積和・和積の公式の利用①

 

積和・和積を利用する問題について見ていきます。

 

(例題1)次の方程式・不等式を解け。
(1) \(\cos3θ+\cos5θ+\cos7θ\)\(=0\) (\(0≦θ≦\displaystyle\frac{3}{4}π\))

(2) \(\cos(θ+120°)\)\(>\cos(θ+90°)\) (\(0°≦θ<360°\))

(3) \(4\sqrt{2}\cos(x+60°)\)\(\cos(x+45°)\)\(=\sqrt{3}+3\) (\(0°≦x≦180°\))

 

 

(解答)
(1)

\(3θ,5θ,7θ\) と別々の角が登場しているので、なんとか減らそうと考えます。
和積の公式を使えば、角を足したり引いたりするので、角を変えれることができ、文字のバラバラが減りそうです。
ただし式の左から順番に適用するのではなく、和積では角の「差と和を半分」にするので、両側の\(3θ\)と\(7θ\)に適用することで、\(5θ\)という角を作ります。

\((\cos7θ+\cos3θ)\)\(+\cos5θ\)\(=0\)

\(2\cos\displaystyle\frac{10θ}{2}\cos\displaystyle\frac{4θ}{2}\)\(+\cos5θ\)\(=0\)

\(2\cos5θ\cos2θ\)\(+\cos5θ\)\(=0\)

\(\cos5θ(2\cos2θ+1)=0\)
よって
\(\cos5θ=0\) , \(\cos2θ=-\displaystyle\frac{1}{2}\)

(ア)\(\cos5θ=0\) のとき
\(0≦θ≦\displaystyle\frac{3}{4}π\) より
\(0≦5θ≦\displaystyle\frac{15}{4}π\) (\(=675°\))

よって \(\cos5θ=0\) を満たすのは
\(5θ=\displaystyle\frac{π}{2},\displaystyle\frac{3}{2}π,\)\(\displaystyle\frac{5}{2}π,\displaystyle\frac{7}{2}π\)

ゆえに
\(θ=\displaystyle\frac{π}{10},\displaystyle\frac{3}{10}π,\)\(\displaystyle\frac{π}{2},\displaystyle\frac{7}{10}π\)

(イ)\(\cos2θ=-\displaystyle\frac{1}{2}\) のとき
\(0≦2θ≦\displaystyle\frac{3}{2}π\) より
\(\cos2θ=-\displaystyle\frac{1}{2}\) を満たすのは
\(2θ=\displaystyle\frac{2}{3}π,\displaystyle\frac{4}{3}π\)

ゆえに
\(θ=\displaystyle\frac{π}{3},\displaystyle\frac{2}{3}π\)

したがって
\(θ=\displaystyle\frac{π}{10},\displaystyle\frac{3}{10}π,\displaystyle\frac{π}{3}\)\(,\displaystyle\frac{π}{2},\displaystyle\frac{2}{3}π\)\(,\displaystyle\frac{7}{10}π\)

 

(2)

同様に和積の公式を使うと、文字のバラバラがなくなります。

\(\cos(θ+120°)-\cos(θ+90°)\)\(>0\)

\(-2\sin\displaystyle\frac{2θ+210°}{2}\sin\displaystyle\frac{30°}{2}\)\(>0\)

\(\sin(θ+105°)\sin15°\)\(<0\)

\(\sin15°>0\) より
\(\sin(θ+105°)<0\)・・・①

\(0°≦θ<360°\) より
\(105°≦θ+105°<465°\) だから
①を満たすのは
\(180°<θ+105°<360°\)

したがって
\(75°<θ<255°\)

 

(3)

今度は積和の公式です。

\(4\sqrt{2}\cos(x+60°)\)\(\cos(x+45°)\)\(=\sqrt{3}+3\)

\(4\sqrt{2}・\displaystyle\frac{1}{2}\)\(\{\cos(2x+105°)+\cos15°\}\)\(=\sqrt{3}+3\)

\(2\sqrt{2}\)\(\{\cos(2x+105°)+\cos15°\}\)\(=\sqrt{3}+3\)・・・②

\(\cos15°\) は加法定理ですぐに求まります。

\(\cos15°\)
\(=\cos(45°-30°)\)

\(=\displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}・\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}\)\(+\displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}・\displaystyle\frac{1}{2}\)

\(=\displaystyle\frac{\sqrt{3}+1}{2\sqrt{2}}\)

よって②から
\(2\sqrt{2}\)\(\cos(2x+105°)\)\(+\sqrt{3}+1\)\(=\sqrt{3}+3\)

ゆえに
\(\cos(2x+105°)\)\(=\displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}\)・・・③

\(0°≦x≦180°\) より
\(105°≦2x+105°≦465°\) だから
②を満たすのは
\(2x+105°=315°,405°\)

したがって
\(2x=210°,300°\) より
\(x=105°,150°\)

 

 

(例題2)
三角形\(ABC\)において、\(\angle A=60°\) とする。
(1) \(\sin B+\sin C\) のとりうる値の範囲を求めよ。
(2) \(\sin B\sin C\) のとりうる値の範囲を求めよ。

