不定方程式 範囲で絞る型②

 

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引き続き、範囲をしぼって解く不定方程式について見ていきます。

 

 

(例題1)
(1)\(l,m,n\)は \(l≦m≦n\) を満たす自然数とする。このとき、等式
\(\displaystyle\frac{1}{l}+\displaystyle\frac{1}{m}+\displaystyle\frac{1}{n}=1\)
を満たす自然数の組\((l,m,n)\)を全て求めよ。

(2)\(l,m,n\)は自然数とする。このとき、等式
\(\displaystyle\frac{1}{l}+\displaystyle\frac{1}{m}+\displaystyle\frac{1}{n}=1\)
を満たす自然数の組\((l,m,n)\)を全て求めよ。

 

 

 

(解答)

(1)

まずは簡単なほうの(1)から。
\(l≦m≦n\) という不等式より、
\(\displaystyle\frac{1}{l}≧\displaystyle\frac{1}{m}≧\displaystyle\frac{1}{n}\) (不等号の向きが変わっていることに注意)
が得られます。これを利用して、等式の\(\displaystyle\frac{1}{m}\),\(\displaystyle\frac{1}{n}\)を\(\displaystyle\frac{1}{l}\)に置き換えます。すると、大きいものに置き換えていることになるので不等号で表すことができ、範囲が絞れます。
\(1=\displaystyle\frac{1}{l}+\displaystyle\frac{1}{m}+\displaystyle\frac{1}{n}\)\(≦\displaystyle\frac{1}{l}+\displaystyle\frac{1}{l}+\displaystyle\frac{1}{l}\)\(=\displaystyle\frac{3}{l}\)
\(1≦\displaystyle\frac{3}{l}\) より \(l≦3\)  \(l\)は自然数であることと合わせると、\(1≦l≦3\)
※なお、\(\displaystyle\frac{1}{n}\)で置き換えると範囲が絞れません。
\(1=\displaystyle\frac{1}{l}+\displaystyle\frac{1}{m}+\displaystyle\frac{1}{n}\)\(≧\displaystyle\frac{1}{n}+\displaystyle\frac{1}{n}+\displaystyle\frac{1}{n}\)\(=\displaystyle\frac{3}{n}\)
\(1≧\displaystyle\frac{3}{n}\) より \(n≧3\)

(解答)
\(l≦m≦n\) より \(\displaystyle\frac{1}{l}≧\displaystyle\frac{1}{m}≧\displaystyle\frac{1}{n}\) だから

\(1=\displaystyle\frac{1}{l}+\displaystyle\frac{1}{m}+\displaystyle\frac{1}{n}\)\(≦\displaystyle\frac{1}{l}+\displaystyle\frac{1}{l}+\displaystyle\frac{1}{l}\)\(=\displaystyle\frac{3}{l}\) より

\(1≦\displaystyle\frac{3}{l}\),  \(l\)は自然数であることとあわせて
\(1≦l≦3\)

(ア)\(l=1\) のとき、与式は
\(1+\displaystyle\frac{1}{m}+\displaystyle\frac{1}{n}=1\)
であり、\(\displaystyle\frac{1}{m}+\displaystyle\frac{1}{n}=0\)
これを満たす自然数\(m,n\)は存在しない。

(イ)\(l=2\) のとき、与式は
\(\displaystyle\frac{1}{2}+\displaystyle\frac{1}{m}+\displaystyle\frac{1}{n}=1\) であり

\(\displaystyle\frac{1}{m}+\displaystyle\frac{1}{n}=\displaystyle\frac{1}{2}\)・・・①

 

①の両辺に\(mn\)を掛けて、因数分解型の不定方程式として解いてもよいですが、せっかくなので先ほどと同様に不等式で範囲を絞ってみます。

 

ここで \(\displaystyle\frac{1}{m}≧\displaystyle\frac{1}{n}\) だから①より

\(\displaystyle\frac{1}{2}=\displaystyle\frac{1}{m}+\displaystyle\frac{1}{n}≦\displaystyle\frac{1}{m}+\displaystyle\frac{1}{m}=\displaystyle\frac{2}{m}\) であり、

\(\displaystyle\frac{1}{2}≦\displaystyle\frac{2}{m}\) ,\(m\)は自然数であり、\(l≦m\)であるので

\(2≦m≦4\)

(i)\(m=2\) のとき
①は \(\displaystyle\frac{1}{2}+\displaystyle\frac{1}{n}=\displaystyle\frac{1}{2}\)
これを満たす自然数\(n\)は存在しない。

(ii)\(m=3\) のとき
①は \(\displaystyle\frac{1}{3}+\displaystyle\frac{1}{n}=\displaystyle\frac{1}{2}\)
このとき \(n=6\)

(iii)\(m=4\) のとき
①は \(\displaystyle\frac{1}{4}+\displaystyle\frac{1}{n}=\displaystyle\frac{1}{2}\)
このとき \(n=4\)

 

(ウ)\(l=3\) のとき

\(\displaystyle\frac{1}{3}+\displaystyle\frac{1}{m}+\displaystyle\frac{1}{n}=1\) であり

\(\displaystyle\frac{1}{m}+\displaystyle\frac{1}{n}=\displaystyle\frac{2}{3}\)・・・②

