e,πが無理数であることの証明

\(e,π\) が無理数であることの証明問題です。

 

(例題1)
自然数\(n\)に対して、関数 \(f_n(x)=x^{n}e^{1-x}\) と、その定積分 \(a_n=\displaystyle\int_{0}^{1}f_n(x)dx\) を考える。ただし、\(e\)は自然対数の底である。次の問いに答えよ。

(1)区間 \(0≦x≦1\) 上で \(0≦f_n(x)≦1\) であることを示し、さらに \(0<a_n<1\) が成り立つことを示せ。
(2)\(a_1\)を求めよ。\(n>1\) に対して\(a_n\)と\(a_{n-1}\)の間の漸化式を求めよ。
(3)自然数\(n\)に対して、等式
\(\displaystyle\frac{a_n}{n!}=e-\left(1+\displaystyle\frac{1}{1!}+\displaystyle\frac{1}{2!}+\cdots+\displaystyle\frac{1}{n!}\right)\)
が成り立つことを証明せよ。
(4)いかなる自然数に対しても、\(n!e\) は整数とはならないことを示せ。
(5)\(e\)は無理数であることを示せ。

 

(解答)
(1)

誘導に乗りながら進めていきます。
\(x^{n}\)は単調増加、\(e^{1-x}\)は単調減少なので、ここは素直に微分します。

\(f_n(x)=x^{n}e^{1-x}\)

\(f_n(x)’=nx^{n-1}e^{1-x}+x^{n}(-e^{1-x})\)
\(=x^{n-1}e^{1-x}(n-x)\)

\(n\)は自然数だから、\(0≦x≦1\) において\(f_n(x)\)は単調増加。
\(f_n(0)=0\)、\(f_n(1)=1\) より
\(0≦f_n(x)≦1\)

またこの不等式の等号は常には成り立たないので
\(0<\displaystyle\int_{0}^{1}f_n(x)dx<\displaystyle\int_{0}^{1}1dx\)
したがって
\(0<a_n<1\)

(2)

漸化式については、\(n\)から\(n-1\)を導くので部分積分を利用します。

\(a_1=\displaystyle\int_{0}^{1}xe^{1-x}dx\)
\(=[x(-e^{1-x})]_{0}^{1}+\displaystyle\int_{0}^{1}e^{1-x}dx\)
\(=-1+[-e^{1-x}]_{0}^{1}\)
\(=-2+e\)

また
\(a_n=\displaystyle\int_{0}^{1}x^{n}e^{1-x}dx\)
\(=[x^{n}(-e^{1-x})]_{0}^{1}+\displaystyle\int_{0}^{1}nx^{n-1}e^{1-x}dx\)
\(=-1+n\displaystyle\int_{0}^{1}x^{n-1}e^{1-x}dx\)

したがって
\(a_n=na_{n-1}-1\)

(3)

漸化式を解くと問題文の形が見えてきます。両辺で1つ違いにするために、\(n!\)で割ることになります。(問題文の式の形からも\(n!\)で割ることは思いつきやすい)

\(a_n=na_{n-1}-1\)  (\(a_1=e-2\))
の両辺を\(n!\)で割ると
\(\displaystyle\frac{a_n}{n!}=\displaystyle\frac{a_{n-1}}{(n-1)!}-\displaystyle\frac{1}{n!}\) (階差型)

よって、\(n≧2\) のとき (\(n=2\) から代入するので、\(k=2\) スタートになる)
\(\displaystyle\frac{a_n}{n!}=\displaystyle\frac{a_1}{1!}-\displaystyle\sum_{k=2}^{n}\displaystyle\frac{1}{k!}\)

\(=e-2-(\displaystyle\frac{1}{2!}+\displaystyle\frac{1}{3!}+\cdots+\displaystyle\frac{1}{n!})\)

\(=e-(1+1+\displaystyle\frac{1}{2!}+\displaystyle\frac{1}{3!}+\cdots+\displaystyle\frac{1}{n!})\)