 

 

(解答)
(1)

まず三角形の内角の和から、\(A+B+C=180°\) なので、\(B+C=120°\)・・・①
①の \(B+C\) という和の部分を生かすために、和積の公式により与式を変形します。
なお①から与式をダイレクトに1文字消去して解くこともできます(別解参照)。

\(A+B+C=180°\) なので、\(B+C=120°\)・・・①

\(\sin B+\sin C\)

\(=2\sin\displaystyle\frac{B+C}{2}\)\(\cos\displaystyle\frac{B-C}{2}\)

\(=2\sin\displaystyle\frac{120°}{2}\)\(\cos\displaystyle\frac{B-C}{2}\)

\(=\sqrt{3}\cos\displaystyle\frac{B-C}{2}\)

①から1文字消去して\(B\)のみの式にします。この際に\(B\)の範囲に注意します。

①より \(C=120°-B\) で、\(C>0°\)と\(B>0°\)より \(0°<B<120°\)・・・②

よって
\(\sqrt{3}\cos\displaystyle\frac{B-C}{2}\)

\(=\sqrt{3}\cos\displaystyle\frac{B-(120°-B)}{2}\)

\(=\sqrt{3}\cos(B-60°)\)

②より
\(-60°<B-60°<60°\) だから
\(\displaystyle\frac{1}{2}<\cos(B-60°)\)\(≦\) \(1\)

ゆえに\(\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}<\sqrt{3}\cos(B-60°)\)\(≦\) \(\sqrt{3}\)

したがって
\(\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}<\)\(\sin B+\sin C\)\(≦\) \(\sqrt{3}\)

 

(別解)
\(B+C=120°\)・・・①
\(B>0°\), \(C>0°\) より \(0°<B<120°\)・・・②

\(\sin B+\sin C\)
\(=\sin B+\sin(120°-B)\) (←加法定理を使う)
\(=\sin B+\sin120°\cos B\)\(-\cos120°\sin B\)
\(=\displaystyle\frac{3}{2}\sin B\)\(+\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}\cos B\)

ここで三角関数の合成を使います。(→(5-7)三角関数の合成参照)

\(=\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}\)\((\sqrt{3}\sin B+\cos B)\)
\(=\sqrt{3}\sin(B+30°)\)

②より \(30°<B+30°<150°\) だから
\(\displaystyle\frac{1}{2}<\sin(B+30°)\)\(≦\) \(1\)

よって
\(\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}<\sin B+\sin C\)\(≦\) \(\sqrt{3}\)

 

(2)

こちらも(1)と同様に \(B+C=120°\) を生かすために積和の公式を利用します。なお今回もダイレクトに文字消去する別解も紹介します

(1)より
\(B+C=120°\)・・・①  \(0°<B<120°\)・・・②

\(\sin B\sin C\)
\(=-\displaystyle\frac{1}{2}\)\(\{\cos(B+C)\)\(-\cos(B-C)\}\)
\(=-\displaystyle\frac{1}{2}\)\([\cos120°\)\(-\cos\{B-(120°-B)\}]\)
\(=-\displaystyle\frac{1}{2}\)\(\{-\displaystyle\frac{1}{2}-\cos(2B-120°)\}\)
\(=\displaystyle\frac{1}{4}+\displaystyle\frac{1}{2}\)\(\cos(2B-120°)\)

②より
\(-120°<2B-120°<120°\) だから
\(-\displaystyle\frac{1}{2}<\cos(2B-120°)\)\(≦\) \(1\)
よって
\(0<\)\(\displaystyle\frac{1}{4}+\displaystyle\frac{1}{2}\cos(2B-120°)\)\(≦\) \(\displaystyle\frac{3}{4}\)

したがって
\(0<\)\(\sin B\sin C\)\(≦\) \(\displaystyle\frac{3}{4}\)

 

(別解)
\(B+C=120°\)・・・①  \(0°<B<120°\)・・・②

\(\sin B\sin C\)
\(=\sin B\sin(120°-B)\)
\(=\sin B(\sin120°\cos B\)\(-\cos120°\sin B)\)
\(=\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}\sin B\cos B\)\(+\displaystyle\frac{1}{2}\sin^2B\)

2倍角の公式を使って角を\(2B\)に統一して、合成します。

\(=\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{4}\sin2B\)\(+\displaystyle\frac{1}{2}・\displaystyle\frac{1-\cos2B}{2}\)

\(=\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{4}\sin2B\)\(-\displaystyle\frac{1}{4}\cos2B\)\(+\displaystyle\frac{1}{4}\)

\(=\displaystyle\frac{1}{4}(\sqrt{3}\sin2B-\cos2B)\)\(+\displaystyle\frac{1}{4}\)

\(=\displaystyle\frac{1}{2}\sin(2B-30°)\)\(+\displaystyle\frac{1}{4}\)

②より
\(-30°<2B-30°<210°\) だから
\(-\displaystyle\frac{1}{2}<\sin(2B-30°)\)\(≦\) \(1\)

したがって
\(0<\sin B\sin C\)\(≦\) \(\displaystyle\frac{3}{4}\)

 

 

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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