right)^{n-2}\)

ゆえに
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}2\left(\displaystyle\frac{2}{3}\right)^{n-2}=0\)
だから、はさみうちの原理から

\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\displaystyle\frac{2^n}{n!}=0\)

 

階乗のほうが指数(関数)より発散のスピードが速いことになります。

 

 

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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