積分型のシュワルツの不等式

積分型のシュワルツの不等式について見ていきます。

 

・シュワルツの不等式(積分型)
和(シグマ型)のシュワルツの不等式と似たような、積分に関する不等式があります。
(→コーシー・シュワルツの不等式(和の形))

\(f(x),g(x)\) を 区間 \(a≦x≦b\) で連続な関数とするとき、次の不等式が成り立ちます。

(積分型のシュワルツの不等式)
\(\left\{\displaystyle\int_{a}^{b}f(x)g(x)dx\right\}^2≦\left(\displaystyle\int_{a}^{b}\{f(x)\}^2dx\right)\left(\displaystyle\int_{a}^{b}\{g(x)\}^2dx\right)\)
等号成立は恒等的
\(f(x)=0\) または \(g(x)=0\) または \(f(x)=kg(x)\)  (\(k\)は\(0\)でない定数)
のとき

積分してから2乗するほうが、2乗してから積分するより小さい(または同じ)という式です。
かなり感覚的になってしまいますが、被積分関数を2乗したほうが定積分が正の値として強くでやすいということです。

証明は和(シグマ型)のときと同様に2次方程式の判別式に帰着させます。

(証明)

\(\{f(x)+tg(x)\}^2\) の定積分が\(0\)以上であることから導きます。展開すると\(t\)の2次方程式になります。

\(t\)を実数とする。
\(\displaystyle\int_{a}^{b}\{f(x)+tg(x)\}^2dx≧0\)・・・①

より
\(t^2\displaystyle\int_{a}^{b}\{g(x)\}^2dx+2t\displaystyle\int_{a}^{b}f(x)g(x)dx+\displaystyle\int_{a}^{b}\{f(x)\}^2dx≧0\)・・・②

(2次方程式になるかならないかで場合分け)
(ア)\(\displaystyle\int_{a}^{b}\{g(x)\}^2dx=0\) のとき
このとき恒等的に \(g(x)=0\) であり、
\(\left\{\displaystyle\int_{a}^{b}f(x)g(x)dx\right\}^2=\left(\displaystyle\int_{a}^{b}\{f(x)\}^2dx\right)\left(\displaystyle\int_{a}^{b}\{g(x)\}^2dx\right)\)
は明らかに成り立つ。(等号成立)

(イ)\(\displaystyle\int_{a}^{b}\{g(x)\}^2dx≠0\) (正の値になる) のとき
①は任意の実数\(t\)について成り立つので、②も任意の実数\(t\)で成り立つ
よって②の (左辺)=0 とする\(t\)の2次方程式の判別式を考えると、2次の係数は正の値だから

\(\displaystyle\frac{D}{4}≦0\) (下に凸の放物線が\(x\)軸より上にあるか接する)

つまり
\(\left\{\displaystyle\int_{a}^{b}f(x)g(x)dx\right\}^2-\left(\displaystyle\int_{a}^{b}\{f(x)\}^2dx\right)\left(\displaystyle\int_{a}^{b}\{g(x)\}^2dx\right)≦0\)
となるので、シュワルツの不等式は成り立つ。

等号成立は、2次方程式が重解\(c\)をもつときだから②より
\(c^2\displaystyle\int_{a}^{b}\{g(x)\}^2dx+2c\displaystyle\int_{a}^{b}f(x)g(x)dx+\displaystyle\int_{a}^{b}\{f(x)\}^2dx=0\)
となる\(c\)が存在するときである。②から①へ辿ると

\(\displaystyle\int_{a}^{b}\{f(x)+cg(x)\}^2dx=0\)・・・③

したがって、恒等的に \(f(x)=-cg(x)\) となる\(c\)が存在すればよいので、\(f(x)\)が\(g(x)\)の定数倍になるとき等号が成立する。(定数倍になれば恒等的に \(f(x)+tg(x)=0\) となる\(t\)が存在し、これが\(c\)である)

等号成立はこの段階では、\(g(x)=0\) または \(f(x)=kg(x)\) (\(k\)は定数) です。
これでももちろん構いませんが、シュワルツの不等式が対称的であることに着目して、\(k=0\) の部分を別にしてまとめます。

さらに、シュワルツの不等式が\(f(x),g(x)\)について対称であることに着目して等号成立をまとめると次のようになる。

\(f(x)=0\) または \(g(x)=0\) または \(f(x)=kg(x)\) (\(k\)は\(0\)でない定数)
(いずれも\(x\)について恒等的)

 

 

(例題)
\(f(x)\)は区間 \(0≦x≦π\) で定義された連続関数で
\(\left\{\displaystyle\int_{0}^{π}(\sin x+\cos x)f(x)dx\right\}^2=π\displaystyle\int_{0}^{π}\{f(x)\}^2dx\)
を満たす。

(1)\(\displaystyle\int_{0}^{π}(\sin x+\cos x)^2dx\) を求めよ。
(2)\(f(0)=1\) を満たすとき、\(f(x)=0\) を求めよ。

 

(解答)
(1)
\(\displaystyle\int_{0}^{π}(\sin x+\cos x)^2dx\)
\(=\displaystyle\int_{0}^{π}(\sin^2 x+\cos ^2x+2\sin x\cos x)dx\)
\(=\displaystyle\int_{0}^{π}(1+\sin 2x)dx\)

\(=\left[x-\displaystyle\frac{\cos 2x}{2}\right]_{0}^{π}\)

\(=π\)

(2)

(1)の結果から、与式はシュワルツの不等式の等号が成り立つ場合であることが分かります。\(f(x)\)は \(f(0)=1\)で、\(g(x)=\sin x+\cos x\) とおくと、\(f(x),g(x)\) のどちらも恒等的に\(0\)ではないので、\(f(x)\)が\(g(x)\)の定数倍になる場合だけを考えることになります。

(1)の結果から、条件式は
\(\left\{\displaystyle\int_{0}^{π}(\sin x+\cos x)f(x)dx\right\}^2=\left(\displaystyle\int_{0}^{π}(\sin x+\cos x)^2dx\right)\left(\displaystyle\int_{0}^{π}\{f(x)\}^2dx\right)\)

これはシュワルツの不等式で等号が成立する場合で、\(g(x)=\sin x+\cos x\) とおくと、\(f(0)=1\) より、\(f(x),g(x)\) のどちらも恒等的に\(0\)ではないので、条件式が成り立つためには\(f(x)=kg(x)\) (\(k\)は\(0\)でない定数)

よって
\(f(x)=k(\sin x+\cos x)\)
\(f(0)=1\) より
\(1=k\)

したがって
\(f(x)=\sin x+\cos x\)

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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