したがって
\(\displaystyle\frac{a_n}{n!}=e-(1+\displaystyle\frac{1}{1!}+\displaystyle\frac{1}{2!}+\displaystyle\frac{1}{3!}+\cdots+\displaystyle\frac{1}{n!})\) (\(a_1=e-2\) だから \(n=1\)でも成立)

(4)

(3)の等式を\(n!\)します。すると、階乗の分数の和のところが、分母がすべて約分されて無くなるので整数になります。このことと\(0<a_n<1\)を合わせると証明できます。

(3)より
\(n!e=a_n+n!(1+\displaystyle\frac{1}{1!}+\displaystyle\frac{1}{2!}+\displaystyle\frac{1}{3!}+\cdots+\displaystyle\frac{1}{n!})\)

よって\(M\)を整数とすると
\(n!e=a_n+M\)

(1)より \(0<a_n<1\) だから
\(M<n!e<M+1\)

したがって \(n!e\) は整数とはならない

(5)

無理数の証明は背理法が基本です。\(e=\displaystyle\frac{q}{p}\) とおくと
\(n!e=n!\cdot\displaystyle\frac{q}{p}\)
ですが、いかなる\(n\)でも\(n!e\)は整数にならないので、分母を消すように\(n=p\)と選ぶと矛盾が示せます。

\(e\)が有理数であると仮定すると、\(e>0\) より
\(e=\displaystyle\frac{q}{p}\) (\(p,q\)は自然数)
とおける。\(n=p\) とすると

\(p!e=p!\cdot\displaystyle\frac{q}{p}=(p-1)!q\)

となり、\(p!e\)が整数となるがこれは(4)の結果と矛盾する。

したがって\(e\)は無理数である。

 

 

 

(例題2)
\(π\)を円周率とする。また、定積分\(I_n\)を次のように定義する。
\(I_n=\displaystyle\frac{π^{n+1}}{n!}\displaystyle\int_{0}^{1}t^n(1-t)^n\sinπt\ dt\)  (\(n=0,1,2,\cdots\))

(1)\(I_0,I_1\)の値を求めよ。また漸化式
\(I_{n+1}=\displaystyle\frac{4n+2}{π}I_n-I_{n-1}\) (\(n=1,2,3,\cdots\))
が成り立つことを示せ。
(2)任意の正の数\(a\)に対して、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}a^nI_n\) の値を求めよ。ただし、任意の正の数\(b\)について
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\displaystyle\frac{b^n}{n!}=0\)
が成り立つことを用いてもよい。
(3)\(π\)が無理数であることを背理法で示したい。\(π\)が有理数と仮定して、\(π=\displaystyle\frac{p}{q}\) (\(p,q\)は正の整数) とおくとき、任意の\(0\)以上の整数\(n\)について\(p^{n}I_n\) は正の整数となることを示せ。
(4)\(π\)が無理数であることを示せ。

 

(解答)
(1)

漸化式は部分積分を用いて \(\sinπt\) のほうを積分しますが、もとの形に戻すために2回部分積分が必要です。また最終的に、\(I_n(I_{n-1})\) の形にすることを意識して式変形します。

\(I_0=π\displaystyle\int_{0}^{1}\sinπt\ dt\)
\(=π\left[-\displaystyle\frac{\cosπt}{π}\right]_{0}^{1}\)
\(=2\)

\(I_1=π^{2}\displaystyle\int_{0}^{1}t(1-t)\sinπt\ dt\)
\(=π^2\left[t(1-t)(-\displaystyle\frac{\cosπt}{π})\right]_{0}^{1}+π\displaystyle\int_{0}^{1}(1-2t)\cosπtdt\)
\(=0+[(1-2t)\sinπt]_{0}^{1}-\displaystyle\int_{0}^{1}(-2)\sinπtdt\)
\(=2\displaystyle\int_{0}^{1}\sinπtdt\)
\(=2\left[\displaystyle\frac{-\cosπt}{π}\right]_{0}^{1}\)
\(=\displaystyle\frac{4}{π}\)

