定積分を含む関数のうち、定積分が変数(関数)になるものを扱っていきます。
(1)積分に関係ない変数は前に出す。
(2)定積分が定数ならば文字でおく。
(3)定積分が変数(上端,下端が変数)ならば微分する。
(4)\(x\)に都合のよい数を代入する。
が解法となります。このうち今回のメインテーマは(3)(4)ですが、例題に入る前に(3)について説明しておきます。
・定積分の微分
\(a\)を定数とするとき、上端が\(x\)である定積分 \(\displaystyle\int_a^xf(t)dt\) は、\(f(t)\)の原始関数を\(F(t)\)とおけば
\(\displaystyle\int_a^xf(t)dt=[F(t)]_a^x=F(x)-F(a)\)・・・①
となり、\(x\)の関数となります。
また、\(F'(x)=f(x)\) (\(F'(t)=f(t))\)より①の両辺を\(x\)で微分すると、\(F(a)\)は定数だから
\(\displaystyle\frac{d}{dx}\displaystyle\int_a^xf(t)dt\)\(=F'(x)\)\(=f(x)\)
ただしこうなるのは「上端\(x\),下端定数\(a\)」の形をしているときだけで、別の形になるときには今やったことと同じことを考えることになります。以下参考にして下さい。
同様に考えると、\(\displaystyle\int_x^{a}f(t)dt\) については
\(\displaystyle\int_x^{a}f(t)dt=F(a)-F(x)\) となるから
\(\displaystyle\frac{d}{dx}\displaystyle\int_x^{a}f(t)dt=-f(x)\)
(例題1)
次の等式を満たす関数 \(f(x)\)と定数\(a\)の値をそれぞれ求めよ。
(1) \(\displaystyle\int_a^xf(t)dt=x^2-1\)
(2) \(\displaystyle\int_x^2f(t)dt=x^3-3x^2+6x-a\)
(2)についてはそのまま微分しても、上端と下端を入れ替えて(1)の形にしてもどちらでもよいです。
なお解法の十分性が気になる方は解答後の(注)を読んでください。
(解答)
(1)
\(\displaystyle\int_a^xf(t)dt=x^2-1\)・・・①
の 両辺を\(x\)で微分して
\(f(x)=2x\)
また①に\(x=a\)を代入して
\(0=a^2-1\)
\(a=±1\)
(2)
\(\displaystyle\int_x^2f(t)dt=x^3-3x^2+6x-a\)・・・②
の両辺を\(x\)で微分して
\(-f(x)=3x^2-6x+6\)
\(f(x)=-3x^2+6x-6\)
また②に\(x=2\) を代入して
\(0=8-12+12-a\)
\(a=8\)
(別解)上端と下端を入れ替える
②より
\(-\displaystyle\int_2^xf(t)dt=x^3-3x^2+6x-a\)
よって
\(\displaystyle\int_2^xf(t)dt=-x^3+3x^2-6x+a\)・・・③
の両辺を\(x\)で微分して
\(f(x)=-3x^2+6x-6\)
③に\(x=2\) を代入して
\(0=-8+12-12+a\)
\(a=8\)
(注)十分性について
求めた \(f(x)\)と\(a\)に関して、十分条件となっているかどうか気になった方もいるかもしれません。わかりやすく言うと、与えられた条件式を微分して1つ値を代入しただけの解答なので、求めた答えが与えられた条件式をちゃんと満たしているかどうか確認する必要があるのではないかということですが、大丈夫です。(1)を例に挙げると
\(\displaystyle\int_a^xf(t)dt=x^2-1\) を
\(h(x)=g(x)\)・・・(ア)
とおくと、これらを微分した等式は
\(h'(x)=g'(x)\)・・・(イ)
ですが、原始関数は定数\(C\)の分だけ無数に存在するので(定数が異なっても微分すれば同じになる)、(ア)の右辺を\(g(x)+C\) としたとき((ア)は\(C=0\)以外では成り立っていない)にも両辺を微分すると (イ) になるので、「(イ)→(ア)」が成り立つとは限らないことになります。(十分条件とならない)
ただし、これにもう1個条件が加わると十分性を満たすことになります。それは、ある定数\(p\)について
\(h(p)=g(p)\)・・・(ウ)
が成り立つことです。この条件が加わることで、
\(h(x)\) ,\(g(x)+C\) の定数部分のズレが解消され(もし定数部分が異なれば(ウ)が成り立たない)、(ア)が成り立つことになります。
解答では与式を微分し、与式(微分する前の式)に数値(都合の良い数)を代入しているのでちゃんと十分条件となっているわけです。
まとめると次の通りになります。
\(⇔\) \(h'(x)=g'(x)\) かつ \(h(p)=g(p)\) (\(p\)はある定数)
(例題2)
整式\(f(x)\) が
\(f(x)+\displaystyle\int_0^xtf'(t)dt=\displaystyle\frac{3}{2}x^4-3x^2+1\)
をみたすとする。このとき\(f(2)\)の値を求めよ。
\(\displaystyle\int_0^2tf'(t)dt\) の部分の計算が必要になってきて、結局\(f'(t)\)や\(f(t)\)が必要になってきます。よって定石通りまずは両辺を微分していきます。
\(\displaystyle\int_0^xtf'(t)dt\) の微分は、\(tf'(t)\) 全体を1つの関数として考えると、\(\displaystyle\frac{d}{dx}\displaystyle\int_0^xtf'(t)dt=xf'(x)\) です。
(解答)
\(f(x)+\displaystyle\int_0^xtf'(t)dt=\displaystyle\frac{3}{2}x^4-3x^2+1\)・・・①
の両辺を\(x\)で微分して
\(f'(x)+xf'(x)=6x^3-6x\)
\(f'(x)(x+1)=6x(x-1)(x+1)\)
これが\(x\)についての恒等式になるから
\(f'(x)=6x(x-1)\)
\(f'(x)=6x^2-6x\) より
\(f(x)=2x^3-3x^2+C\) (\(C\)は定数)
①に\(x=0\) を代入して
\(f(0)+0=1\)
\(f(0)=1\)
よって\(C=1\)だから
\(f(x)=2x^3-3x^2+1\)
したがって
\(f(2)=16-12+1\)\(=5\)
(例題3)
次の関係式を満たす定数\(a\)および関数\(g(x)\)を求めよ。
\(\displaystyle\int_a^x\{g(t)+tg(a)\}dt=x^2-2x-3\)
(解答)
\(\displaystyle\int_a^xg(t)dt+\displaystyle\int_a^xtg(a)dt=x^2-2x-3\)
\(\displaystyle\int_a^xg(t)dt+g(a)\displaystyle\int_a^xtdt=x^2-2x-3\)
両辺\(x\)で微分して
\(g(x)+g(a)\cdot x=2x-2\)・・・①
また、与式で \(x=a\) を代入すると
\(0=a^2-2a-3\)
\((a-3)(a+1)=0\)
\(a=-1,3\)
(1)\(a=-1\)のとき
①より
\(g(x)+g(-1)\cdot x=2x-2\)
\(x=-1\) を代入して
\(g(-1)-g(-1)=-2-2\)
\(0=-4\) となり不適。
(2)\(a=3\) のとき
①より
\(g(x)+g(3)\cdot x=2x-2\)・・・②
\(x=3\)を代入して
\(g(3)+g(3)\cdot3=6-2\)
\(g(3)=1\)
②より
\(g(x)+x=2x-2\)
\(g(x)=x-2\)
以上より
\(a=3\), \(g(x)=x-2\)
以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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