三角関数の恒等式

三角関数を含む恒等式の問題について見ていきます。

 

(例題)
すべての\(x\)に対し
\(\sin x+\sin(x+a)+\sin(x+b)\)\(=0\)
となるように、定数\(a,b\)の値を定めよ。
ただし、\(0°<a<180°<b<360°\) とする。

 

 

任意の\(x\)について成り立つ等式なので、恒等式です。
\(x\)が変数で、\(a,b\)が定数であることを意識すると、与式は角の部分が和になっているので、加法定理により角の部分を\(x\)にして、整式の恒等式のときと同じように\(\sin x\)と\(\cos x\)の式にして整理します。

(解答)
加法定理により

\(\sin x+\sin(x+a)+\sin(x+b)\)
\(=\sin x\)\(+\sin x\cos a+\cos x\sin a\)\(+\sin x\cos b+\cos x\sin b\)
(\(\sin x\)と\(\cos x\)について整理して)
\(=(1+\cos a+\cos b)\sin x\)\(+(\sin a+\sin b)\cos x\)・・・①

 

①が任意の\(x\)について\(0\)になるわけですが、単純に(係数)=0 とするのはおすすめしません。(係数)=0でも一応は間違ってはいないのですが、①式で\(\sin x\),\(\cos x\)はバラバラに動くので、係数が\(0\)のときだけ恒等式になるとしてしまうのは怪しいからです。
よって任意の\(x\)について成り立つことから、具体的に何個か数値を代入して最後にちゃんと恒等式になっているかを確認するか(数値代入法)、①式の左辺を合成して\(\sin x\)1つに統一するかの方法になります。なお数値代入法ではできるだけ分かりやすい簡単な数値を入れます。

(数値代入法だと)
①が任意の\(x\)について成り立つので、\(x=0°,90°\) のときも成り立つから①に代入して

\(\sin a+\sin b=0\)・・・② (\(x=0°\)を代入)
\(1+\cos a+\cos b=0\)・・・③ (\(x=90°\)を代入)

\(a,b\)についての連立方程式②③を解きます。

②より
\(\sin b=-\sin a\)・・・④
③より
\(\cos b=-(1+\cos a)\)・・・⑤

\(\sin^2b+\cos^2b=1\) に④⑤を代入して
\(\sin^2a+(1+\cos a)^2=1\)
\(\sin^2a+1+2\cos a+\cos^2a\)\(=1\)
よって
\(\cos a=-\displaystyle\frac{1}{2}\)

⑤より
\(\cos b=-\displaystyle\frac{1}{2}\)

\(0°<a<180°<b<360°\)より
\(a=120°\), \(b=240°\) (④も満たす)

まだ具体的に代入した\(x=0°,90°\)のときに成り立つことしか保証されていないので、
ちゃんと任意の\(x\)について成り立つことを明記します。

また、\(a=120°\), \(b=240°\) のとき①は\(0\)となり、任意の\(x\)について与式は成り立つ。

したがって
\(a=120°\), \(b=240°\)

 

結局数値を代入しただけなので、加法定理を使わずに最初から数値を代入しても構いません。

 

(合成の方法だと)
\((1+\cos a+\cos b)\sin x\)\(+(\sin a+\sin b)\cos x\)

\(=\sqrt{(1+\cos a+\cos b)^2+(\sin a+\sin b)^2}\)\(×\sin(x+α)\)・・・(※)
(\(α\)は定数)

\(-1≦\sin(x+α)≦1\) より(※)が任意の\(x\)で\(0\)になるには

\((1+\cos a+\cos b)^2+(\sin a+\sin b)^2\)\(=0\)

\(( )\)内は実数だから
\(1+\cos a+\cos b=0\)・・・③
\(\sin a+\sin b=0\)・・・②
(数値代入法のときと同じ連立方程式)

②③を解いて
\(a=120°\), \(b=240°\)

 

 

 

以上になります。お疲れ様でした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
next→チェビシェフの多項式 back→等式と三角関数の値

タイトルとURLをコピーしました