また
\(I_{n+1}=\displaystyle\frac{π^{n+2}}{(n+1)!}\displaystyle\int_{0}^{1}t^{n+1}(1-t)^{n+1}\sinπt\ dt\)

(\(\{t^{n+1}(1-t)^{n+1}\}’=(n+1)t^{n}(1-t)^{n+1}+t^{n+1}(n+1)(1-t)^{n}(-1)\) より)

\(=\displaystyle\frac{π^{n+2}}{(n+1)!}\left[t^{n+1}(1-t)^{n+1}(-\displaystyle\frac{\cosπt}{π})\right]_{0}^{1}+\displaystyle\frac{π^{n+1}}{n!}\displaystyle\int_{0}^{1}(1-2t)t^{n}(1-t)^{n}\cosπtdt\)

\(=0+\displaystyle\frac{π^{n+1}}{n!}\displaystyle\int_{0}^{1}(1-2t)t^{n}(1-t)^{n}\cosπtdt\)

(3積は1個ずつ微分すればよい。
\(\{(1-2t)t^{n}(1-t)^{n}\}’=-2t^{n}(1-t)^{n}+(1-2t)nt^{n-1}(1-t)^{n}+(1-2t)t^{n}n(1-t)^{n-1}(-1)\)
1項目はまとまっているので、後ろ2項だけまとめて
\(=-2t^{n}(1-t)^{n}+n(1-2t)^2t^{n-1}(1-t)^{n-1}\)
より)

\(=\displaystyle\frac{π^{n+1}}{n!}\left[(1-2t)t^{n}(1-t)^{n}(\displaystyle\frac{\sinπt}{π})\right]_{0}^{1}\)
\(-\displaystyle\frac{π^{n}}{n!}\displaystyle\int_{0}^{1}\{-2t^{n}(1-t)^{n}+n(1-2t)^2t^{n-1}(1-t)^{n-1}\}\sinπtdt\)

\(=0+\displaystyle\frac{2I_n}{π}-\displaystyle\frac{π^{n}}{n!}\displaystyle\int_{0}^{1}n(1-2t)^2t^{n-1}(1-t)^{n-1}\sinπtdt\)

(\((1-2t)^2=1-4t+4t^2=1-4t(1-t)\))

\(=\displaystyle\frac{2I_n}{π}-\displaystyle\frac{π^{n}}{n!}\displaystyle\int_{0}^{1}n\{t^{n-1}(1-t)^{n-1}-4t^n(1-t)^n\}\sinπtdt\)

\(=\displaystyle\frac{2I_n}{π}-I_{n-1}+\displaystyle\frac{4nI_n}{π}\)

\(=\displaystyle\frac{4n+2}{π}I_{n}-I_{n-1}\)

(2)

もとの積分
\(\displaystyle\int_{0}^{1}t^n(1-t)^n\sinπt\ dt\)
に着目して被積分関数を不等式ではさみこんで求めます。

\(0≦x≦1\) において
\(0≦t^n(1-t)^n\sinπt≦1\)
よって
\(0≦\displaystyle\int_{0}^{1}t^n(1-t)^n\sinπt\ dt≦\displaystyle\int_{0}^{1}dt\)
\(0≦\displaystyle\int_{0}^{1}t^n(1-t)^n\sinπt\ dt≦1\)

ゆえに
\(0≦a^n\displaystyle\frac{π^{n+1}}{n!}\displaystyle\int_{0}^{1}t^n(1-t)^n\sinπt\ dt≦a^n\displaystyle\frac{π^{n+1}}{n!}\)

(右辺を与えられた極限の式が使えるようにする)

\(0≦a^{n}I_n≦π\cdot\displaystyle\frac{(πa)^n}{n!}\)

\(πa\)は正の数だから与式より、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\displaystyle\frac{(πa)^n}{n!}=0\) 。よってはさみうちの原理より
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}a^{n}I_n=0\)

