ほどける糸と曲線の長さ

ほどける糸の端点の描く曲線についての例題です。

 

(例題1)
原点を\(O\)とし、平面上の2点 \(A(0,1)\)、\(B(0,2)\) をとる。\(OB\)を直径とし点 \((1,1)\) を通る半円を\(Γ\)とする。長さ\(π\)の糸が一端を\(O\)に固定して、\(Γ\)に巻きつけてある。この糸の他端\(P\)を引き、それが\(x\)軸に到達するまで、ゆるむことなくほどいてゆく。糸と半円との接点を\(Q\)とし \(\angle BAQ\) の大きさを\(t\)とする(図を参照)。

ほどける糸 例題1

(1)ベクトル \(\overrightarrow{OP}\) を\(t\)を用いて表せ。
(2)\(P\)が描く曲線の弧長を求めよ。

 

(解答)
(1)

ベクトルを用いて\(P\)の座標を求めます。\(O\)から\(P\)までの経路は
\(\overrightarrow{OP}=\overrightarrow{OA}+\overrightarrow{AQ}+\overrightarrow{QP}\)
でよいでしょう。このうち \(\overrightarrow{QP}\) が肝ですが、糸がゆるむことなくほどけていくことから
(i)曲線\(BQ\)の長さと\(QP\)が等しい。
(ii)\(QP\)は接線になる
がポイントです。(i)より\(\overrightarrow{QP}\) の大きさは分かるので、あとは\(x\)軸の正方向となす角ですが、\(Q\)を通り\(x\)軸に平行な直線を引けば分かります。
なおこの例題では、(i)で円弧\(BQ\)の長さが簡単に求まりますが問題によっては曲線の長さを積分計算する必要がでてきます(例題2参照)。

ほどける糸 例題2

(\(\overrightarrow{AQ}\)については、\(B\)まで左回転で\(\displaystyle\frac{π}{2}\)、右回転で\(t\)なので、表す角は \(\displaystyle\frac{π}{2}-t\) です)

\(|\overrightarrow{QP}|=\stackrel{\huge\frown}{QB}=1\cdot t=t\)
また、図の 角\(×=π-t\) は等しいので

\(\overrightarrow{OP}=\overrightarrow{OA}+\overrightarrow{AQ}+\overrightarrow{QP}\)

\(=(0,1)+(\cos(\displaystyle\frac{π}{2}-t),\ \sin(\displaystyle\frac{π}{2}-t))+t(\cos(π-t),\ \sin(π-t))\)

\(=(0,1)+(\sin t,\ \cos t)+t(-\cos t,\ \sin t)\)

\(=(\sin t-t\cos t,\ 1+\cos t+t\sin t)\)

 

(2)

\(P\)の座標の媒介変数表示が得られたので、あとは積分するだけです。
\(t\)の範囲は、\(Q\)が\(B\)から\(O\)まで動くので、\(0≦t≦π\) です。

\(t\)の範囲は、\(0≦t≦π\)

(1)より、\(P(x,y)\)の成分は
\(x=\sin t-t\cos t\)
\(y=1+\cos t+t\sin t\)
であるから

\(\displaystyle\frac{dx}{dt}=\cos t-\cos t+t\sin t=t\sin t\)
\(\displaystyle\frac{dy}{dt}=-\sin t+\sin t+t\cos t=t\cos t\)

\((\displaystyle\frac{dx}{dt})^2+(\displaystyle\frac{dy}{dt})^2\)
\(=t^2(\sin^2t+\cos^2t)\)
\(=t^2\)

よって弧長\(L\)は
\(L=\displaystyle\int_{0}^{π}\sqrt{t^2}dt\)
\(=\displaystyle\int_{0}^{π}t dt\)
\(=\left[\displaystyle\frac{1}{2}t^2\right]_{0}^{π}\)
\(=\displaystyle\frac{1}{2}π^2\)

 

 

 

(例題2)
関数 \(f(x)=\displaystyle\frac{e^{x}+e^{-x}}{2}\) のグラフを\(C\)とする。図のように、先端を\(P\)とする糸を、\(C\)上の点 \(R(-1,f(-1))\) を始点として、\(C\)にそって\(C\)の右側に巻きつけてある。この糸の先端\(P\)を引き、ゆるむことなくほどいていき、\(C\)と糸が接触している部分のうち左端を点\(Q\)とする。

ほどける糸 例題3

(1)\(Q\)の\(x\)座標を\(t\)とおくとき、\(\overrightarrow{OP}\)の\(y\)成分を\(t\)で表せ。
(2)糸をほどいていくと、\(P\)の\(y\)座標はどのような値に近づくか。

 

(解答)
(1)

