はさみうちの原理①

はさみうちの原理を利用した極限を求める例題です。

直接極限を求めるのが難しい場合に、はさみうちの原理は威力を発揮します。

 

(例題1)
次の極限を求めよ。
(1)\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\displaystyle\frac{1}{n}\sin\displaystyle\frac{n}{6}π\)

(2)\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\displaystyle\frac{(-1)^n}{n}\)

 

どちらも直接求めることはできませんが、極限のおおよその見当はつきます。
例えば(1)では、\(\displaystyle\frac{1}{n}\) は\(0\)に収束しますが、\(\sin\displaystyle\frac{n}{6}π\)は、\(-1\)と\(1\)の間の数を周期的にいったりきたりするだけなので、全体としては\(0\)に収束します。このことを不等式で表していきます。

(1)
\(-1≦\sin\displaystyle\frac{n}{6}π≦1\)

辺々に\(\displaystyle\frac{1}{n}\ (>0)\) を掛けて
\(-\displaystyle\frac{1}{n}≦\displaystyle\frac{1}{n}\sin\displaystyle\frac{n}{6}π≦\displaystyle\frac{1}{n}\)

\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}(-\displaystyle\frac{1}{n})=0\)
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\displaystyle\frac{1}{n}=0\)

であるから、はさみうちの原理から
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\displaystyle\frac{1}{n}\sin\displaystyle\frac{n}{6}π=0\)

 

(2)
\(-1≦(-1)^n≦1\) の辺々に\(\displaystyle\frac{1}{n}\ (>0)\) を掛けて

\(-\displaystyle\frac{1}{n}≦\displaystyle\frac{(-1)^n}{n}≦\displaystyle\frac{1}{n}\)

左辺と右辺は\(0\)に収束するから、はさみうちの原理より

\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\displaystyle\frac{(-1)^n}{n}=0\)

 

 

 

 

(例題2)
\(a,b\)は \(0<a<b\) をみたす定数とし、\(n\)は自然数とする。

(1)\(n\log_2b<\log_2(a^n+b^n)<1+n\log_2b\) を示せ。
(2)\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\left(a^{n}+b^{n}\right)^{\frac{1}{n}}\) を求めよ。
(3)\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\left(a^{-n}+b^{-n}\right)^{-\frac{1}{n}}\) を求めよ。

 

(解答)
(1)

条件 \(0<a<b\) を使います。

\(0<a<b\) より
\(0+b^n<a^n+b^n<b^n+b^n\)
よって
\(b^n<a^n+b^n<2b^n\)

辺々\(2\) (\(1\)より大きい) を底とする対数をとって
\(\log_2b^n<\log_2(a^n+b^n)<\log_2(2b^n)\)
\(\log_2b^n<\log_2(a^n+b^n)<\log_22+\log_2b^n\)

ゆえに
\(n\log_2b<\log_2(a^n+b^n)<1+n\log_2b\)

 

(2)
(1)の不等式に辺々\(\displaystyle\frac{1}{n}\)を掛けて
\(\log_2b<\log_2(a^n+b^n)^{\frac{1}{n}}<\displaystyle\frac{1}{n}+\log_2b\)

\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}(\displaystyle\frac{1}{n}+\log_2b)=\log_2b\) だから、はさみうちの原理より

\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\log_2(a^n+b^n)^{\frac{1}{n}}=\log_2b\)

よって
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}(a^n+b^n)^{\frac{1}{n}}=b\)・・・(注)

 

(注)
\(\log\)の中身を単純比較していいかという疑問があるかもしれませんが、\(y=\log_2x\)の1:1対応性(\(y\)1つに対しても\(x\)は1つ対応している)と連続性(グラフが途切れていない)から問題ありません。

なお(1)の不等式が与えられていない場合には次のようにまず極限の見当をつけてから、やはり不等式評価で示すことになります。\(b^n\)のほうが強いことを意識して

\(\left(a^{n}+b^{n}\right)^{\frac{1}{n}}=(b^n)^{\frac{1}{n}}\left\{(\displaystyle\frac{a}{b})^{n}+1\right\}^{\frac{1}{n}}=b\left\{(\displaystyle\frac{a}{b})^{n}+1\right\}^{\frac{1}{n}}\)
\(→b(0+1)^0=b\)

そして(1)と同様の不等式
\(b^n<a^{n}+b^{n}<2b^n\)
より
\(b<(a^{n}+b^{n})^{\frac{1}{n}}<2^{\frac{1}{n}}\cdot b\)
(\(y=x^{\frac{1}{n}}\)の単調増加性)

あとははさみうちの原理から、中辺が\(b\)に収束することが分かる。

 

(3)

同様にはさみうちをつかってもよいですが、(2)を利用すると楽です。

\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\left(a^{-n}+b^{-n}\right)^{-\frac{1}{n}}\)

\(=\displaystyle\lim_{n \to \infty}\displaystyle\frac{1}{\left(\displaystyle\frac{1}{a^n}+\displaystyle\frac{1}{b^n}\right)^{\frac{1}{n}}}\)

\(0<\displaystyle\frac{1}{b}<\displaystyle\frac{1}{a}\) より、(1)(2)において
\(a→\displaystyle\frac{1}{b}\), \(b→\displaystyle\frac{1}{a}\) とすればよいから

\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\left(a^{-n}+b^{-n}\right)^{-\frac{1}{n}}\)\(=\displaystyle\frac{1}{\displaystyle\frac{1}{a}}\)\(=a\)

 

 

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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