ここで、\(\displaystyle\frac{1}{m}≧\displaystyle\frac{1}{n}\) だから①より

\(\displaystyle\frac{2}{3}=\displaystyle\frac{1}{m}+\displaystyle\frac{1}{n}≦\displaystyle\frac{1}{m}+\displaystyle\frac{1}{m}=\displaystyle\frac{2}{m}\) であり、

\(\displaystyle\frac{2}{3}≦\displaystyle\frac{2}{m}\) ,\(m\)は自然数であり、\(l≦m\)であるので

\(m=3\) このとき②より
\(\displaystyle\frac{1}{3}+\displaystyle\frac{1}{n}=\displaystyle\frac{2}{3}\) だから
\(n=3\)

 

以上より
\((l,m,n)=(2,3,6)\)\(,(2,4,4),(3,3,3)\)

 

 

 

なお、この解答のように文字を文字で置き換えるのではなく、数字を代入して解く方法もあります。\(l=1\) から順に代入していって、\(l≦m≦n\) の関係から、\(l=4\) のときには、もう等式が成り立たないことがわかります。
\(l=4\) のときには、\(\displaystyle\frac{1}{l}+\displaystyle\frac{1}{m}+\displaystyle\frac{1}{n}\) が最大でも、\(\displaystyle\frac{1}{4}+\displaystyle\frac{1}{4}+\displaystyle\frac{1}{4}\)\(=\displaystyle\frac{3}{4}\)なので、右辺の\(1\)にはなりません。\(l\)が\(5\)以上でも同じです。これを解答として書くなら
①\(l=1,2,3\) のときは個別に考える
②\(l≧4\) のときは、\(m,n≧4\) より \(\displaystyle\frac{1}{l},\displaystyle\frac{1}{m},\displaystyle\frac{1}{n}≦\displaystyle\frac{1}{4}\) であるから
\(\displaystyle\frac{1}{l}+\displaystyle\frac{1}{m}+\displaystyle\frac{1}{n}\)\(≦\displaystyle\frac{1}{4}+\displaystyle\frac{1}{4}+\displaystyle\frac{1}{4}\)
より\(\displaystyle\frac{1}{l}+\displaystyle\frac{1}{m}+\displaystyle\frac{1}{n}≠1\) となるから、不適
とすればよいでしょう。

 

 

(2)

(1)と違うところは、\(l≦m≦n\) の有無です。
大小関係があれば(1)と同じように解けるので、自分で\(l,m,n\) について大小関係\(l≦m≦n\)をあらかじめ設定してしまいます。
そして勝手に設定した大小条件で、本来はないものなので大小条件を外します。もとの等式が\(l,m,n\)についてどれを入れ替えても変わらない式(対称式)であることに着目すると、大小関係を設定したときの解をぐちゃぐちゃに入れ替えてできる全部のパターンが(2)の答えとなります。
\(l≦m≦n\) としても一般性を失わない。

(1)より、この場合の解は
\((l,m,n)=(2,3,6)\)\(,(2,4,4),(3,3,3)\)

これらの\(l,m,n\)を入れ替えてできる全ての場合が(2)の解となるので

①\((l,m,n)=(2,3,6)\) のとき
\((l,m,n)=(2,3,6),(2,6,3)\)\(,(3,2,6),(3,6,2)\)\(,(6,2,3),(6,3,2)\)

②\((l,m,n)=(2,4,4)\) のとき
\((l,m,n)=(2,4,4)\)\(,(4,2,4),(4,4,2)\)

③\((l,m,n)=(3,3,3)\) のとき
\((l,m,n)=(3,3,3)\) のみ。

以上から
\((l,m,n)=(2,3,6),(2,6,3)\)\(,(3,2,6),(3,6,2)\)\(,(6,2,3),(6,3,2)\)
\(,(2,4,4)\)\(,(4,2,4),(4,4,2)\)\((3,3,3)\)

 

 

 

もう1問だけ例題を見てみます。(例題1)と同様に不等式で範囲を絞ることで解くことができます。

 

(例題2)
\(0<x≦y≦z\) である整数\(x,y,z\)について、等式
\(xyz=x+y+z\)
を満たす\(x,y,z\)をすべて求めよ。

 

 

\(x≦y≦z\) より、\(x,y\)を\(z\)で置き換えると
\(xyz=x+y+z\)\(≦z+z+z=3z\) から \(xy≦3\) が得られます。
※なお、\(y,z\)を\(x\)で置き換えると
\(xyz=x+y+z\)\(≧x+x+x=3x\) より \(yz≧3\) が得られますが、範囲が絞れていません。

 

\(xyz=x+y+z≦z+z+z=3z\) より,\(z>0\)だから
\(xy≦3\)・・・①

①を満たす自然数\(x,y\)は、\(x≦y\) より
(ア)\(x=1,y=1\) (イ)\(x=1,y=2\) (ウ)\(x=1,y=3\)

(ア)\(x=1,y=1\) のとき、与式は
\(z=1+1+z\) となり、この式を満たす\(z\)は存在しない。

(イ)\(x=1,y=2\) のとき、与式は
\(2z=1+2+z\) となり、\(z=3\)

(ウ)\(x=1,y=3\) のとき、与式は
\(3z=1+3+z\) となり、\(z=2\)
これは \(y≦z\) に反し不適

以上より
\((x,y,z)=(1,2,3)\)

 

 

 

 

置き換えによる不等式は、慣れないうちは色々試してみて範囲が絞れるものを作ってください。

 

 

 

 

 

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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