(参考)
\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\displaystyle\frac{b^n}{n!}=0\) の証明について

まず \(0<b≦1\) の場合は分子が\(0\)に近づくか\(1\)なので成り立つ。
次に \(b>1\) の場合は、例えば \(b=2\) とすると
\(\displaystyle\frac{2^n}{n!}=(\displaystyle\frac{2}{1}\cdot\displaystyle\frac{2}{2})\cdot(\displaystyle\frac{2}{3}\cdot\displaystyle\frac{2}{4}\cdot\displaystyle\frac{2}{5}\cdots\displaystyle\frac{2}{n})\)
なので、

\(0<\displaystyle\frac{2^n}{n!}<(\displaystyle\frac{2}{1}\cdot\displaystyle\frac{2}{2})\cdot(\displaystyle\frac{2}{3}\cdot\displaystyle\frac{2}{3}\cdot\displaystyle\frac{2}{3}\cdots\displaystyle\frac{2}{3})\)
より
\(0<\displaystyle\frac{2^n}{n!}<2(\displaystyle\frac{2}{3})^{n-2}\)
よって \(\displaystyle\lim_{n \to \infty}\displaystyle\frac{2^n}{n!}=0\) が分かる。

一般の\(b\)についても、どこかで分子\(b\)を分母が超えるところがでてくるので同様に\(0\)に収束することが分かる。

 

(3)

\(π=\displaystyle\frac{p}{q}\) と漸化式から示します。
\(p^0I_0\) と \(pI_1\) が整数なので、漸化式から\(p^{n}I_{n}\)は整数であることが分かります。また正の値であることは、被積分関数が\(0\)以上(常に\(0\)にはならない)ことから分かります。

\(π=\displaystyle\frac{p}{q}\) より、\(p=qπ\) だから
\(p^0I_0=2\)、\(p^1I_1=qπ\cdot\displaystyle\frac{4}{π}=4q\)
よって、\(p^0I_0,p^1I_1\) は整数

また漸化式
\(I_{n+1}=\displaystyle\frac{4n+2}{π}I_{n}-I_{n-1}\)
より
\(I_{n+1}=\displaystyle\frac{q}{p}(4n+2)I_{n}-I_{n-1}\)

両辺\(p^{n+1}\)倍して
\(p^{n+1}I_{n+1}=q(4n+2)p^{n}I_{n}-p\cdot p^{n-1}I_{n-1}\)

ゆえに \(p^{n}I_{n}\) の漸化式とみると係数は整数なので、\(p^0I_0,p^1I_1\) が整数であることから帰納的に\(p^{n}I_{n}\)は整数となる。

そして
\(I_n=\displaystyle\frac{π^{n+1}}{n!}\displaystyle\int_{0}^{1}t^n(1-t)^n\sinπt\ dt\)  について

\(0≦x≦1\) のとき
\(t^n(1-t)^n\sinπt≧0\) であり、等号は常に成り立たないので
\(\displaystyle\int_{0}^{1}t^n(1-t)^n\sinπt\ dt>0\)
よって、\(I_n>0\) であるから、\(p^{n}I_n>0\)

したがって\(p^{n}I_{n}\)は正の整数である。

(4)

\(p^{n}I_{n}≧1\) (正の整数) ですが、(2)の結果で\(a=p\) とすると \(\displaystyle\lim_{n \to \infty}{p}^{n}I_n=0\)
したがってどこかで\({p}^{n}I_n\)が\(1\)未満になってしまう\(n\)が存在するために矛盾します。(\(n\)を大きくすればいくらでも\(0\)に近づけることができる)

(3)より任意の\(0\)以上の整数\(n\)で \(p^{n}I_{n}≧1\)
しかし(2)で\(a=p\)とすると、\(\displaystyle\lim_{n \to \infty}{p}^{n}I_n=0\) なので矛盾。よって\(π\)は無理数である。

 

(\(π\)が無理数というのは知識として知っている人は多いと思いますが、その証明はこのように結構大変です)

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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