(例題1)と同様にポイントは
(i)曲線\(RQ\)の長さと\(PQ\)が等しい
(ii)\(PQ\)は接線
です。(i)では積分で\(PQ\)の長さを出して、\(PQ\)の方向については微分を利用します。

ほどける糸 例題4

\(f(x)=\displaystyle\frac{e^{x}+e^{-x}}{2}\) より

\(f'(x)=\displaystyle\frac{e^{x}-e^{-x}}{2}\)

弧長\(RQ\)を\(L(t)\)とおくと
\(PQ=L(t)\)
\(=\displaystyle\int_{-1}^{t}\sqrt{1+\{f'(x)\}^2}dx\)
\(=\displaystyle\int_{-1}^{t}\sqrt{\displaystyle\frac{(e^{x}+e^{-x})^2}{4}}dx\)
\(=\displaystyle\int_{-1}^{t}\displaystyle\frac{e^{x}+e^{-x}}{2}dx\)
\(=\left[\displaystyle\frac{e^{x}-e^{-x}}{2}\right]_{-1}^{t}\)
\(=\displaystyle\frac{e^{t}-e^{-t}}{2}-\displaystyle\frac{e^{-1}-e}{2}\)

\(PQ\)方向のベクトルは\(PQ\)が\(C\)の接線であることから、\((1,f'(t))\)です。ただこのままだと右方向のベクトル(\(x\)成分が正なので)になるので\(-\)をつけることと、あとで\(PQ\)の長さ倍して\(\overrightarrow{QP}\)にするために単位ベクトルにしておきます。単位ベクトルにするには大きさで割るだけでできます。

また、\(QP\)方向のベクトルの1つは \(-(1,f'(t))\) だから、 \(QP\)方向の単位ベクトルは
\(-\displaystyle\frac{1}{\sqrt{1+\{f'(t)\}^2}}(1,f'(t))\)

よって
\(\overrightarrow{OP}=\overrightarrow{OQ}+\overrightarrow{QP}\)
\(=(t,f(t))-\displaystyle\frac{L(t)}{\sqrt{1+\{f'(t)\}^2}}(1,f'(t))\)

したがって\(\overrightarrow{OP}\)の\(y\)成分は
\(y=f(t)-\displaystyle\frac{L(t)}{\sqrt{1+\{f'(t)\}^2}}\cdot f'(t)\)

\(=\displaystyle\frac{e^{t}+e^{-t}}{2}-\displaystyle\frac{\displaystyle\frac{e^{t}-e^{-t}}{2}-\displaystyle\frac{e^{-1}-e}{2}}{\displaystyle\frac{e^{t}+e^{-t}}{2}}\cdot\displaystyle\frac{e^{t}-e^{-t}}{2}\)

\(=\displaystyle\frac{e^{t}+e^{-t}}{2}-\displaystyle\frac{(e^{t}-e^{-t})^2}{2(e^{t}+e^{-t})}+\displaystyle\frac{e^{-1}-e}{2}\cdot\displaystyle\frac{e^{t}-e^{-t}}{e^{t}+e^{-t}}\)

\(=\displaystyle\frac{4}{2(e^{t}+e^{-t})}+\displaystyle\frac{e^{-1}-e}{2}\cdot\displaystyle\frac{e^{t}-e^{-t}}{e^{t}+e^{-t}}\)

\(=\displaystyle\frac{2}{e^{t}+e^{-t}}+\displaystyle\frac{1}{2}(\displaystyle\frac{1}{e}-e)\cdot\displaystyle\frac{e^{t}-e^{-t}}{e^{t}+e^{-t}}\)

(極限を求めやすいようにこの形を答えにします)

(2)

ほどき続けると、\(t \to \infty\) になるのでこの極限を考えればよいです。

(1)より
\(\displaystyle\lim_{t \to \infty}y\)
\(=\displaystyle\lim_{t \to \infty}\left\{\displaystyle\frac{2}{e^{t}+e^{-t}}+\displaystyle\frac{1}{2}(\displaystyle\frac{1}{e}-e)\cdot\displaystyle\frac{e^{t}-e^{-t}}{e^{t}+e^{-t}}\right\}\)

(分数型の極限は次数が最高のもので割るのが基本)

\(=\displaystyle\lim_{t \to \infty}\left\{\displaystyle\frac{2}{e^{t}+e^{-t}}+\displaystyle\frac{1}{2}(\displaystyle\frac{1}{e}-e)\cdot\displaystyle\frac{1-e^{-2t}}{1+e^{-2t}}\right\}\)

\(=\displaystyle\frac{1}{2}(\displaystyle\frac{1}{e}-e)\)

よって、\(\displaystyle\frac{1}{2}(\displaystyle\frac{1}{e}-e)\) に近づく。

 

 

 

以上になります。お疲れさまでした。
ここまで見て頂きありがとうございました。
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